ニュース

メルセデス・ベンツと竹中工務店、ブランド初のEV「EQC」を披露したEQブランド発表会

リビングの未来を具現化した「EQ House」を期間限定オープン

2019年3月12日 発表

 メルセデス・ベンツ日本は3月12日、電動モビリティを包括する新ブランド「EQ」の日本展開を発表する「EQブランド プレス発表会」を開催。同会場でメルセデス・ベンツ初のEV(電気自動車)「EQC」や、モビリティとリビングの未来の形を具現化した「EQ House(イーキューハウス)」が披露された。

 この日発表された「EQ」ブランドは、“Electric Intelligence(エレクトリックインテリジェンス)”を表すメルセデス・ベンツの未来に向けたブランドで、今後エレクトリック・モビリティに関する製品、サービス、新技術のシンボルとして展開していく。

 メルセデス・ベンツ日本では「EQ」の日本展開を機に、竹中工務店とコラボレーションし、未来の自動車とリビングの形を具現化した施設「EQ House」を3月13日にオープンする。

 独ダイムラーでは、Connected(コネクト)、Autonomous(自動運転)、Shared&Services(シェアおよびサービス)、Electric(電動化)の4つのキーワードの頭文字「CASE(ケース)」を中長期戦略に掲げ、次世代の自動車社会の概念を変える言葉として使用している。

 EQ Houseは、ダイムラーの「CASE」が普及した未来のライフスタイルを、竹中工務店の最先端のデザインと技術で具現化した体験施設として、日本で展開するEQモデルを展示するほか、様々なコラボレーションイベントやコンテンツを通じて、モビリティとリビングの未来の形を実際に体験できるものとしていく。

 EQブランド発表会と合わせて、EQ Houseの一般公開に先駆けた施設見学会、施設概要説明会が「Mercedes me Tokyo」で開催されたので、その内容をレポートする。

「EQ」の日本での展開について語ったメルセデス・ベンツ日本 上野社長

「ダイムラーは2022年までに電気自動車を10モデル以上発表すると宣言しています。」と力強く今後の電動化の加速について語るメルセデス・ベンツ日本の上野氏

 発表会のプレゼンテーションで最初に登壇したメルセデス・ベンツ日本 代表取締役社長兼CEOの上野金太郎氏は、ダイムラーの中長期戦略と日本でEQ Houseの建設に至った経緯などについて説明した。

 上野氏は「EQは、ダイムラーが2016年9月のパリモーターショーにおいてに発表したCASEのEを推進するためのブランドです。CASEとは、すなわちC・コネクテッド、A・オートノモス、S・シェアアンドサービス、そしてE・エレクトリック、電動化の4つの頭文字を取っています。ダイムラーは2016年に戦略を発表以降、C、メルセデスミー・コネクトや対話型インフォメーテッドシステムMBUX(メルセデス・ベンツ ユーザー エクスペリエンス)を導入、A、自動運転に繋がる技術として進化し続けるレーダーセーフティーの搭載、日本においては9割以上の完全自動運転の実証実験を行なっています。S、シェアおよびサービスの分野では、日本でもShare Car Plus(シェアカープラス)、Tap! Mercedes(タップメルセデス)、Mercedes-Benz Rent(メルセデスベンツレント)などの新しいプログラムも、すでに開始しています」と話した。

ダイムラーの中長期戦略「CASE」について解説する、メルセデス・ベンツ日本の上野氏のプレゼンテーションスライド

 そして、Eの電動化の分野について、上野氏は「プラグインハイブリッドのEQ Power(イーキューパワー)、完全な電気自動車のEQ(イーキュー)、燃料電池車のF-CELL(エフセル)と、F1マシンにも搭載しているEQ Power +(イーキューパワープラス)を展開しています。また先日のジュネーブモーターショーで発表された電気自動車のフォーミュラカーによるレース『Formula E(フォーミュライー)』に参戦するマシンもEQブランドの仲間で、これによりメルセデスはF1とFormula Eの両方に参戦する世界唯一のメーカーとなりました」と紹介した。

 加えて、上野氏は「現在ダイムラーのパワートレーン開発は、高効率のガソリンエンジン、クリーンディーゼルエンジン、プラグインハイブリッド、燃料電池、電気自動車と、お客様のニーズや使用用途に応じ、全方位かつ多岐に渡っています。しかし中長期戦略に揚げているように、今後は電動化が加速していく流れとなっています。新しいブランドであるEQは、Electric Intelligenceを意味し、電気自動車そのものだけでなく、電動化に伴う新技術やインフラ、関連するサービスすべてを包括するブランドです」と説明した。

電動化が加速すると説明するスライド。

 締めくくりに、上野氏は「本日は、初のEVであるEQC(イーキューシー)もEQ House内に日本で初めて展示させていただきます。EQ HouseはEQブランドを体験できる、まったく新しいコンセプトの施設で、竹中工務店が設計・施工しました。前回の東京モーターショーの際に竹中工務店と会話する機会があり、近い未来に私たちのライフスタイル、モビリティというのはどうなっているのだろうか、実際に造ってみてはどうかと、共にプロジェクトを実施することとなりました。今回の設計・施工においては、世界初の技術が大量に採用されています。」と語った。

日本で初めての展示となったEV「EQC」についても触れていた。気になる主要諸元は、航続距離400km以上、非同期式モーターx2による4輪駆動で出力300kW/408hp、最大トルク765Nm、0-100km/h加速5.1秒

EQ HouseはAIを搭載した近未来の建築、竹中工務店 花岡氏

「今までのIoTとは異なる、まったく新しいコンセプトの建築です。デジタル情報を活用した最先端の設計・生産技術を採用しました。」と話す竹中工務店の花岡氏

 続いて登壇した竹中工務店 東京本店 設計部 副部長で最先端の建築設計を行なうアドバンストデザイングループ長の花岡郁哉氏が、EQ Houseについて解説した。

 花岡氏は「近代の建築は自動車業界からも多大な影響を受けながら、20世紀初頭の工場での生産システムの導入やデザインの革命が起こったと言う経緯があります。それから100年余りが経ちましたが、今ではIoTやAI技術の飛躍的な発展により、再びモビリティとリビングの関係が大きく変わる時代が来ているのではないかと感じています。今回の建物(EQ House)はメルセデス・ベンツのEQブランドの展開、経営戦略を体験できる施設として近未来の建築を時代に先駆けて実現するプロジェクトとして取り組みました」とプロジェクトの狙いを話した。

 CASEが普及した未来について、花岡氏は「皆さんご存知のように、IoTはモノがインターネットに繋がる状態のものを言いますが、最近ではIoE、すべてのものが繋がると言われています。そして建築は、その接点になることが求められていますが、CASEと言う概念が浸透した場合の私たちの未来を考えると、コネクトするだけでなくシェアされる可能性も高まりますので、人の好みや感性、モノ、情報、サービスがシェアされる、これからの建築の在り方を考えました。これまで人は与えられた環境の中で生活を送ってきましたが、これからは一人一人の好みに合わせて調整され、パーソナルな時代になると言われています」と話すとともに、「従来クルマは家の外、あるいはガレージに止まっていましたが、CASEが進むことによって電動化が進むとモビリティは家の中に入り込み、シームレスに繋がることが可能になります。例えばドローンによる宅配や自動運転などの実現の目途が立っていますが、建築がそれに十分対応できているかと言えばそうとも言えません。自動化、電動化したモビリティをしっかり受け入れることを前提にした、新しい建築を考える必要がありました。モビリティがリビングに入ってくると、(建築の)中と外の関係が変わります。外の世界が中へと入り込み、従来の建築の枠組みから外れた複雑な生活環境が生まれます」と説明した。

 EQ Houseについて、花岡氏は「新しい建築には高度なIT技術を活用した環境制御や、新しいインターフェイスが必要になります。また個人の好みを学習することで、快適な環境を生み出すことが可能になります。(建築は)従来の機能を満たす箱では終わらない空間、人が自ら環境にコミットし建築はパーソナライズされた空間になります。そして建築は人とコミュニケーションを取り、好みを学習します。人とともに成長する生命が宿る建築、これがEQブランド、そしてCASEからはじまり私たちが辿り着いた新しい建築の姿でした。今回は、今までのIoTとは異なる、まったく新しいコンセプトの建築です。またコンセプトに止まらず、技術的に実現させました」と語った。

竹中工務店の花岡氏のプレゼンテーションスライド(一部)。今までの建築は単に機能を満たすハコだったが、人が環境にコミットすることでパーソナライズされていくと考えている

EQCが室内に置かれたEQ Houseの施設見学会

六本木・Mercedes me Tokyoの隣に建てられたEQ House
EQ Houseには、基本的に窓がない

 EQ Houseの施設見学会では、エントランスのガラスドアに人が近づくとセンサーが反応し、調光フィルムのON/OFFが切り替わり、曇りガラスから透明に変わる点や、リビングとモビリティスペースの間に設置されたスライド式のガラスインターフェイス(ドア)に、室内の温度や明るさなどの情報やエネルギー情報、展示されていたEQCの車両情報や充電状況などが表示させることができた。

リビングとモビリティスペースの間に設置されたガラスインターフェイスに、プロジェクターから各情報を投影し、ガラスにタッチすることでモビリティや家の状態などを知ることができる

 人の手の動きや声により照明や空調などの室内環境をコントロールすることができ、AIを搭載することで個々の好みや快適性を学び、よりカスタマイズされた快適な空間で生活することが可能になると言う、これら建築の一連のサービスは、竹中工務店が開発したビルコミュニケーションシステム「ビルコミ」にAIを搭載することにより実現されており、家とモノ、クルマが繋がり、室内やエネルギーの状況を見守りながら、人に最適なサービスを行うものとのことだった。

モビリティスペースのガラスドアが開くと、そこには日本初展示となるEQCが止められていた

 また、EQ Houseは窓がなく、デジタル デザイン ビルド(デジタル情報を活用した設計・生産技術)による1200枚におよぶ穴の開いた外観パネルで覆われているが、1年365日の日照パターンすべてをシミュレーションした結果により、「木漏れ日の中に居るような快適さ」のために最適な形状と配置を決定したことで、外観パネル1200枚中、1100枚はカットされている位置や形状が違うとのこと。

こちらはEQ Houseの寝室。室内の音によって照明効果やアロマの香りが変わるなどのデモンストレーションが行われた