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ロールス・ロイス、「ボートテイル」公開 コーチビルド制度を本格導入
2021年5月27日 21:00
- 2021年5月27日(現地時間) 発表
3名の特別なユーザーと4年間の歳月をかけて製作
ロールス・ロイス・モーター・カーズは5月27日(現地時間)、「ロールス・ロイス ボートテイル(Boat Tail)」を公開した。
同社は2020年8月、ユーザーの平均年齢が43歳と若年化している現状に対応するべく、単なる自動車メーカーにとどまらない、ラグジュアリーな世界をリードするブランドになるという新ブランドアイデンティティを発表。これに伴い、「ROLLS-ROYCE」の2つのRを大きくし、「MOTOR CARS」を小さく扱うという新しいブランドロゴを発表するとともに、スピリット・オブ・エクスタシーの平面デザインなども新しくされた。
この発表の中で、近年ロールス・ロイスの生産拠点「グローバル・センター・オブ・ラグジュアリー・マニュファクチャリング・エクセレンス」では、ほぼ全てのモデルがユーザーのライフスタイルに合わせてカスタマイズを行なっていることが報告されている。
そして今回のボートテイル発表に際しては、世界に1台しかないクルマを製作するコーチビルド制度(部署)を本格的に導入することをアナウンス。オーナー主導の特注プログラムに基づき、ロールス・ロイスとオーナーが協力して意味あるラグジュアリー、意味あるデザイン、意味あるカルチャーを探求していくという。
今回発表されたボートテイルも3名の特別なユーザーと4年間の歳月をかけて製作されたモデルとなっており、“自動車とは何か”という概念に挑戦し、単なる移動手段を超える存在を目指したという。車両を開発するにあたっては、3名のオーナーがJ-Classヨットへの造詣が深いことからそこにインスピレーションを受けたものになる。そこでロールス・ロイスからはシャシー(車台)にコーチビルダーの手で帆船の船体の造形を移植する「ボート・テール・タイポロジー(類型論)」を現代の手法で表現するという提案が行なわれ、3名のオーナーからは賛成の声とともに「今まで見たことのないものを作ってほしい」とのリクエストがされたという。
デザインについては、あらかじめ手書きでデザイン案を描いたのちに実物大のクレイモデルを製作。このクレイモデルをデジタルでリマスターし、そこから雄型を作り、その上にアルミ板を載せ、ハンマーを使って手作業で成形。そして人の手による技術や工芸の技法を駆使しながら、アルミニウムのボディに磨きをかけ、調整を繰り返していくというヨットの建造と同種の技法が用いられた。
ボートテイルの全長は約5.9mで、優雅でリラックスしたスタンスを表現。フロントまわりではロールス・ロイス車に不可欠なパンテオングリルを用いるとともに、全体的に水平基調のデザインにまとめられた。また、ボディカラーには海を想起させるブルーを用い、ホイールの加飾や内装色もブルーを基調に仕上げられ、ボンネットはロールス・ロイス初となる手描きのグラデーション仕様を採用。さらに緩やかに後方に向けて傾斜するAピラーをはじめ、モーターボートを想起させるリアに向けて細くなっていくテーパード形状のデザイン、木製でできたモーターボートでいうところのアフトデッキ(後部)なども特徴となっている。
このアフトデッキの木目は車両の形状に合わせて線状に仕上げられており、これはボタンを押すとデッキが蝶のようなジェスチャーで開くというもので、そこにはオーナーお気に入りのアルマン・ド・ブリニャックのヴィンテージシャンパンを入れるための二重の冷蔵庫、グラスなどの収納ケースが納められる「ホスティング・スイート」を設定。さらにカクテルテーブルやイタリアの家具メーカーPromemoria(プロメモリア)製の2つのスツールとともに、現代のロールス・ロイスでは悪天候を想定して傘をドアに収納するのが定番のデザインエレメントになっているが、ボートテイルののんびりとした時間を演出するために晴天時に使えるパラソルが収納される。
なお、ボートテイルの後部に搭載されたホスティング・スイートの複雑な要件をサポートするため、車体後部だけで5基の電子制御式コントロール・ユニット(ECU)を製作。これには完全に再設計した専用ワイヤー・ハーネスが必要で、そのために9か月間におよぶ研究・開発を実施。その結果、リアデッキのリッドは正しく67度の角度に開き、安全性の高いロック機構が備わり、さらにさまざまな料理を保存しておくための総合的な空調システムを備えることが可能になったという。
また、ホスティング・スイート内の温度管理には気を使ったといい、食べ物や飲み物、シャンパンなどに悪影響を及ぼさないように2つのファンを下部に取り付けるなどの対策を講じた。どのような気候でもホスティング・スイートが問題なく使用できることを確認するため、-20℃~80℃の厳しい環境下でテストを実施し、その結果は確認済みとのこと。