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フォルクスワーゲンの新型「ゴルフ GTI」(8代目)のポイントはどこにある? オンライン説明会レポート

「日常走行とスポーツ走行で求められる性能を高い次元で達成」

2020年5月13日(現地時間)開催

新型「ゴルフ GTI」(8代目)のプレゼンテーションがオンラインで開催された

歴代ゴルフ GTIを振り返る

 フォルクスワーゲンの屋台骨を支えるハッチバックモデル「ゴルフ」。8代目となる新型はすでに欧州での販売をスタートさせているが、今回、そのスポーツモデルである「GTI」の概要説明会が開催された。本来であれば3月のジュネーブモーターショーで実車がお披露目されるはずだったが、コロナ禍によりショー自体が中止となったことはご存知のとおり。

 日本時間で5月13日夕刻に40分間行なわれた当説明会は、マイクロソフトのWebサービス「Skype」を活用。世界中のメディア関係者に対してオンラインで開催され、筆者もそれに参加した。

 フォルクスワーゲンからのプレゼンターはフォルクスワーゲン グループ チーフデザイナーのクラウス・ビショフ氏、車両ダイナミクス&シャシー制御システム責任者のカルステン・シェーブスダト氏、フォルクスワーゲン ワークス ドライバーのベンヤミン・ロイヒター氏の3名。

説明会の登壇者
フォルクスワーゲン グループ チーフデザイナーのクラウス・ビショフ氏

 プレゼンテーションでは、最新型である8代目ゴルフ GTIのセールスポイントを車内、外観、パワートレーンなどに分けて紹介され、最後にチャット形式でのQ&Aセッションも設けられていた。

 ゴルフ GTIの歴史は長い。初代GTI誕生の2年前、1974年に登場したプロトタイプには、直列4気筒1.6リッターエンジン(キャブレター仕様で100PS)が搭載されていた。1976年発売の量産タイプは、世界初の大衆向けコンパクトハッチ“ホットハッチ”として迎え入れられた。搭載エンジンはキャブレターから電子制御噴射装置へと換装されて110PS(最終的には112PS)を発生し、182km/hの最高速度を誇り、46万1690台が生産された。

歴代ゴルフ GTI

 1984年登場の2代目にはスーパーチャージャー(160PS)、1991年登場の3代目ではターボチャージャー(150PS)とそれぞれ過給エンジンが用いられた。1998年の4代目は150PSからスタートし、GTI誕生25周年として2001年に導入された記念モデルは180PSを達成した。

 2004年の5代目ではターボエンジンが230PSと大台を突破。デュアルクラッチトランスミッションである「DSG」が選択できることもトピックだった。2009年登場の6代目では235PSを発生し、電子制御ディファレンシャルロック「XDS」を装備して走行性能を大きく向上。

 そして2013年登場の7代目では310PSを発生する「ゴルフ GTI クラブスポーツ S」がニュルブルクリンク北コースで7分49秒21を記録。さらにCar Watchでも紹介した「ゴルフ GTI TCR」(290PS)は日本でも600台の限定販売が行なわれている。

ゴルフ GTI TCR

 こうしてベースモデルであるゴルフの進化と足並みを揃えGTIもラインアップに加わってきたわけだが、高いスポーツ性能と優れた実用性が世界中で受け入れられ、7代目までを通じ全世界で230万台以上が販売されてきた。

ゴルフ GTIは、7代目までに全世界で230万台以上が販売されたという

8代目ゴルフ GTIの内外装、走行性能のポイントは

8代目ゴルフ GTIの狙い

 迎えた2020年、8代目ゴルフ GTIの狙いは以下の5項目だ。

①:GTI特有の俊敏でニュートラルなステアリング特性を向上させた、より大きなドライビングプレジャーが得られること。
②:コーナリング速度を向上させるために増大させたコーナリンググリップ特性を得ること。
③:曲率のきついワインディングロードやスタビリティが要求される高い速度域、この両局面で安定した走行性能を向上させること。
④:非常にすぐれた直進安定性と車両応答性能。
⑤:日常領域での高い実用性と、優れたサスペンションがもたらす長距離走行での快適性。

 8代目は、歴代モデルが大切にしてきたGTIらしさをデザインの上でも洗練させたという。チーフデザイナーであるクラウス・ビショフ氏は、「ゴルフ GTIはいわばアイコンです。よって、私を含めた開発メンバーはその重責を認識しています。歴史あるアイコンを進化させることは非常に困難ですが、デザイナーとしてもっともエキサイティングなプロジェクトでした」と語る。氏はさらに、「ゴルフ GTIにも進化が必要です。言い換えればスポーツモデルの再定義。私は新しいゴルフ GTIを生み出したことに誇りを持っています」と続けた。

 発表された欧州仕様の8代目ゴルフ GTI。搭載エンジンはアイドリングストップ機構の付いた直列4気筒2.0リッター直噴ガソリンターボ「EA888 evo4」型エンジンで、245PS/370Nmを発生する。このエンジンのベースは、7代目ゴルフ GTIの「GTI パフォーマンス」が搭載していた。

 組み合わせるトランスミッションは6速MT仕様が標準で、オプションとして7速DSG(型式:DQ381)が選べる。ボディの空気抵抗係数(Cd値)は7代目の0.3から0.275へと向上し、最高速はどちらも250km/h。ホイールは17インチが標準で、18インチ、19インチが用意されている。赤色に塗装されたブレーキキャリパーも標準装備。

8代目ゴルフ GTIが搭載する直列4気筒2.0リッター直噴ガソリンターボ「EA888 evo4」型エンジン。最高出力180kW(245PS)、最大トルク370Nmを発生

 外観上の特徴は、ハニカム構造のグリル下部左右にそれぞれ5個、合計10個のLEDライトが配置されたこと。また、LEDヘッドライト(赤いLEDストリップ入り)は標準装備で、オプション装備となる多機能型のIQ.LIGHTとして「LEDマトリクスヘッドライト」の装着が可能だ。

8代目ゴルフ GTIのエクステリア

 車内の特徴は、GTI専用の3本スポークステアリング。このステアリングには新しい形式のマルチファンクションスイッチとタッチコントローラーも備わる。車内各部へのLED照明もGTI専用色を含む30色から構成可能。また、他の8代目ゴルフと同様に、10.25インチのデジタルコクピットモニター(運転席前)と、10インチのナビゲーションモニター、バイワイヤー方式のトランスミッションシフト、210km/hまで作動する「Travel Assist」(ACCやレーンキープアシストなどを連携させたADAS)なども装備可能だ。シートは新設計のスポーツタイプで、GTIのアイデンティティでもあるチェックシートは「Scalepaper」と呼ばれるタータンデザイン柄を採用する。

8代目ゴルフ GTIのインテリア

 走行性能はどうか? プレゼンテーションを担当したカルステン・シェーブスダト氏によると、「ゴルフ GTIは純粋なドライビングの代名詞であり、日常走行とスポーツ走行で求められる性能を高い次元で達成しています。また、7代目GTIでもすでに高いドライビングダイナミクスを持ち合わせていたわけですが、8代目ではそれをダイレクトなステアリングフィールによって具現化しました」と語る。

 フロントサスペンションはウィッシュボーンベアリング、スプリングなど主要部品の多くを新設計したことで3kgの軽量化を達成。アルミ製のサブフレームも最適化され、スプリングレートは7代目と比較して5%高められた。一方のリアサスペンションは新設計のダブルウイッシュボーン方式で、こちらのスプリングレートは7代目比で15%高められた。

 アダプティブシャシーコントロールである「DCC」は毎秒200回の減衰力調整を行ないつつ、電子制御ディファレンシャルロック機構「XDS」とも連動。また、新たに採用されたプログレッシブステアリングによって、ロック・トゥ・ロックは最大で2.1回転にまで小さくなり、市街地からワインディングロードまで意のままの走行ができるという。

 いずれはハイパフォーマンスモデルの存在も明らかになるのだろうが、歴代のGTIがそうであったように、まずはベースモデルからの登場となる8代目ゴルフ GTI。欧州では2020年の夏から販売される。

8代目ゴルフ GTIのオンボード映像。ドライバーはベンヤミン・ロイヒター氏(2分5秒)
8代目ゴルフ GTIのスラローム走行(52秒)