ニュース
ボッシュ、電気自動車やe-bikeなど電動化に約624億円を投資
「CES 2021」で世界的企業として初のカーボンニュートラル実現と発表
2021年1月12日 02:55
- 2021年1月11日 発表
ボッシュ(Robert Bosch)は1月11日、初のデジタル開催となった「CES 2021」のプレスカンファレンスにおいて、同社が2020年の末に第三者の調査により産業界の世界的な企業としては初めてカーボンニュートラル(CO2の排出量と吸収量が同じであること)を実現したと発表した。ボッシュは近年、持続的成長性に焦点を当てており、ボッシュのすべての拠点でカーボンニュートラルを実現するという意欲的なプランは2018年に発表されていたが、2020年末に予定どおり実現されたことになる。
また、自動車の電動化などに向けた取り組みでは昨年1年だけで6億ドル(日本円で約624億円)の投資を行なっており、ハイブリッドシステム、電気自動車用のパワートレーン(バッテリ+モーター)、そして水素自動車用のパワートレイン、自転車用のe-bikeシステムなど幅広い電動化用のソリューションを開発していると説明した。
そのほか、バッテリの状態をクラウドにあるサーバーに送りハイブリッド車や電気自動車のバッテリの状態を監視しながら最適な充電を行なったり、デトロイトでフォードなどと共同でバレーパーキング(米国で一般的な係の人が車を預かって駐車場に止めに行くサービスのこと)を自動で行なう社会実験などが成功したことなどが紹介された。
ボッシュでは、複雑さを増す自動車のソフトウェア開発に対応するため、さまざまな領域のソフトウェア開発を行なう「クロスドメイン コンピューティング ソリューション事業部」を10日前に設立。ECUなど従来からあるソフトウェアだけでなく、自動運転などを含めた領域のソフトウェアを開発していくという方針であることを明らかにした。
世界的な大企業として初めてカーボンニュートラルを2020年末に実現
ボッシュの記者会見は、Robert Bosch CTO 兼 CDO 兼 取締役会メンバー ミヒャエル・ボレ氏、北米ボッシュ社長 マイク・マンスウェッティ氏の2人が出席して行なわれた。
会見の冒頭、ボッシュが2018年に発表した「2020年末までにボッシュの全拠点においてカーボン・ニュートラルを実現する」という取り組みの結果について説明した。ボレ氏によれば「第三者機関の調査により、ボッシュが世界的な産業界の大企業としては初めてカーボンニュートラルを実現したことが確認された」とのことで、CO2排出量がCO2吸収量を含めてゼロになるカーボンニュートラルを大企業として初めて実現したことを明らかにした。
ボッシュは以前から企業スローガンの1つとしてサステナビリティ(持続的成長性、気候変動などに配慮しながら成長していくこと)を掲げており、2018年にその意欲的な取り組みの1つとしてカーボンニュートラルに取り組み、2020年末までに実現すると明らかにしてきた。今回、それが実際に達成されたことが発表されたのだ。
また、北米での新しいキャンペーンも明らかにされ、これまでボッシュがキャンペーンで使ってきた「Like a Bosh」(ボッシュのように)には、「live sustainable like a Bosch」(ボッシュのように持続的な成長で生きよう)に変更されることなどが明らかにされた。
自動車の電動化には引き続き強力に取り組む。2020年には電動化向けパワートレーンに624億円という多大な投資を行なう
自動車関連の発表では、自動車などの電動化に向けた取り組みが明らかにされた。マンスウェッティ氏は「ボッシュは自動車の電動化に積極的に取り組んでおり、製品のラインアップ拡充を図っている。例えばパワートレーンの開発では、ICE(内燃機関)からハイブリッド、電気、水素といったさまざまな種類に投資を続けており、昨年1年だけでその開発には6億ドル(日本円で約624億円)を費やした。すでに我々のパワートレーンをベースにした電動車は150万台の車両が世界中を走っている」と述べ、今後もその開発を続け、より魅力的な電動車を自動車メーカーが出荷できるようにしたいと述べた。
なお、ボッシュはe-bikeと呼ばれる電動自転車のソリューションに取り組んでおり、今回のCESでは電動自転車にナビネーションやフィットネストラッキング、さらには電子錠にもなる「Nyon control panel」が、CESで展示された優れた製品に与えられるアワード(賞)の「CES 2021 Innovation Award」を受賞したことを明らかにした。
また、米国で一般的なバレーパーキングを全自動化する取り組みなどが紹介された。
米国などではホテルの入り口に専任の担当者が待ち構えており、顧客から自動車を預かって専用の駐車場に駐車しに行くバレーパーキングと呼ばれる方式が一般的だ。
2020年にボッシュがフォードなどとデトロイトで行なった実証実験では、あらかじめ用意されている道路側のインフラを利用して自動車が自動でバレーパーキングに駐車することなどが行なわれた。ホテルのエントランスなどでドライバーが制御を自動バレーパーキング側に渡すと、自動車が自動運転でパーキングスペースに駐車しに行く。将来的には空港のパーキングなどでも同じ形で駐車できるようになると説明された。
このほかにも、電気自動車のバッテリの状況をクラウドに常にアップロードし、個々の車両に合った充電方法を採る仕組みも紹介された。現在の自動車のバッテリは化学反応で電気を蓄電するが、急速充電などを繰り返すと劣化が早くなるという課題を抱えている。そのため、完全に充電するのではなく、満充電より少なくできるだけゆっくり充電すると寿命を伸ばすことができる。
ボッシュが提案したシステムでは、常にそうしたバッテリの状態をクラウド側から監視しておき、充電ステーションに対して充電の閾値や速度などを指示することで、バッテリの寿命をできるだけ延ばすという仕組みになる。
クロスドメイン コンピューティング ソリューション事業部を新設し、ボッシュ全体の半数のソフトウェアエンジニアを移動させる
ボッシュはそのほか、AIoTと呼ばれるAIを利用したIoT(Internet of Things、インターネットに接続する機能を持つもの)に積極的に取り組んでおり、実際に同社の工場などで活用しているという。ドイツのホンブルグの同社工場に導入している機器では、この2年間でCO2排出量が10%も減ったという。
AIoTはそうした産業用途だけでなく、医療機器などにも活用され始めているという。同社が2020年3月に開発期間わずか6週間で立ち上げたCOVID-19(新型コロナウィルス)用のPCR検査機器となる「Vivalytic」では、5つの検体を同時に検査し2.5時間以内に検査結果を出すことができるという(つまり1つあたり30分)。現在増産を進めており、2021年中には300万回の検査を実現することが可能になるという。
ボレ氏は「2010年の自動車のソフトウェアコードは1000万行に過ぎなかったが、今は1億行に増えており、さらに将来の自動運転車では5億行と加速度的に増えている。こうした課題に対処するため“クロスドメイン コンピューティング ソリューション事業部”という新しい事業部を10日前に設立した。ここには1万7000名というボッシュのソフトウェアエンジニアの半数が所属しており、自動車メーカーが抱えているソフトウェアの複雑性という課題に一緒に取り組んでいく」と述べ、自動車向けのソフトウェアを開発する専任の事業部を新設し、ECUなど自動車で利用されてきたソフトウェアだけでなく、マルチメディア、自動運転などの領域(ドメイン)におけるソフトウェア開発を効率よく進めていくと述べた。