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【SUPER GT 最終戦 もてぎ】優勝者&チャンピオン会見。レクサス 6号車の山下選手、36号車とのバトルに「引くつもりはなかった」

17年ぶりのGT300タイトル、ARTA 鈴木亜久里監督「みんなの総合力でチャンピオンを取れた」

2019年11月2日~3日 開催

TOM'Sチーム監督の山田淳氏、大嶋和也選手、山下健太選手、福住仁嶺選手、高木真一選手、ARTA監督の鈴木亜久里氏

 SUPER GT 最終戦「2019 AUTOBACS SUPER GT Round8 MOTEGI GT 250km RACE」が、栃木県茂木町にあるツインリンクもてぎで11月2日~3日に開催された。11月3日に行なわれた決勝レースでは、37号車 KeePer TOM'S LC500の平川亮選手、ニック・キャシディ選手が優勝。2位に入った6号車 WAKO'S 4CR LC500の大嶋和也選手と山下健太選手が2019年シリーズのドライバーチャンピオンを獲得した。

 GT300クラスでは、レースの終盤まで65号車 LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/菅波冬悟組、BS)がトップに立っていたが、最終ラップのメインストレートに入ったところでスローダウン。その結果、2位を走っていた11号車 GAINER TANAX GT-R(平中克幸/安田裕信組、DL)が最後の最後でトップに上がって優勝。

 GT300クラスのチャンピオンは、55号車 ARTA NSX GT3の高木真一選手と福住仁嶺選手が、このレースを前にポイントでリードしていたため決勝で4位に入って、ドライバーチャンピオンとチームチャンピオンの両タイトルを獲得した。

 レース終了後には優勝クルーおよび、年間チャンピオンを獲得したクルーらによる記者会見が行なわれ、それぞれのレースでの感想やチャンピオンを獲得した想いなどについて語った。

決勝レース優勝者会見。GT300クラス優勝の11号車 平中選手、65号車のスローダウンに「???」

平川亮選手、ニック・キャシディ選手、平中克幸選手、安田裕信選手

 今回ツインリンクもてぎで行なわれたSUPER GTの最終戦は、GT500クラス、GT300クラス、どちらもチャンピオン決定戦になった。決勝レース優勝者と年間シリーズチャンピオンという、2つの勝者が誕生することになる。

 特に今回GT500クラスでは、決勝レースは37号車 KeePer TOM'S LC500の平川亮選手、ニック・キャシディ選手が優勝。一方、2019年ドライバーランキングのチャンピオンは、2位の6号車 WAKO'S 4CR LC500の大嶋和也選手、山下健太選手が獲得した。

 優勝した37号車 KeePer TOM'S LC500は、2019年のチームチャンピオンを獲得するも、平川選手、キャシディ選手、2人のドライバーはいずれもドライバーチャンピオンを逃した悔しさを隠しきることができない様子を感じる印象的な会見となった。

――それでは優勝したGT500、GT300それぞれのドライバーに今日のレースの振り返りを

ニック・キャシディ選手

キャシディ選手:難しいレースだったが、よいスタートが切れて、ピットのタイミングも作業も完璧だった。今日僕達のクルマはグリッドの中で一番速いクルマだったのだが……(言葉が途切れる)。

平川亮選手

平川選手:ピットアウトしてからのアウトラップはよかった。ずっと36号車の後ろにいたときにはだんだんとフロントがきつくなった。トップに立ってからは後ろの状況を確認しながら走った。結果的に優勝はできたが、悔しいというか、あまり言葉にできない…(こちらも言葉が途切れる)。

安田裕信選手

安田選手:予選は4番手で、前の2台が接触してくれたので前に出ることができた。トップを行く65号車が思ったより速くて、こちらは56号車が入った瞬間に一緒に入った。SUPER GTで年間2勝は初めてだったので嬉しい。

平中克幸選手

平中選手:今週は走りはじめからよかった。ダンロップが新しいタイヤを持ち込んでくれたが、テストをしたことがないタイヤだったので不安はあったが、履いてみたらいいフィーリングで走り込むことができた。レースでも期待していたけど、65号車が速くて、2位でも久々の表彰台だしとゴールしようアクセルを緩めていたら、その65号車が割と近くにいて。あれ??となったのだけど、もしかしてチェッカーに気づいていないのか、それとも何かのトラブルなのかわからないけど、こちらはもう一度アクセルを踏み直してチェッカーを受けた。チームにも無線で話しかけたけど、チーム側も把握していないような状況だった。棚ぼたの勝利であることは間違いないが、その機会が来た時にそれを受け取れる位置をキープしてきたことが大事で、完璧なレースをすることができた。

――キャシディ選手に、1周目で前を行く6号車を抜いたり、その後も23号車を抜いたと思うが、その時の状況をもう少し詳しく教えて欲しい。

キャシディ選手:自分達はウォームアップでうまくいき、コールドタイヤで走ることには自信があったし、6号車とのバトルではいつも勝っていたので自信を持って戦うことができた。

――37号車の2人に今年のベストレースとその理由を教えてほしい。

平川選手:金曜日にご説明したのと何も変わっていない…

キャシディ選手:オートポリスだ、スポーツランドSUGOのレースもよかった。

――11号車にとって今シーズンを振り返ると?

平中選手:シーズンを振り返ると前半戦で1つ勝つことができたのはよかった。ただ、これはGainerチームで長く戦ってきたのでよくわかるのだが、シリーズ中盤がウィークポイントで、やはり今年もそこで落とすレースが続いてしまっていた。後半戦にかけてもノーポイントが続いてしまい残念だったが最終戦で勝てたのは嬉しい。

――キャシディ選手に、序盤36号車を攻略するのは難しかったか?

キャシディ選手:オーバーテイクは難しかった。一貴はいくつかのミスをして追い越せるかと思ったのだけど、チームメイトとのレースだし、紳士的にやろうと思った(笑)。ピット戦略に関しては36号車の僕らの戦略をカバーするという状況でちょっとびっくりだった。

チャンピオン記者会見。レクサス 6号車の山下選手、36号車とのバトルに「引くつもりはまったくなかった」

終始表情が硬かった37号車の2人とは対照的にチャンピオンの2人は笑顔が絶えなかった

 優勝会見後にはチャンピオン記者会見が行なわれ、2019年シリーズ GT500クラスのドライバーチャンピオン、6号車 WAKO'S 4CR LC500の大嶋和也選手と山下健太選手、GT300クラスのドライバーチャンピオン、55号車 ARTA NSX GT3の高木真一選手、福住仁嶺選手、GT500クラスのチームチャンピオンを獲得した37号車 LEXUS TEAM KeePer TOM'Sチーム監督の山田淳氏、GT300クラスのチームチャンピオンを獲得した55号車 ARTA監督の鈴木亜久里氏が参加した。

――チャンピオンを獲得した今の感想を

大嶋和也選手

大嶋選手:とにかくほっとした。GT500に上がって11年目だし、もう愛想尽かされてもいいなというシーズンもあったけど、チーム・ルマンのエースとして走らせてもらってきた。そして健二さん(山田健二エンジニア、昨年急逝された)を失って、それからエンジニアとして阿部和也エンジニアが来てくれた。これまで状況が厳しい時もチームが助けてくれた。本当に嬉しい(…と涙ぐむ)。

山下健太選手

山下選手:序盤はああいう展開になることは予想していて、後半担当の自分は厳しくなると考えていた。そして36号車を抜かないとチャンピオンにはなれないとわかっていたが、関口選手もブロックがうまい選手で、気の迷いがあったら抜けないなと思っていた。ちょっと強引だと思ったけど、最終戦でチャンピンがかかっているレースで引けないし、引くつもりもなかった。あのタイミングで抜かなければ抜けなかったと思う。大嶋選手、寿一さん、阿部さんはじめチームがいいクルマを作ってくれて、ぶつかった後のいいタイムで走ることができた。

山田淳監督

山田監督:隣にいる2人はF3時代には一緒にやってきた仲間。そんな仲間とこの場にこれたことを光栄に思う。ドライバー、チーム、スタッフに感謝している。

高木真一選手

高木選手:今日のレースは仁嶺が予選を頑張ってくれたお陰だ。それが今日のレースでは大きかった。それにより前の方の集団でレースをすることができた。自分のペースはそこそこよかったと思うが、クルマを攻めたセットにしてしまっていたので、その後スティントではタイヤカスがついてしまい攻められなくなってしまった。そんなセットにしたのは自分のミスだ。96号車が追い上げてきた中で、結果は4位で表彰台は失ったけど、17年ぶりにタイトルを取れたというのは、亜久里さん、土屋さん、オートバックスさんがずっと使ってくれたからで、感謝したい。こんなおっさんでもチャンピオン争いできたことに感謝。

福住仁嶺選手

福住選手:1年目だったけど、チームのお陰でチャンピオン争いをすることができた。昨シーズンのこのレースでは12ポイントで逆転されたという例もあったので、レース前は不安でいっぱいだった。ポイント差を頭の中で考えて亜久里さんの怒った顔を想像したく無かったので頑張った。SUGOの時は勝って戻ってきたら誰もいなくて悲しかったけど、今回は高木さんが泣いていたので、もらい泣きしそうになった(笑)。

鈴木亜久里監督

鈴木監督:去年の最終戦はとても悔しい想いをしたが、今年は真一が仁嶺をコントロールしてくれたし、BMWからNSXにクルマを替えた初年度だというのに、全レース完走、全レースでポイントをとったことが大きい。仁嶺は今年1年目で箱のクルマに乗るのは初めてという中で、真一が引っ張っていってくれるといういいコンビだったと思う。でも、福住がクルマにのってるとなんか不安で、無線で何か言ってくるたびにスタッフ全員が胃が痛くなるけど、レース終わると大丈夫ですよとしか言わないし(笑)。ARTAとしては17年ぶりにGT300のタイトルを獲ったが、17年前にチャンピオンを獲ったのは真一と、今年ランキング2位だった新田という、つまりオレのチョイスは17年前から正しいということだ(笑)。

――大嶋選手に、ここまで来るにはどういう気持ちだったか?

大嶋選手:正直むちゃくちゃ不安だったし、このレースに向けて体重も落としてくるなどやれることはやってきた。でも占いでも一番だったし、ラッキーカラーとか青と書いてあったので、これは行けるかと?(笑)。でも本当に正直不安だった。

――山下選手の心中は?

山下選手:僕はそこまでは…もう少し緊張するのかなと思っていたけども、自分が乗るときには追う立場になっていたので緊張しなかった。

――山下選手に、36号車のバトルの時はどのような状況だったのかもう少し説明して欲しい。また、フィナーレの記者会見でもオートスポーツ誌の辞令で、海外に行くのではと言われていたが?

山下選手:GT300の下位のチームは、GT500との速度差が大きいという状況があって、関口選手がちょうどヘアピンの立ち上がりでそれに引っかかっている状況があった。後ろにつけている場合はそれがチャンスになる。それで、バックストレートの終わりでイン側にいって飛び込んだのだが、ブレーキは行きすぎていて止まりきれない状況だった。それで少しロスして関口選手にクロスを刺される形になり、あの状況になった。自分もここは引いちゃいけないし、関口選手も引かない。お互いに全快のまま入っていって接触した。ビデオで見たらたいしたこと無いように見えたと思うが、乗ってる自分としてはドカンというすごい衝撃だった。ただ、そこに入る前に自分の方が前に出ていたので、順位を戻すなどの必要は無いと判断した。

 自分としてはSUPER GTが好きだ。こんな接戦で走れるレースは世界的に見ても他にはないので、今日のようにああいうふうになったときの勝負強さが鍛えられる。その点WECは別の種類のレースだと考えられる。ただ、来年からは両方でるのは難しいみたいなので…。

――最後に今シーズンを振り返って

山田監督:開幕戦から今日までいろいろなレース展開があったと思うけど、優勝で終われたというのは嬉しく思っている、来年に向けて頑張れる。また来年頑張って全力で戦ってチャンピオン取りたい。

大嶋選手:開幕戦の段階ではここに来れるなんて思ってもいなかった。2戦目あたりから力が発揮できるようになってきて、勝てそうだなという印象を鈴鹿で得て、タイで勝ってから運が向いてきた。これでプレッシャーはなくなったので、来年以降は結果のことはあまり気にせずリラックスしてやりたい(笑)。

山下選手:難しいシーズンで天候も変わっているところや勝負どころで正しい判断ができた。大嶋選手やチームの判断も完璧だった。チームに感謝したい。(来年以降は参戦されないとのことです、残念ですと司会に言われて)サヨナラ!(笑)

高木選手:車両がNSXになってフロントタイヤが小さくなったりして、その小さなサイズのフロントタイヤをどうやって生かすかを手探り状態の中で少しずつよくなってきた。毎戦、毎戦、ポイントを確実に取れたことがチャンピオンを取れた要因だ。特にタイヤはオールマイティーでよく、ブリヂストンさんが本当にいいタイヤを用意してくれた。仁嶺は箱車初めてなのにいいタイムを出してきて、GT500との駆け引きも視野を広げてぶつからなかったことが大きかった。

福住選手:初年度でわからないことだらけだったけど、高木さんからも教え方がうまく的確にコメントしてもらい対応できた。高木さんもおっしゃったように、ポイントを落とさないレースができたことがチャンピオンにつながった。

鈴木監督:全部のレースでポイントが獲れたというのがすべて。ペナルティがあっても、きっちり全戦ポイントを獲ってきたというのが大きなポイントだ。去年はいいレースとそうでないレースの差が大きくて厳しかったが、今年はみんなの総合力でチャンピオンを取れた。