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OMNIVISION、ドライバーモニタリング向け車載イメージセンサー「OX05B1S」など3製品を発表 車載向けで2022年にシェア1位へ

2022年1月21日 開催

OMNIVISIONの新しいロゴ

 イメージセンサーのリーディングベンダーとして知られるOMNIVISION(オムニビジョン)の日本支社は1月21日にオンラインで記者会見を開催し、同社がCES 2022のタイミングで発表した車載向け、スマートフォン向け、PC向けのイメージセンサーに関する説明を行なった。

 この会見の冒頭でOMNIVISION Technologies 日本支社長 薄井明英氏は「1995年の会社設立から26年が過ぎ、現在はイメージセンサー、アナログ半導体、TDDIなどの3つのビジネスを軸に展開しているが、今後は製品ポートフォリオを拡充していく計画で、そうした新しい展開に備える意味でも新しいブランドロゴを策定した」と述べ、ブランドロゴを一新し、同時にブランドや社名の表記も従来の「OmniVision Technologies」からすべて大文字の「OMNIVISION」に統一していくことなどを明らかにした(ただし、登記上の社名はOMNIVISION Technologiesとなっているが、肩書などを除き以下社名もブランドもOMNIVISIONに統一する)。

OMNIVISION Technologies 日本支社長 薄井明英氏

 同社は車載カメラ、スマートフォン、PCなどに搭載されているカメラ向けのイメージセンサーを製造、販売する半導体メーカー。イメージセンサーは、それらのデバイスに搭載されているレンズで捉えた映像や静止画を、アナログからデジタルに変換する役目を持つ半導体で、その性能が画質などに大きな影響を与えるため、自動車、スマートフォン、PCなどのカメラをより高品質にしていく上で重要な意味を持つ半導体になっている。

新しいOMNIVISION

 例えば、車載向けのカメラでは、ADASやレベル3以上の自動運転などで、前方や車両周辺360度を車載コンピューターが理解するために、カメラが撮影した映像を画像認識という手法を利用してリアルタイムに把握する手法が一般的になっているのはよく知られているだろう。その時に画像認識の精度は、カメラが撮影する動画の品質に依存することになる。

 やや古めのドライブレコーダーを使っているユーザーには経験があると思うが、トンネルから抜けて明るいところに移り変わる瞬間の映像が真っ白になって映っていなかったという場合には、HDR(High Dynamic Range)というより幅広い色域に対応しているイメージセンサーが採用されていないと、明るい色と暗い色を同時に追いかけることができないため、そうなってしまうのだ。ドライブレコーダーなら映像が撮れていないだけで笑って終わりかもしれないが、それが自動運転車の目になるADASや自動運転ユニットのカメラであれば、目を閉じて運転しているのと同じような状況になってしまうのだから、決して見えませんでしたでは済まされない。そうしたさまざまなシーンに対応できる、より高品質なイメージセンサーを自動車メーカーは必要としている。それが現在の市場環境となる。

イメージセンサーで競合他社を抜いて市場シェア1位になる見通しだとOMNIVISION

OMNIVISIONの沿革

 薄井氏によれば、OMNIVISIONはそうした自動車向けのイメージセンサーを2008年から提供を開始しており、同社によれば2021年の車載向けイメージセンサー市場では市場シェア第2位になるほどのビジネスになっているとのこと。そして、2022年にはそれが市場シェア1位になる見通しだという。

 まだ始まったばかりの2022年で1位になる見通しというのも不思議な感じだが、薄井氏によれば「予想される自動車向けのイメージセンサーの市場規模、およびすでにお客さまに弊社が出荷する予定の数などを勘案すると市場シェア1位になる見通しだ」とのことで、車載向けでは従来はオンセミ(onsemi)が1位だと考えられてきたが、その順位が逆転する可能性が高いとOMNIVISIONは推定しているということだった。

イメージセンサー市場でのアプリケーション別の市場シェア、2022年に車載向けで1位になる見通しとOMNIVISIONは説明

 なお、他の機器向けでもOMNIVISIONは多くのシェアを持っており、メディカル、PC(ノートPCの上部につけられているWebカメラなど)、セキュリティー、VR/ARなどの市場でいずれも市場シェア1位で、スマートフォン向けでは3位だと薄井氏は説明した。

基礎技術を開発し、それを横展開

 薄井氏によればOMNIVISIONの強みは「例えばHDRの基礎技術を開発し、それを車載向けにまず投入し、その後医療、PC、セキュリティーなどと展開してきた」との通りで、イメージセンサーの基礎技術を多く持っており、それによりさまざまなアプリケーションに横展開できることだと強調した。

 薄井氏によればOMNIVISIONはグローバルに複数の開発拠点を持っているほか、日本ではイメージセンサー向けには横浜と京都の2か所に研究開発拠点を持っており、「今年は国内の研究開発拠点を拡充していく計画だ。例えば新横浜にあるオフィスは1フロア拡充する計画で、人員などの拡充も行なう計画だ」と述べ、日本にある研究開発施設の拡充も行ない、日本の自動車メーカーが必要とするような自動車向けのイメージセンサーの開発などを行なっていく意向を示した。

グローバルな拠点
日本での開発拠点

 また、OMNIVISIONはイメージセンサーを提供する企業として成り立ってきたが、近年はアナログ半導体の提供にも力を入れており、国内にはアナログ向けの開発拠点として仙台、熊谷、高崎などが用意され、こちらも日本の自動車メーカーのニーズを探りながら研究開発を続けているという。

主要な製品カテゴリーのパフォーマンス

 また、2020年(発表自体は2019年)にSynapticsのモバイル機器向けTDDI(Touch Display Driver Integration、タッチディスプレー向けの統合コントローラIC)事業を買収して得たTDDI部門も、すでに同社の事業部として稼働しており、今後OMNIVISIONの3つの柱(イメージセンサー、アナログ、TDDI)の1つとしていくと説明した。

車載向けに3つの新製品を発表。車内モニタリング用、サラウンドビュー/ミラー向け最小サイズ、Xilinxとの提携による前方用

OMNIVISION Technologies シニアマーケティングマネージャ 車載製品担当 ケルビン・チャン氏

 OMNIVISION Technologies シニアマーケティングマネージャ 車載製品担当 ケルビン・チャン氏は、同社がCESなどで発表した車載製品3製品を説明した。チャン氏によれば、新製品は車内モニタリング用の「OX05B1S」、サラウンドビュー/リアカメラ/ミラー用の「OX03D4C」、そしてFPGAメーカーのXilinx、Motovisと共同でプラットホームとして提供される業界初の「800万画素 LFMイメージセンサー」の3製品となる。

OX05B1S

 OX05B1SはDMS(ドライバーモニタリング)向けとしては初めて、500万画素RGB-IRグローバルシャッターセンサーを備えたイメージセンサーになるという。チャン氏によれば「業界最小の2.2ミクロンピクセルを実現し、最高の感度となる940nmNIRを実現している。この感度は他社製品に比べて3倍になっており、LEDの電力を3分の1にすることができ、それによりイメージセンサー全体の消費電力を3分の1にすることができる。また、RGBとIRのカメラは1つで実現することが可能で、スペースも最小化することができる」と述べ、レベル2+のADASや、レベル3以上の自動運転などで必要となることで注目が集まっているドライバーモニタリング向けのイメージセンサーとしては、最小で、かつ低消費電力なセンサーになるとアピールした。

OX03D4C

 OX03D4Cはサラウンドビュー、リアビュー、カメラ機能統合型ミラーなどに向けたイメージセンサーで、300万画素のSoCセンサーとして業界初の製品であるだけでなく、最小電力、最上サイズを実現しているという。最小2.1ミクロンピクセル、1/4インチ光学サイズで、140db HDRに対応したISP(イメージシグナルプロセッサ)を搭載している。次世代のトーンマッピングとLEDフリッカー削減機能も搭載されている。

Xilinx、Motovisと協業製品

 そして3つめの製品はXilinx(ザイリンクス)、Motovisと協業でプラットホームとして提供される800万画素 LFMイメージセンサーだ。LFMとはLED Flicker Mitigationのことで、LEDフリッカー(LED信号の点滅など)を防ぐ機能を持ったイメージセンサーとなる。XilinxのMPSoCとMotovisの技術を利用することで、より広い視野角を実現し、800万画素という高画素数であってもLEDフリッカー防止やHDRの機能を提供することを可能にする。アプリケーションとしてはADASや自動運転の前方カメラなどが想定されている。

 チャン氏によれば、いずれの製品もサンプル提供が開始されており、2023年に実際の製品として採用される可能性があるとのことだった。

スマートフォン向け2億画素イメージセンサー、PC向けの狭額縁でもFHDカメラを実現できるイメージセンサーも提供される

OMNIVISION Technologies シニアマーケティングマネージャ コンシューマおよびインダストリアル製品担当 木村英樹氏

 OMNIVISION Technologies シニアマーケティングマネージャ コンシューマおよびインダストリアル製品担当 木村英樹氏は車載製品以外の製品に関して説明を行なった。

OVB0B

 OVB0Bはスマートフォン向けとしては世界初の2億画素の解像度を実現したイメージセンサーで、世界最小の0.61μm画素になっているという。カメラプレビューやビデオ画質を引き上げるために16セルのカラーフィルターアレイを搭載しており、オートフォーカス性能を引き上げるために100%クアッド位相差検出機能を搭載している。木村氏によればすでにサンプル出荷を開始しており、2022年の後半に実際の製品に搭載されて市場投入される見通しだ。

OV02C

 PC用のOV02Cは、1/7インチサイズとしては初めてFHDビデオを撮影可能な200万画素のイメージセンサーとなっている。非常に小型になっており、狭額縁と呼ばれる周辺部が5mm以下と極端に薄いディスプレーでも、FHDの解像度を実現することができるようになる。DellのLattitudeシリーズやXPSシリーズなどの現行製品では、2~3mmという非常に小型のカメラユニットが採用されているのだが、そうしたカメラではイメージセンサーのサイズの問題で720p(1280x720ドット)/30fpsという、やや解像度が低い映像しかキャプチャーすることができず、狭額縁ではない製品で採用されているFHD(1920x1080ドット)/30fpsのカメラと比較すると画質の点で劣っていることは否定できなかった。

 しかし、OMNIVISIONによれば、次世代のLattitudeシリーズで採用が予定されているこのカメラを利用すると、そうした狭額縁のディスプレーでもFHDの動画を撮影するカメラを実現することが可能になる。また、木村氏によればOV02CはモノクロとRGBの2つのレンズを同時にサポートできるので、Windows PCで顔認証に利用するWindows HelloのIRカメラと、ビデオ会議で活用するRGBカメラの2つのレンズを装着することが可能になり、顔認証機能を実現しながらRGBカメラの品質を上げることが可能になる。

 木村氏によれば「Latitude 5000、7000、9000に搭載される計画」とのことなので、今後Dellからの発表を待ちたいところだ。

スマートフォン用のTDDI製品
AR/VR向け製品
医療向け製品