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愛知製鋼、2030年ビジョン実現に向けた中期経営計画説明会 2030年時点でのグループ連結営業利益200億円以上を目指す
2021年5月10日 16:56
- 2021年5月10日 実施
CASEの進展やDXなどが盛り込まれた中期経営計画
愛知製鋼は5月10日、2021年度~2023年度までを対象とした「愛知製鋼グループ 2021~23年度 中期経営計画」を策定し、そのオンライン発表会を実施した。登壇したのは、代表取締役社長の藤岡高広氏、経営役員 開発本部長 野村一衛氏、経営役員 企画創生本部 本部長 石井直生氏の3名。冒頭で藤岡社長は「今日は2021年~2023年の中期経営計画にかける私の想いを直接のお伝えしたい」とあいさつ。
今回の説明の中心となったのは2020年8月に策定した「愛知製鋼グループ2030年ビジョン」のスタートにあたる2021年から3年間の重点課題とその実行計画をまとめたもので、2050年カーボンニュートラルの実現やCASEの進展、新型コロナウイルス対策、DX(デジタルトランスフォーメーション)に代表されるデジタル技術の導入、グローバル競争の激化など、厳しい環境変化を踏まえたうえでの生き残りをかけた具体的な取り組みが盛り込まれた。
また、新型コロナウイルス感染症の対応として、過去のトラブルから学んだ全員参加で問題を解決するという活動を即決即断のマネジメントに生かし、サポートセンターや対策本部の立ち上げ、テレワークの拡充、資金調達など、安全と健康を最優先した企業経営を実現するとともに、5つの行動指針を盛り込んだ「新ビジネス様式」の作成を紹介した。
3つの経営指針を策定し、激変する経営環境に対応
2020年度の売上高は目標の2500億円に対して2049億円、営業利益は同200億円に対して35億円、営業利益率は同8.0%に対して1.7%と、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり大幅未達であったと報告した。また、今後は新型コロナウイルスに対して新しい衛生基準や新しいビジネス様式を構築し、DXによる経営高度化、CASEの進展、また中国の鉄鋼メーカーの強大化など、激変する経営環境にも迅速かつ柔軟に対応していくとした。
今回発表した中期経営計画では、2030年ビジョンの実現に向けて「持続可能な地球環境への貢献」「事業の変革で豊かな社会を創造」「従業員の幸せと会社の発展」と、3つの経営指針を策定。収益目標としては2023年のグループ連結営業利益150億円とし、さらに鋼材と鍛造の分野では収益を維持しつつ、ステンレスとスマート(次世代事業)分野に関しては拡大させていき、2030年にはグループ連結営業利益200億円以上を目指すと発表。
中でも政府が掲げる「2050年カーボンニュートラル」は、電力多消費産業であるため愛知製鋼にとっては生産継続の危機になりかねないとしつつも、工程や技術革新で鋼材の製造プロセスを改革し、消費エネルギーを削減させる「Reduce(減らす)」、電気炉排熱を蒸気エネルギーへと変換したり、開発蓄熱材を活用して排熱を必要なときに必要な場所で利用するといった「Reuse・Recycle(再利用)」、関工場への太陽光発電の導入の検討開始など、LCA(ライフサイクルアセスメント)視点の再生可能エネルギーの活用や促進といった「Renewable(再生可能)」と、4つの「R」を視点に技術開発や新市場開拓を通じて果敢に挑戦するという。
また、今後は素材を提供するだけでなく、商品の付加価値向上させるために機械加工分野への領域拡大も行ない、工程の集約と廃止で競争力のある完成部品メーカーへの進化を目指しながら、EV(電気自動車)や燃料電池車など次世代モビリティへの対応にも力を入れていくとした。特にインバータの冷却に使用するパワーカード用部品に関しては、トヨタ自動車へ収めていることもあり、今後も技術開発や供給体制構築を加速させ、増える需要に対応できるようにするとした。さらにLiDARの電波が届きにくい場所でも性能を発揮するGMPS(高感度磁気センサ)の早期事業化を目指し、安全・安心な自動運転にも貢献することを目標に掲げている。
その他にも、愛知製鋼が出資しているインドの特殊鋼メーカーバルドマンの品質向上の図り、インドおよびアセアンでの事業拡大と日本国内の供給量の上方弾力性の確保も急ぐとした。さらに新分野として、アルカリ性の土壌にまくことで緑地化を実現する肥料「新鉄供給材(PDMA)」の工業スケールでの製造法の確立や、かんきつ系植物におこるCG病を抑制する「鉄力あくあ」のグローバル販売網の構築なども紹介した。
DX分野については藤岡社長が自らリーダーとなり、全社横断組織を立ち上げ「モノづくり改革」「デジタルソリューション」「グループITガバナンス」「働き方改革」「スマートファクトリー」の5つのテーマでの取り組みを開始。すでに経済産業省が定める「DX認定事業者」にも認定され、デジタル技術を活用した事業改革でも2030年ビジョンの実現を目指すとした。最後に「多様な人材の活躍促進や従業員の満足度向上も目標に掲げ、従業員と会社が一体となって厳しい経営環境を乗り越える中期経営計画だ」と締めくくった。