ボッシュ、年次記者会見2010 トレンドは電動化と低コスト化。メンテナンス事業を強化 |
ボッシュは5月27日に、2010年の年次記者会見を開催した。この会見で創業以来初の赤字となった2009年を振り返るとともに、2010年の展望を語った。
ボッシュ取締役社長 織田秀明氏は、2010年は売上高を拡大して、収益を黒字化することを目標としていると言う。その背景には中国をはじめとする新興国市場の成長があり、「回復の推進力は、アジア、アジア、アジアになる。このアジア市場では日本の自動車メーカーの占める割合が高いので大切」と言い、国内メーカーへ各種の自動車部品供給を行っている日本のボッシュはアジア市場の伸びとともに、回復していくだろうと語った。
ただ不安定要因も「為替の乱高下」「原材料の高騰」「バブル的様相を示している新興国市場」と3つあり、これらの動向次第ではどうなるか分からないと言う。ただ、バブル的様相が見えているとはいえ、アジア市場が成長の原動力であるのは変わらず、この新興国市場のニーズにマッチする形での自動車部品提供を行っていく。
2010年の展望 | 地域別売上げ比率予測。2015年にアジア・太平洋地区は売上げの30%を占めるようになる | ボッシュは、環境、新興国、低コスト化、多様性と4つのキーワードに対応する |
また、今後大切となるのは自動車の電動化だと言う。石油燃料には、石油価格上昇による経済的リスク、資源枯渇のリスク、自然に対する負荷という環境リスクの3つのリスクがあり、自動車の電動化は避けられない流れであるとし、ボッシュもインバーターや電気モーター、協調回生ブレーキなど各種の自動車部品で対応していく。
新興国市場を見据えた場合、低コスト化の要求も強く、それに対応した部品も必要になると言う。実際ボッシュではLPV(Low Price Vehicle)であるタタの「ナノ」に多くの部品供給を行っており、対応する能力はあるとした。そのほか、Value Motoronic ECUと呼ぶ低価格ECU(Electoronic Control Unit)も用意しており、これは機能を落としているほか、ECUの筐体の製法を変更することなどで低価格化を実現している。
ボッシュの会計年度は1月~12月。すでに第1四半期を終えており、2007年と比べ売上高が半減した2009年の第1四半期と比べると65%増の77億1100万円を達成している。ボッシュはすでに経済危機を超え、回復基調へ向かっていると語った。
ボッシュ オートモーティブアフターマーケット事業部 執行役員 寺田浩康氏 |
■ボッシュ カーサービスの店舗は700店舗に
さまざまな自動車部品を自動車メーカーに供給するボッシュは、その技術を活かしてバッテリーやワイパーなどをアフターマーケット市場で販売している。それらの製品を扱うオートモーティブアフターマーケット事業部の売上げは、ボッシュの売上げの9.4%を占める。
今年ボッシュはアフターマーケット市場において、ボッシュ カーサービスに力を入れると言う。オートモーティブアフターマーケット事業部 執行役員の寺田浩康氏は「1970年代のメルセデス・ベンツの電気関連部品は生産コストの5%だった。それが今では40%になり今後もまだまだ増えていくだろう。これら増え続ける電子部品のネットワーク化のためボッシュは車載LANであるCAN(Controller Area Network)の規格化を行った。これにより車内配線を大幅に減らすことができた」とする一方で、車内に積まれるコントローラーのインテリジェント化が進んだ結果、1つの故障で5個のECUに38のダイアグコード(診断結果コード)がメモリーされるようになったと言う。
このダイアグコードを診断機器を用いずに解析しようとしても難しく、そうした現代の自動車をメンテナンスするのが「Parts & Bytes(パーツ・アンド・バイツ)」という理念。Bytesはコンピューターのことを指し、コンピューターによる診断と、それに基づく適正なメンテナンス部品の提供を目指している。
それらを提供可能な自動車整備工場がボッシュ カーサービスで、現在全世界に1万1125店舗、日本では69店舗ある。寺田氏はこの店舗数を将来的に700店舗に引き上げ、全国どこでもボッシュの最新機器を利用した、最新の自動車メンテナンスを提供していきたいとした。
(編集部:谷川 潔)
2010年 5月 27日