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アウディ、国内初のカーボンニュートラルショールーム「アウディ浜松」初公開 長田繁喜浜松市副市長らも自治体の取り組みについてプレゼン

2023年1月27日 開催

国内初のカーボンニュートラルショールーム「アウディ浜松」を初公開

 アウディ ジャパンは1月27日、「アウディ サステナブル・フューチャー・ミーティング」と銘打ったイベントを静岡県浜松市にある正規ディーラー「アウディ浜松」で開催した。

 このイベントは2022年にスタートした「持続可能な社会の実現の重要性について、1人ひとりが考えるきっかけの場を作る」ことを目的として企画・実行する「アウディ サステナブル・フューチャー・ツアー」の一環として行なわれたもの。ツアーでは第1回目としてゼロカーボンシティの先駆けとなっている岡山県真庭市に、第2回目では日本で最初に地熱発電所を運転させたという岩手県八幡平市に訪問。そして今回のイベントは静岡県浜松市のアウディ浜松で開かれた。

 アウディ浜松が開催地となった理由は、同ディーラーが実質的にCO2排出量ゼロの電気・ガスを使用する店舗の運用を1月から開始したことにある。これによって同店舗では年間約115tのCO2の削減が可能になるとしており、CO2排出量実質ゼロの電気およびガスを使用するカーディーラーの店舗運用は国内で初めてのことだという。

アウディ浜松(静岡県浜松市東区宮竹町667)
ショールーム内にはアウディのEVが展示される
アウディ浜松の急速充電器の出力は90kWだが、2023年6月より150kWになる

 これを実現できたのには、アウディ浜松を運営するサーラカーズジャパンがエネルギー事業を展開するサーラエナジーのグループ企業であることが大きい(両社ともサーラコーポレーションの連結子会社)。アウディ浜松では、サーラエナジーが提供するPPA(Power Purchase Agreement:電力販売契約)サービス「サーラのゼロソーラーサービス」を導入して建物屋根上に太陽光パネルを設置し、発電した電力を購入・自家消費する。発電電力が不足する場合は、同じくグループのサーラe エナジーが提供する「CO2フリー電力」を購入・使用する仕組みだ。店舗の空調用(GHP:ガスエンジンヒートポンプエアコン)として使用する都市ガスについては、サーラエナジーより同社として初の供給となる「カーボンニュートラル都市ガス」を購入・使用するとのこと。

 太陽光パネルを設置したのになぜ電力を購入しなければならないのか? という点についてだが、これはPPAサービスによるもので、電力を購入する代わりにサーラカーズジャパンとしては再生可能エネルギーの発電設備を初期費用0円で導入できる仕組みとなっている。

 サーラカーズジャパンでは、今回の取り組みを通して店舗で使用するガスや電気に加え、アウディ浜松でEV(電気自動車)へ充電する電気をCO2排出量実質ゼロとすることで、サプライチェーンにおけるカーボンニュートラル化を促進していく。また、サーラカーズジャパンが展開するフォルクスワーゲン浜松西においても、「サーラのゼロソーラーサービス」「CO2フリー電力」の購入・使用によるCO2排出量実質ゼロの店舗運用を7月に開始する予定としている。

カーボンニュートラルを実現しつつ運転の楽しさを継続するにはEVしかない

アウディ ジャパン・ブランドディレクターのマティアス・シェーパース氏

 1月27日に行なわれた「アウディ サステナブル・フューチャー・ミーティング」では、アウディ ジャパン・ブランドディレクターのマティアス・シェーパース氏をはじめ、サーラコーポレーション 代表取締役社長兼グループ代表・CEOの神野吾郎氏、浜松市副市長の長田繁喜氏、浜松市 カーボンニュートラル推進事業本部 本部長の村上隆康氏、サーラカーズジャパン 代表取締役社長の坂爪謙治氏が登壇し、国内初のカーボンニュートラルショールーム&サービスセンターの実現、各自治体での取り組みなどについて説明を行なった。

 アウディとしては、2026年以降に登場する全モデルがEVになり、内燃エンジンの製造は2033年に終了することをアナウンスしている。シェーパース氏は「カーボンニュートラルを実現しつつ運転の楽しさを継続するためにはもうEVしかないと思っています。(EVなのか内燃機関車なのかという)議論は終わらせて、いかにEVを普及させていくか。それが再生エネルギー、サステナビリティへとつながっていくのです。EVと再生エネルギー、このコンビネーションが1番重要です。アウディの全てのEVはカーボンニュートラルな工場で作っています。エンジンを作っている工場も含め、このショールーム同様にカーボンニュートラルにすることを決めて実行しております」と述べるとともに、「アウディブランドとしては、再生エネルギーを中心とした急速充電ネットワークに日本でどんどん投資していくという発信をすでにしております。再生エネルギーを使ったチャージャーが普及し、それがベンチマークになるとモビリティに対する考え方の原則が変わります」とし、アウディとして単にEVをカーボンニュートラルに作って販売するのではなく、サステイナビリティに対する議論を日本で促進し、議論に参加して色々な考え方を提示していきたいとコメント。

 また、「EVは再生エネルギーと言いましたけれども、電気がないからEVを得ないという考え方は間違ってると私は思ってます。電気がないからEVを導入するのです。再生エネルギーに変えてくと初めてカーボニュートラルなカーライフが実現できる。スウェーデンやブラジル、それは比較しにくい国ですが、エネルギーの80%がすでに再生エネルギーです。日本は22%で、私の国のドイツも43%とそんなに大して素晴らしくない。まだまだやることはたくさんあるのです」と、まだまだ日本では再生エネルギーの伸びしろがあることを解説するとともに、「日本の再生エネルギーの道は、太陽光が1つ大きなポイントになるのではないかと思ってます。日本政府は、2030年までに再生エネルギーを約40%まで持ってくとしています。現状の倍になるということでこれはすごいことですよね」と、今後の展開に期待感を寄せた。

アウディでは2026年以降に登場する全モデルがEVになり、内燃エンジンの製造は2033年に終了することをアナウンスしている
脱炭素に向けたアウディの取り組み
再生可能エネルギーで充電することでカーボンフットプリントがゼロに
アウディではサステナビリティのメッセージを推進するべく、「持続可能な社会の実現の重要性について、1人ひとりが考えるきっかけの場を作る」ことを目的とした「アウディ サステナブル・フューチャー・ツアー」を展開
世界各国の電力消費量に占める再生可能エネルギー比率(2021年)
日本の全発電電力量に占める再生可能エネルギー比率の推移
日本の全発電電力量に占める再生可能エネルギー導入見込み比率(2030年)

 続いてサーラコーポレーション 代表取締役社長兼グループ代表・CEOの神野吾郎氏は、アウディと今回の発表が行なえたことに喜びを示しつつ、サーラグループについて紹介。「サーラグループは静岡県浜松市、愛知県豊橋市を中心にエネルギーから始まった企業グループです。安心安全で快適な地域社会を、さまざまな経済活動とともにどのように実現していくかを目的に企業経営しているグループです。未来のためにサステナブルなエネルギーを活用していくことに世界中が大きく舵を切っているわけで、われわれの地域社会としてもチャレンジをしてこうということで取り組んでいます。アウディもe-tronという新しいビークルを作っていくというチャレンジをされていること、皆さんと色々な議論をする中でわれわれもぜひけん引役として頑張りたいということでカーボンニュートラルなショールームを作りました」と説明するとともに、V2H(Vehicle to Home)の重要性なども説き、カーボンニュートラルの世界を家庭でも積み重ね、地域、社会全体に波及していった結果として脱炭素社会ができるというプロセスにチャレンジできたらと意欲を示した。

株式会社サーラコーポレーション 代表取締役社長兼グループ代表・CEOの神野吾郎氏
サーラグループの概要
アウディのEVにより豊かなカーライフを実現する
暮らし全体の低炭素化、脱炭素化をサポート
持続可能な地域社会を目指して

 一方、浜松市副市長の長田繁喜氏、浜松市 カーボンニュートラル推進事業本部 本部長の村上隆康氏からは浜松市のカーボンニュートラルに向けた取り組みについて紹介が行なわれた。

 現在の浜松市は2005年に浜松市、浜北市、天竜市、舞阪町、雄踏町、細江町、引佐町、三ヶ日町、春野町、佐久間町、水窪町、龍山村の12市町村が合併したもので、市としては日本一の広さを持つ岐阜県高山市に次ぐ1550km 2 の面積がある。そういった豊富な環境資源を生かし、現在浜松市では2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて太陽光、バイオマス、風力といった再生可能エネルギーの導入およびその利用拡大、森林資源の利活用などを進めている段階だという。

 長田副市長は「2050年のカーボンニュートラル達成に向けましては、行政だけではなく市民一丸となって実施していかないと達成ができないものだと考えております。特に豊富な経営資源をお持ちの民間企業の皆さまとどうやって連携していくのか、ここが大きな鍵となっていると考えております。そのような中、今回アウディ浜松におかれましては、このような先駆的な取り組みをしていただいたということで誠に感謝申し上げる次第です」と感謝の意を述べるとともに、「浜松市の工業製品は年間2兆円ほどの出荷額がございますが、そのうちの40%強は輸送用機器が占めるという、そういう機器中心で発展してきた都市です。1世帯あたりの自動車の保有台数、これは政令指定都市として1番ということでございまして、本当にクルマに親しんだ街として今回の取り組みは本当に市民の皆さまが大いに関心を持たれるんではないかなと思っています。このような先駆的な取り組みがゼロカーボンドライブ、この推進にも繋がるのではないかということで期待しているところでございます。アウディ浜松さま並びに関係の皆さまですね、今後もぜひともこの浜松市の取り組みにご支援ご協力賜りますようお願い申し上げる次第です」とコメントした。

浜松市副市長の長田繁喜氏

 また、浜松市のエネルギー政策について紹介を行なった村上本部長は、山、川、海がある浜松市は「多種多様な再生可能エネルギーに恵まれた街」とし、中でも日照時間が日本トップクラスということでこの優位性を生かした太陽光発電の導入を中心にこれまで政策を進めてきたという。そして2020年3月には市内の総消費電力に相当する電気を、市内の再生可能エネルギーで生み出すことができる状態を目指す浜松市域“RE100”を表明するといった取り組みが紹介された。

 村上本部長は、「浜松市ではエネルギーに対する不安のない強靭な脱炭素社会、いわゆるエネルギースマートシティの実現を目指しております。これによりまして地域内の経済循環を生み出すことができますので、地産地消エネルギーシステムを実現するために引き続き官民連携によってこの取り組みを進めていきたいと思っております」と抱負を述べた。

浜松市 カーボンニュートラル推進事業本部 本部長の村上隆康氏
浜松市の特徴
浜松市域“RE100”
浜松市スマートシティ推進協議会について
地産地消システムの担い手となる浜松新電力
エネルギー・スマートシティの実現

 最後に登壇したサーラカーズジャパン 代表取締役社長の坂爪謙治氏は、アウディ浜松のカーボンニュートラルの取り組みについて紹介。

 アウディ浜松では屋上に400枚のソーラパネルを敷き詰め、これにより17万3000kWh/年を発電している。サーラカーズジャパンとしては、カーボンニュートラルの電気を買ってそれで終わりではなく、自身が使う分の電力は自身で作りたいという思いがあり、そのうえでCO2フリーの電気をアウディユーザーに提供したかったという。

 ちなみにアウディ浜松が自家消費するのは7万1000kWh/年なので、10万2000kWhは余剰電力となり、この分はサーラエナジーに売電しているとのこと。また、都市ガスについてもカーボンニュートラルの都市ガスを使っているとしており、坂爪社長は「こういったことで店舗としてのカーボンニュートラルを実現したということで、それによってお客さまがアウディ浜松でEVに充電する電気はCO2フリーと、ここが実現できたのかなと思っております」とアピール。

 また、フォルクスワーゲン浜松&浜松西、フォルクスワーゲン/アウディ第2工場(浜松整備工場)といったグループ店舗のカーボンニュートラル化の実現を年内に目指すことも明らかにした。

サーラカーズジャパン株式会社 代表取締役社長の坂爪謙治氏
カーボンニュートラル化スキーム
アウディ浜松の発電量などがモニターで確認できる
自社ネットワーク網におけるカーボンニュートラル化計画