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【SUPER GT 最終戦 もてぎ】SUPER GTラストランのバトン選手「次のステージへ向かうために日本でのレースを終えることを決断」

「次のカテゴリーは何も決まっていないがレースを辞める訳ではない」と話す

2019年11月2日~3日 開催

ジェンソン・バトン選手

 1号車 RAYBRIG NSX-GT(山本尚貴/ジェンソン・バトン組、BS)でSUPER GTに2年間参戦してきたジェンソン・バトン選手だが、11月3日に決勝レースを迎えるSUPER GT最終戦「2019 AUTOBACS SUPER GT Round8 MOTEGI GT 250km RACE」が、SUPER GT最後のレースになる。

 2018年レギュラー参戦を開始したバトン選手は、参戦初年度にいきなりチャンピオンを獲得する大活躍を見せ、2019年のシリーズにも継続参戦していたが、その勇姿をSUPER GTで見ることができるのは、今回のツインリンクもてぎでの最終戦が最後となる(すでにDTMとの交流戦にバトン選手は参戦しないことが明らかにされている)。

 そうしたバトン選手は11月2日の予選終了後に、今シーズンの最終戦、そして自身のSUPER GTでの最後のレースを前にしての心境、そして2020年以降の活動についても言及した。

次のステージへと向かうために日本でのレース活動を終了。次のカテゴリーはまだ決まっていないとバトン選手

バトン選手がドライブする 1号車 RAYBRIG NSX-GT(山本尚貴/ジェンソン・バトン組、BS)

――この2年間の振り返り、よかったこと、残念だったこと、そしてチームメイトである山本尚貴選手について教えてほしい

バトン選手:人生は常にチャレンジの連続だ。F1からSUPER GTに移ってきた時も新しいチャレンジだった。レースのやり方も違うし、チームメイトもいる、速度の違うGT300もいる。これまでやってきたのと全く違うレースだった。チームは非常に若いメンバーも多く、そうしたチームと一緒になってチャンピオンシップを取ることができた。非常に感動的な瞬間だった。高橋国光氏、チームなど関係者に感謝したい。

 尚貴と一緒にやるのは本当に楽しかった。初めてチームメイトに速く走ってほしいと思ったのはよい経験だった。彼は本当に速いし、新しいカテゴリーになるし、経験がある彼から学ぶことは本当に楽しかった。彼は来年新しいレギュレーション、新しい車両で戦うことになると思うが、彼の新しいチャレンジが成功するといいなと思っている。

――車両をシェアしながら戦うのはこのシリーズが初めてだったと思うが、いい意味で困ったことは何かあったか?

バトン選手:一番困ったことは、2人の背の高さの違いだ。自分は183~184cmぐらいの身長なのだが、彼とは20cm近い違いがあるため、シートポジションの調整には本当に困って、お互いに妥協できる範囲で我慢してレースをすることになった。(週末を通じて1人で戦ったDTMの)ホッケンハイムでは自分の思い通りの設定にすることができた。その時は自分の好みのシートの角度、ステアリングの角度に調整したところ非常に快適だった。その意味でシートポジションというのが本当に困ったことだった。

――海外ではバトン選手がNASCAR(米国のストックカーレーシングシリーズ)に興味があるという記事が出ていたが、NASCARに興味があるのか?ホンダでのSUPER GTのレースはこれで最後になるが、2020年トヨタやニッサンに移籍したりとかはないだろうか?

バトン選手:(笑いながら)ニッサンやトヨタといった他の日本のメーカーさんと契約するということはない(笑)。ホンダさんとはずっと一緒に仕事をしてきたし、来年ホンダさんとお仕事をすることはないかもしれないが、これからもいい関係でいたいと思っている。NASCARに関してはアメリカ・ホンダがNASCARに興味があるという話が出ていて、それに対してSNSで「ホンダがNASCARに挑戦するなら僕はその準備ができている」と書いたんだ。これまで他の元F1ドライバーがチャレンジしてことごとくうまくいっていないので、難しいチャレンジになるとは思うが、やれたら面白そうだ。

 現時点では来年のプランは決定していない。特に来年の前半は何も予定していないので、家族と過ごす時間を作って少しお休みしたいと考えている。

やりたいことは沢山あり、オフロードにも興味があるし、ル・マン24時間にも再度挑戦したい

1号車 RAYBRIG NSX-GTに乗るバトン選手は今日のレースが見納め

――明日のレースで日本のレースを止める理由は?

バトン選手:F1をやめてSUPER GTに参戦したときも新しいチャレンジだった。なのに初年度にいきなりチャンピオンを獲ることができ本当にいい年だったと思う。そして今年1年継続して参戦し、そろそろ次のチャレンジに向かう時が来たと感じたんだ。自分はまだ39歳で決してレースを引退する歳ではないけど、新しいことをするにはそのチャレンジに時間が必要になる。その意味で、別に日本のレースが嫌いになった訳ではなく、できるうちに新しいトライをしていきたいと考えただけだ。

――2018年お子さんが誕生したと思うが、それがご自分のレースにどんな影響を与えているか?

バトン選手:それはいい質問だ。人生は常に変わっていくし、子供が生まれることはその1つだろう。だが、レーシングに対する姿勢は変わらないし、やることも一緒だ。常にベストを尽くす、子供が生まれてもそれは変わらない。子供が生まれた後も富士やスポーツランドSUGOでレースをしたけど、やはり全力を尽くして戦った。今はアメリカに住んでいて、レースやテストのたびに出かける生活だ。子供が生まれてその過ごし方などはちょっと変わったが、レーシングドライバーであることには何も変わりが無い。常に全力で勝利を目指している。

――先ほどNASCARの話がでたが、今後どんなことをやっていきたいのか、方向性を話してほしい。例えば元チームメイトのフェルナンド・アロンソ選手はダカール・ラリーに取り組んでいるようだが…

バトン選手:やりたいことは沢山ある。ダカールとはちょっと違うかもしれないが、オフロードには大変興味がある。実はDTMの交流戦が行なわれているのと同じ週末には、バハ1000に出場する。また、将来的にはル・マン24時間にもう1度出てみたいと思っている。そのためにも新しいレギュレーションがうまくいけばいいと思っている。また、先ほど述べたとおり、NASCARも素晴らしいシリーズだと考えている。

 何か1つにフォーカスするというのではなく、いろいろトライしたいと思っている。カートの世界選手権に出たっていいかもしれないし。いずれにせよ、僕はまだハングリーで、これからもレースがしたいんだ。F1で作ってきた歴史、そしてここSUPER GTでも新しい歴史を作ることができ、素晴らしいキャリアを刻むことができた。これからの新しい挑戦にはワクワクしている。

――最後にバトン選手からひと言

バトン選手:最後に、多くの皆さんにこの2年間を本当にありがとうと言いたい。僕は日本の文化や人々を心から尊敬している。1997年にカートで初めて日本に来たときから、日本のドライバーの競争力が高くて本当にびっくりした。そして最後に、こんないい機会を与えてくれたホンダに心から感謝したい。

ジェンソン・バトン選手