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ホンダ、Nシリーズ10周年記念イベント「Nのある豊かな生活と10年」レポート 佐藤可士和氏らが登壇

2021年12月16日 実施

Nシリーズ10周年記念イベント「Nのある豊かな生活と10年」では、佐藤可士和氏、山川咲氏、渋谷恭子氏の3人が登壇した

軽自動車の新シリーズの名称に「N360」に使われていた「N」を提案

 本田技研工業は1948年の創業以来「技術は人のために」という考えを基本に、技術やアイデアなどで社会課題の解決や、よりよい社会の創造を目指してきた。そのホンダがコーポレートメッセージとして用いているのが「Hondaハート」。これは人々の生活を豊かにしたい、人を幸せにしたいといった想いを「きょう、だれかを、うれしくできた?」という言葉にて伝えようとするもので、この想いは誕生10周年を迎えたNシリーズにも活かされている。

 そんなことからN-BOXのマイナーチェンジおよび新シリーズ「STYLE+」の発表会の終了後、同会場にてNシリーズ10周年記念イベント「Nのある豊かな生活と10年」が開催された。登壇者は以下の3名。初期からNシリーズのブランディングを担当しているクリエイティブディレクターの佐藤可士和氏。完全オーダーメイドの結婚式を企画し、取りまとめる「CRAZY WEDDING」を立ち上げた起業家の山川咲氏。そして、本田技研工業 デザインセンターからは、N-BOXのインテリアデザインなどを担当した渋谷恭子氏。

Hondaハートの精神に基づいて誕生したのがNシリーズ。12月16日で10周年を迎えたNシリーズにちなんだ話題で構成されるトークイベントが開催された
クリエイティブディレクターの佐藤可士和氏
「CRAZY WEDDING」創業者。起業家の山川咲氏
本田技研工業デザインセンターの渋谷恭子氏

 イベントは佐藤氏の発言からスタート。佐藤氏によると「Nシリーズが立ち上がる前のホンダは、どちらかというと軽自動車の販売において、他のメーカーから引き離されていた」と言う。しかし、ホンダは今後の社会の中で軽自動車はすごく必要とされるものであると考えていたので、とても力を入れて新たなシリーズを企画。そうした状況の下、ブランドイメージを作りあげることを依頼されたことがNシリーズに関わるキッカケだったと振り返った。

 佐藤氏が最初に手掛けたのが、クルマの名前をどうするかということ。それまでのホンダの軽自動車にはクルマごとに名前が付けられていたが、これをシリーズ化するほうがいいのではないかと提案。そしてシリーズの名前として「N」を挙げた。

 この「N」というのは、ホンダの創業者である本田宗一郎さんが手掛けた「N360」に使われた記号なので、ホンダにとって特別であることは承知していたが、ホンダとしても“軽自動車のラインアップを刷新する”ということを超えた大きな取り組みであれば「N」を使うことはふさわしいと判断し、当時ホンダもその考えに同意したと明かされた。

 そして、この動きに対してのホンダ社内は活気づいたという。そのときの状況はデザインセンターの渋谷氏から、初代のNシリーズの宣伝で使用された「Hallo,Small、World!」というキャッチフレーズがとても印象的で、「新しい時代が始まる」と感じていたことやホンダ社内でも当時のNシリーズに関わるチームは、とても注目を浴びる存在だったことが語られた。

ホンダにとって特別な記号であった「N」を使うことを提案した際はホンダに大きな戸惑いを感じたという。しかし、プロジェクトの大きさにあう記号として採用された
その当時を知る渋谷氏からは、Nシリーズが立ち上がったあと、社内が活気付いたという思い出が語られた

 山川氏はNシリーズについては、テレビCMなどで存在を知っていたが詳しいことは知らなかったと明かす。そこに今回のイベントの誘いが来た訳だが、印象的だったのがホンダ側からのNシリーズの説明という。山川氏の言葉では「CMやWebサイトから商品に対する熱を感じることはよくあるが、人から熱や想いを感じることは、実はあまりなかったので、ホンダが大切にしているものに興味を持ち“ひっそり”感動した」と、今回の企画への参加動機を語った。

山川氏はNシリーズの説明をするホンダの担当者からほかのモノ、コトからは感じないような熱い想いを感じたという

登壇者は第2世代のNをどうみる?

 続いて第2世代のNシリーズの話題に。第2世代には「N for LIFE」というキャッチコピーが使われているが、これも佐藤氏の手によるものなので、まずはネーミングについての話を佐藤氏が語った。

 初代のNシリーズは“チャレンジャー”という立場でスタートしているが、スタート後は日本でいちばん売れたクルマになるくらい順調なものになった。そうした実績から佐藤氏は、軽自動車というカテゴリーを牽引するブランドして「新しいことを社会に提示していく使命があるのではないか?」と、そんな考えをもったという。

 また、N-BOXを発売するホンダは1948年の創業以来「技術は人のために」という考え方を続け、技術やアイデアで社会の課題の解決や、よりよい社会の創造を目指す企業であり、Nシリーズの原型であるN360も「人々の生活を豊かにする」ことを掲げた存在であった。そこでN-BOXの実績だけでなくホンダの姿勢、歴史を含めて「N for LIFE」と付けたということだった。

もともとNシリーズは人の生活を豊かにする」という目的を持ってを開発した車種だったので、第2世代のキャッチフレーズは、その想いをユーザーとのコミュニケーション上でも使ったとものだという
渋谷氏はクルマを作るというよりユーザーの暮らしを作り替えること意識してデザインを行なっていると解説
いろいろなシーンを想定して、その場でどんな気持ちになって欲しいかを重要な部分と捉えていたという。こうした取り組みでN-VANに乗る人のふだんの暮らしに気持ちの豊かさをもたらすことを行なった
これは第2世代のN-BOXの資料。日々忙しいママにハッピーな気持ちになれる心地いい空間を提供することを考えてカラーデザインをしたとのこと

 話題が「気持ちの豊かさ」ということなったところで山川氏がマイクを取った。山川氏はアナウンサーだった父親の方針で、幼少期はワゴン車で日本を旅しながら暮らしていた経歴を持つ。

 本当に幼い頃だったので、その暮らしがどんなものか明確に覚えていないと前置きしつつ、自分が住みたいところを探して移動を続ける父親からは「みんながいいと思うこと」ではなくて「自分はなにがいいと思うのか」という部分が象徴としてずっと頭に残り、そうした部分は現在の自分に大きな影響を与えていて、それが自分にとっての気持ちの豊かさを作っているのではないかと語った。

山川氏は「みんながいいと思うこと」ではなくて「自分はなにがいい」と思うことを大事にしているという

ライフスタイルの変化におけるクルマのあり方に答える

時代に対する感度が高い登壇者のトークだけに会場は話にどんどんひきこまれてった

 いまの時代はさまざまなモノが便利になり、クルマも進化している。それに伴い人々の価値感も以前とは違ってきているがその点に対して登壇者がコメントをした。

 佐藤氏は価値感の変化について「以前は大きな流れのなかにあったというか、大勢が同じものを好きになっていたこともあったが、現在はパーソナライズされてきていて“自分はどう思うのか”を考える人が増えている」という。続けて「そういうライフスタイルをしている人が増えているから“コンパクトである”“自分専用”というような軽自動車が注目されているのではないか」と語る。軽自動車はクルマなのだけど、スマホなど自分の一部といったモノと同じような存在になっているという。

いまは個人ごとの考えが大事に思われる時代なので、軽自動車もそういったことから新しいユーザーに選ばれているようだというコメントもあった

 山川氏はユーザーとしての目線でライフスタイルについて答えた。山川氏もクルマに乗るが、以前は高級車や輸入車は未だにステータスであることは価値感の流れにあることは承知していて、自身もクルマを購入するときは同様の価値感を持っていたと語る。

 しかし、最近、趣味として楽しんでいるキャンプへ行ったとき、同じキャンプ場に軽自動車の乗ってきてきた人がいたという。そしてその方の「ほかがどう思っていても関係なくて自分はこれがカッコいいと思っている」という姿勢に共感、とてもカッコいいと感じ、こういったことが「いまの時代のカッコよさなんだな」と気がついたという。

 これまでは視覚的なもので「自分のほうがいい」みたいなことをお互いやり合っていた気がするが、いまは視覚的とかそういうものでなくて「自分はこれがいい」をどう育てていけるかが大事で、それをやっていくことが幸せなのではないかと考えているとことだった。

持ち物が立派であることより「自分はこれがいい」と想う気持ちをどう育てていけるかが、いまは大事と捉えているという
N-ONEのルーフテントを付けてキャンプを楽しむユーザーの話を元に会場に再現したN-ONE。デザインセンターの渋谷氏はN-BOXに乗っていて、車中泊を楽しんでいるそうで、こうしたい小さいクルマに手を入れて自分仕様に仕立てていく気持ちはよく分かると語った

 こうして、N-BOXのマイナーチェンジ発表会に合わせて開催されたNシリーズ10周年記念イベント「Nのある豊かな生活と10年」は幕を閉じた。

 N-BOXをはじめとするNシリーズは、クルマとしての完成度がとても高い。それだけにNシリーズに魅力を感じる人は多いと思うが、これまで軽自動車に乗ったことがない人にとってはパッと乗り換えをしにくい部分もあると思う。しかし、登壇者の話にあったようにNシリーズは生い立ち、作り、存在感などに特別さを持った軽自動車であるので、自身の「生活を変えてみたい、いま以上に気持ちの豊かさを求めてみたい」と想う気持ちがあれば、Nシリーズのラインアップをもう一度チェックしてみてはいかがだろう。