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ホンダF1 田辺豊治TD、「これまで得た知見を生かし、1992年のセナ以来のモナコGP優勝に全力を尽くす」

1コーナーにトップで入っていくマックス・フェルスタッペン選手(33号車 レッドブル・レーシング・ホンダ)ⒸGetty Images / Red Bull Content Pool

 F1第4戦スペインGPが5月7日~9日(現地時間)に、カタロニア州バルセロナにあるカタロニア・サーキットで開催された。レースは予選2位からスタートしたレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペン選手(33号車 レッドブル・レーシング・ホンダ)が1コーナーでトップを奪うと、序盤と中盤を支配したが、終盤に2位を走っていたルイス・ハミルトン選手(44号車 メルセデス)が2回目のタイヤ交換を先に行なうと、新しいタイヤの強みを生かしてあっという間に差を縮めて逆転し優勝した。

F1第4戦スペインGP、メルセデスのハミルトンが優勝 ホンダ勢はフェルスタッペン2位、角田はリタイア

https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1323207.html

 ホンダPU(パワーユニット)勢は、フェルスタッペン選手が今シーズン3回目の2位表彰台、レッドブル・ホンダのもう1台セルジオ・ペレス選手(11号車 レッドブル・レーシング・ホンダ)は予選8位から順位を3つ上げて5位、アルファタウリ・ホンダは予選11位のピエール・ガスリー選手(10号車 アルファタウリ・ホンダ)が順位を1つ上げて10位、予選16位からスタートした角田裕毅選手(22号車 アルファタウリ・ホンダ)は6周目に燃圧低下のトラブルが発生してICE(内燃エンジン)に燃料がいかなくなるトラブルが発生してリタイアに終わった。

フェルスタッペン選手が2位表彰台を獲得 ⒸGetty Images / Red Bull Content Pool

 F1の現場でホンダPUのテクニカル面を統括するホンダF1の田辺豊治TD(テクニカルディレクター)は、レース後に行なったオンライン会見の中で「角田選手の車両に発生したパワーユニットのトラブルは燃圧低下によるエンジンのシャットダウン。前触れもなく突然発生した。原因はまだ不明でこれから調査する」と述べたほか、次戦のモナコGPに向けては「これまでのサーキットでの低速コーナーなどで得られた知見をパワーユニットの設定などに生かして、今度も勝つぞという気持ちで乗り込む」と述べ、1992年に故アイルトン・セナがナイジェル・マンセル氏に競り勝って得た勝利以来となるモナコGP優勝に全力を尽くすと述べた。

角田選手の車両に発生したトラブルは燃圧低下によるエンジンシャットダウン

――それではまず田辺氏からレースの振り返りを

田辺氏:本日のレースでは結果としてフェルスタッペン選手が2位表彰台を獲得した。レースではスタートがよく、1コーナーでハミルトン選手をオーバーテイクして序盤と中盤にトップを走っていた。しかし、ハミルトン選手が2回目のピットストップをしてから終盤に激しい追い上げを見せ、なすすべなくパスされて2位になった。その後、3位のボッタス選手がファステストラップを狙ってピットに入るなどして差が開いていたので、最後の最後に新品のソフトに履き替えてファステストラップを獲得して1ポイントをゲットした。1位と2位の争いで言うと、メルセデスの実力と速さ、そして戦略すべてがわれわれを上回っていたという結果で2位だった。

マクラーレンのダニエル・リカルド選手(3号車 マクラーレン・メルセデス)とバトルするセルジオ・ペレス選手(11号車 レッドブル・レーシング・ホンダ)ⒸGetty Images / Red Bull Content Pool

 ペレス選手は予選が8位となり、トレイン状態になってしまうバルセロナで5位まで追い上げた。前を抜くことに時間を使ってしまって、順位をいくつかあげて終了になってしまった。予選の結果が序盤の展開に響いて追い上げができなかった。

 ガスリー選手はスタート位置の関係で5秒ペナルティーを受けてしまい、予選順位から上げてきていたがもう一度順位を落とす結果になった。そこからかなりのハイペースでオーバーテイクもしてポイント獲得の10位まで盛り返した。予選は厳しいところがあったが、他の中段勢とのレースペースの違いが功を奏して10位まで盛り返すことができた。シーズンは長いので、チームにとってはこの1ポイントは貴重だと思う。

 角田選手に関しては燃圧(燃料圧力)の低下が出てしまい、リタイアになってしまった。原因はこれから詳しく調査して、他の車両への対応を含めてやっていく。

――角田選手の車両の燃圧低下はスタート直後から始まっていて、修復できないような感じでストップしたのか?

田辺氏:突然燃圧低下が発生して、エンジンに燃料がいかなくなってしまい止まってしまった。

レース前の角田裕毅選手 ⒸGetty Images / Red Bull Content Pool
角田選手のレースは6周目に燃圧低下によるエンジンのシャットダウンでリタイアに ⒸGetty Images / Red Bull Content Pool

――レッドブルとメルセデスの勝敗でいうと、これで1勝3敗になった。この敗北にダメージはあるか?

田辺氏:速さも作戦も改善しないといけないと考えている。いつも申し上げていることだが、チームとしての総合力を上げるために、このままでは勝てないというのがわれわれの認識だ。

――角田選手のトラブルに関して、ギアボックスが壊れたようだったと本人が言っていたそうだが、燃圧低下がギアボックスだとドライバーが感じるということなのか?

田辺氏:燃圧が低下すると(燃料がエンジンにいかなくなり)エンジンが止まり、フリクション(摩擦損失)のみになるので、そういう形になる。現状われわれがつかんでいる事実としては、燃圧低下でエンジンが止まったということだ。ではそれが理由でギアボックスがダメージを受けていないかは、詳細に確認してみないと分からない。

――総合力を問われるバルセロナで強み弱みは見えてくると前回のレース終わりでおっしゃっていたが、今回のレースを終えて見えてきたか?

田辺氏:強み弱みの両方に関して、いろいろと理解は進んだと思う。しっかりデータを見直して、セクター別のデータやストレートスピード、タイヤのデグラデーション(劣化)などを見直していく。どのレースでもやっていることだが、(ここのサーキットのデータは)ベンチマークとして使えるので、貴重なデータを得られたと考えている。

これまでのサーキットの低速コーナーなどで得られた知見をPUのセッティングに盛り込み、次戦モナコGPで勝利を目指す

レース終盤に2回目のタイヤ交換を行なったメルセデスのルイス・ハミルトン選手(33号車 メルセデス)にオーバーテイクされるフェルスタッペン選手 ⒸGetty Images / Red Bull Content Pool

――クリスチャン・ホーナー氏(レッドブル チーム代表)や、トト・ウォルフ氏(メルセデスF1 チーム代表)も言っていたが、これまでレースでは予選がレッドブル、決勝はメルセデスという傾向があると思われるが、パワーユニットがその傾向に影響を及ぼしていることはあるのか?

田辺氏:基本的なパワーユニットの使い方から言えば、2020年に出されたTD37(テクニカルデルゲート37)により予選と決勝で同じモードを使いなさいという形になっており、メリハリはつけられないという形になっている。電気的なところを含めて厳しいのでパワーユニットがそれに大きく影響している部分はないと思う。

――今後その電気系の使い方など、TD37に合わせて予選決勝モードの選び方など他に手だてはありそうか?

田辺氏:ないと思う(苦笑)。ないというと怒られてしまうので、頑張ります。パワーユニットで何ができるのかはこれから考える。今はそれが何かは言わないが、できることをやっていく。

――やれることはまだあるのか?

田辺氏:先ほども述べたとおり、サーキットの特性によってもできること、できないことは変わってくるし、パワーユニットの取り分も変わってくる。そのため、昔のように“パワーユニット側でなんとかひねり出してよ”ということを今はできないのは事実だ。

――金曜日のフリー走行で、角田選手のパワーユニットがカットオフになったシーンがあったが、それと今日のトラブルの関係は?

田辺氏:今のところはなさそうだと判断している。これから詳細は調査する。

――バーレーンのテストでも燃料系のトラブルがあったが、あの時のトラブルと今回のトラブルは違うのか?

田辺氏:燃圧が落ちたという話では同一なのだが、生じている事象は全然違う。

――今回のレースはレース中の回生負けという雰囲気はあるか?

田辺氏:これから見てみると、デブリーフ(レース後のチーム、パワーユニットサプライヤー、ドライバーで行なうレース中の出来事に関する報告会のこと)でもそうした話はドライバーからは出ていない。いい感じで使えていたと思う。

――次のモナコGPに向けて、これまでとは特性の違うサーキットになる。また、ホンダにとっては1992年のアイルトン・セナ選手が優勝して以来のモナコGP優勝を目指すレースになるが……。

田辺氏:次のモナコはおっしゃる通りかなり特性が違うので、チームは低速コーナーに対する今までの、今年のクルマの知見を全て注ぎ込み、われわれも低速サーキット回転であったりとか、デプロイであったりとか、そういうのを含めてパワーユニットの使い方、具体的にはICEの使い方やERS(エネルギー回生システム)系の使い方に関して、頭をひねって準備していく。

 気持ち的にはいいポジションでここまで来ているので、今度も勝つぞという気持ちで向かうが、やはり実際に行ってみないと分からない部分もあるので、それに向けて十分に準備していきたい。

予選から順位を上げてポイントを持ち帰ったピエール・ガスリー選手(10号車 アルファタウリ・ホンダ)ⒸGetty Images / Red Bull Content Pool