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ボルボ車の整備技術を競う技術技能大会「VISTA 2018」の日本ファイナルラウンドレポート
1位のボルボカー・横浜西口 チーム1はスウェーデンで開催する本戦「VISTA2018 Winners' Conference」出場
2018年4月20日 18:15
- 2018年4月18日 開催
ボルボ・カー・ジャパンは4月18日、サービス部門スタッフを対象とした技能競技大会「VISTA 2018(Volvo International Service Training Award)」のファイナルコンテストを都内で開催した。
世界中のボルボディーラーが参加するこの競技大会は、1976年から始まった歴史ある大会で、開催は2年に1回。開催の目的はボルボ・カーに所属するサービススタッフのスキルを高めることが目的となる。
VISTA 2018は1年を通して行なっていく競技。スケジュールは2017年7月にエントリーを開始して、9月~10月に予選1があり、続いて11月~12月に予選2、最後に1月~2月に予選3と、学科試験による予選が3回行なわれる。今回取り上げるファイナルコンテストには、日本地区で激戦をクリアした精鋭の10チームが挑むこととなる。
そして、ファイナルの上位3位まではスウェーデンで開催される「VISTA2018 Winners' Conference」へ研修へ行く権利が与えられ、1位のチームはVISTA2018 Winners' Conferenceに競技者として参加する権利も与えられる。
また、2018年は一定の成績を収めたチームの中から1チームが「VISTAワイルドカード」として、VISTA2018 Winners' Conferenceへの参加資格(競技には参加できないが現地でカンファレンスを見ることができる規定)も設けられた。これは実力のあるチームに現地の雰囲気を体験してもらい、さらにモチベーションを高めてもらうことが目的ということだ。
このVISTAという競技、そもそもはクルマを直す技術を競うものだったが、現在は修理するだけでなく修理依頼をしてきたユーザーへの対応も審査する内容になっている。具体的に言うと、ユーザーにとってクルマの故障は本来起こってほしくないもの。それだけにいざ故障すると不便なだけではなく不安な気持ちにもなる。
そんな相手に対してただ「直りました」と言うだけでは不足。故障の原因やその理由を知らされなければ直してもいずれまた故障するのでは? などの不安が残る。
そこで現在のVISTAでは「なぜ壊れたのか?」などの理由を「メカニックの専門用語でなくユーザーに伝わる言葉でしっかり説明できる力」という部分も審査の対象に含んでいるということ。そこで、VISTA 2018の審査では課題修理をこなすだけでなく、直したクルマをユーザーに引き渡すところまでが審査対象の実技として行なわれる。
審査に使うクルマは「シフト・バイ・ワイヤ制御」を採用した「XC60 T8」のPHV(プラグインハイブリッド)モデル。設定はユーザーからの故障連絡に対応して入庫したというもの。
このクルマを使って競い合う主要点は、最新のプラットフォーム「SPA(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー)」を使用したボルボ車の知識、故障診断スキル、レポート作成レベル、ボルボ専用診断機「VIDA(ヴィーダ)」の機能理解度だが、それらに加えて技術情報に対する理解度やボルボ車の商品知識を診断に結びつける能力も評価の対象になる。
競技者への設問は「シフトポジションがPレンジから動かなくなり、クルマが発進できなくなった」というもの。この状態は審査に使うクルマで実際に起こるように設定してあり、競技者はVIDAを使って症状の確認後に故障コードの読み取りと内容を確認。さらに、ユーザーが訴える症状をデータ化した「お客様症状コード(CSC:カスタマーシンプトムコード)」という数値を診断機へ入力し、より正しい故障診断を行なうというボルボの規定にある故障診断のプロセスに則って直すことが求められる。
ちなみにこの故障は主催者側がシフトアクチュエータモーターのコネクターを緩めて信号を遮断するように細工。これによりシフトレバーを操作してもPレンジ以外には入らない状況にしていた。
こうした手順を完璧にこなすことで、メカニックの予想や経験外の故障に対しても的確な対応ができるので「おそらくこれで大丈夫です」というクルマの修理現場で聞く曖昧な返事ではなく、ハッキリ「直りました」とユーザーに引き渡すことが可能になり、さらに故障の詳細もキチンと説明できるようになるという。VISTAではこの力を養う意味で故障診断プロセスに沿った診断をとても重視しているという。
開会式ではボルボ・カー・ジャパン 代表取締役社長 木村隆之氏が挨拶を行なった。「VISTAはグローバル規模では1万6000名が参加する規模のもので、日本では248チーム、643名の方がエントリーされました。そして今年のVISTAは20回目と記念すべき開催となりますが、私どもは前回大会から審査の内容にオーナーさまへの対応を追加しました。診断して修理することはオーナーさまからみれば当たり前のことなので、修理の技能を競うだけではなくて、お客さまの立場になった対応も審査します。“どこが壊れたのか、どのような困りごとがあるのか”など、お客さまに対して親身に対応する問診や修理結果の分かりやすい説明などを行なうことで、ネガティブな理由でお問い合わせいただいたユーザーさまが、結果に満足していただけるところまで持っていけるかという部分を重視します。ボルボは顧客満足度ナンバー1を目指していますので、切磋琢磨して本当にお客さまの満足を勝ち得る内容で頑張っていただきたいと思います」と語った。
表彰式には選手、関係者がすべて参加する懇親会が行なわれた。ここでは、ボルボ・カー・コーポレーション グローバル・カスタマー・サービス バイスプレジデントのマーティン・パーソン氏が「ファイナルに残った皆さま、今回、ここにいることを光栄と思って下さい。また、各ディーラーでは選手達の素晴らしい技術をぜひとも生かして下さい。これから入賞者の発表となりますが、私はスウェーデンでも上位に入賞した方に会えるのを楽しみにしています」と日本語で挨拶した。
そしていよいよ表彰式。1位はボルボ・カー横浜西口 チーム1(長谷川太一氏・野原沢氏)。2位はボルボ・カー多治見 チーム1(杉浦弘隆氏・水野智行氏)。3位はボルボ・カー・相模原 チーム1(佐藤利樹氏・比留川淳氏・大谷弘尚氏)となった。こちらの上位3チームは5月にスウェーデンで開催される「VISTA2018 Winners' Conference」へ参加。1位のボルボ・カー横浜西口チーム1は競技にも参加するとのことなので健闘を期待したい。