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300億円をかけた「ブリヂストン イノベーション パーク」が目指す「共創ビジネス」とは
2022年4月22日 09:42
- 2022年4月21日 実施
新たなイノベーションを生み出すために作られた複合施設
ブリヂストンは4月21日、新たな社会価値と顧客価値を生み出していくための複合エリア「Bridgestone Innovation Park(ブリヂストン イノベーション パーク)」が本格稼働するにあたり、メディア向けの発表会と内覧会を実施した。
冒頭で代表執行役グローバルCOOの東正浩氏は、「ブリヂストンは皆さんと“共創したい価値”というのを提唱しているが、その価値をどこでどう作っていくのか? 今日はそれを具現化したものを皆さんに共有させていただきます。とても長い年月をかけて構想を温め、この日を迎えることができました。このブリヂストン イノベーション パークに込めた私どもの想いをしっかりとお伝えしたい」と語った。
続いて施設全体の説明を行なったのは、執行役 専務 技術・品質経営分掌・グローバルCTOの坂野真人氏。まずは動画を用いてブリヂストンの90年の流れを紹介。福岡県久留米市で“最高の品質で社会に貢献”という今も続いている社是を掲げて、ブリッヂストンタイヤ(※当時の正式名称)が創立した1931年を「Bridgestone 1.0」と定義。そしてアメリカのタイヤメーカー“ファイアストン”を買収し、会社のグローバル化が飛躍した1988年を第2の創業とし「Bridgestone 2.0」と定義。その後、インディ500やF1GP、MOTO GP(バイクレース)とモータースポーツにも積極的に参戦しながら、社会貢献や困りごとの解決などソリューション事業にも進出。そして2050年のサステナブルに向けて舵を切った2020年を第3の創業となる「Bridgestone 3.0」と定義するなど、これまでの成長ストーリーの過程に3度のターニングポイントがあったことが映しだされた。
坂野氏は、1962年に誕生し、半世紀以上にわたり工場と研究所が向かい合い、協力してすぐれた商品を生み出し、日本のモータリゼーションを支えてきたこの場所(東京都小平市)で、サステナブルなソリューションカンパニーへの変革を加速させるために再開発を実施していると説明。そして、2020年にオープンした「ブリヂストン イノベーション ギャラリー」に続き、この日「B-イノベーション」「B-モビリティ」が新たに開設され、この3つを総合したものが「ブリヂストン イノベーション パーク」となると解説した。
イノベーション ギャラリーは、ブリヂストンのこれまでの歩みやDNA、ビジョン、事業活動、さらに未来に向けた活動を紹介し、さまざまなパートナーとの共感を生み出す場。次のステップは今回新たに開設されたB-イノベーションで、実際にブリヂストンのコア技術や商品を見て、共に議論し、アイデアを膨らませ、デジタルを組み合わせた設備を最大活用して、共に研究開発を行ない、アイデアを形にするための施設という。
そして、B-イノベーションのすぐ隣に設けられたBモビリティは、開発した技術や商品のプロトタイプを実車を使ってすぐに体感検証できるテストコースで、B-イノベーションで生み出したアイデアをすぐ形にして、すぐに試す。これを繰り返すことで、これまでよりさらにスピードと柔軟性を持った開発が可能になるという。
ブリヂストン イノベーション パークは、これらを通じてさまざまなパートナーと新たな価値を創造し、ビジネスにつなげていく共創の場になると坂野氏は宣言した。
また、今回のブリヂストン イノベーション パークの本格稼働では、デジタル技術(DX)も大幅に強化。スーパーコンピュータを活用して、欧州や米国と連携しながら共創を加速。研究内容が重複しないように役割を分担しながら、効率も高めていくという。そのほかにも、「従業員1人ひとりの成長と幸せ」と「ブリヂストンの成長」の両立を目指し、より一層自主性を尊重できる組織風土の変革にも取り組むとしている。
坂野氏は300億円を投資したブリヂストン イノベーション パークについて、「新型コロナウイルスの影響で世の中の景気が大きく落ち込む中で、この施設を建てることはどうなんだという社内議論もありましたが、やはり100年に1度のモビリティの大変革期において、これを無理してでもやっておかないと、変革期が終わってから始めるんじゃ遅い。ここで遅れてしまったら、社会の流れに追いつくことはできないという危機感があった。今変わらなければ将来はないという思いで断行した」と意気込みを語った。また、「イノベーションを促進させるためには、ハード(働く場)とソフト(働き方・意識)を一体化させた変革が必要だ」と説き、今回本格稼働させたブリヂストン イノベーション パークがハードになるが、すでに数年前から従業員のソフトの改革は行なってきていて、その1つの例としてゴムの技術を応用して開発した「ラバーアクチュエーター」を活用したロボットアームを紹介した。
タイヤメーカーとして「ゴムの匠」を極め続けることは大前提としつつ、その匠の技を異業種と融合させ、活用していくための場がこのブリヂストン イノベーション パークの存在意義であり、タイヤ以外にも衝撃吸収、吸音、滑り止めなど、ゴムの用途は多岐にわたるため、坂野氏は「ぜひ、このブリヂストン イノベーション パークの存在を知っていただき、これまでにないさまざまな業種と新たな取り組みに一緒に挑戦していきたい。もしかしたら、これはゴムを使えば解決できるんじゃないか? といったアイデアをお待ちしています」と締めくくった。
「共感・共議・共研・共創」を生み出す流れを体感
発表会のあとは施設の内覧会となった。まずは「オープンイノベーションハブ」からスタート。エリアの入口には小さな部屋があり、まずは頭を柔らかくさせるための動画の視聴からスタート。プロジェクションマッピングも多用した動画が終わり、正面の扉をくぐると、新たな発見を生み出すためのきっかけとして、ブリヂストンのコア技術や製品を多数展示してある部屋が広がる。ここではタイヤのカットモデルや素材、月面用タイヤ、ラバーアクチュエーターなど、ブリヂストンの持つさまざまな技術を、実際に見て触ることができ、そこからアイデアを膨らませ、共議して新たな道を見つけるためのエリアという。
共創オフィスのエリアには、共同で研究(共研)を行なえるラボも配置されていて、使う実験用具はさまざまなジャンルでも対応できるように、都度入れ替えられるように配慮してあるという。ブリヂストンの想定では1か月といったスパンでの研究開発なども視野に入れていて、そのためのラボやオフィス作りを行なったという。また、オフィスは建物の中心のほうにいくほど人が集まるレイアウトにしていて、建物の外側へいくほどパーソナルな空間を取れるようにしてあるという。