試乗レポート
使い勝手だけじゃない! スズキの新型「ソリオ」に乗って感じた静粛性・安定性
“コスパ”にも優れたコンパクトカー
2021年1月2日 12:00
4代目「ソリオ」誕生! その進化点は?
初代が「ワゴンR」の発展形として2000年に登場した「ソリオ」は、運転しやすいコンパクトサイズと、広く機能的な室内空間を両立するという最大の美点を2011年登場の2代目、2015年登場の3代目へと受け継いできた。2代目では乗り降りしやすい両側スライドドア、3代目では低燃費を叶えるマイルドハイブリッドを搭載するなど、時代に合わせた魅力も加わり、先代からは「ソリオ バンディット」という別キャラクターの存在感も増している。
ただ、その間にコンパクトカー市場は成熟。現在は1~2人乗り用のアシとしてだけでなく、ファミリーのファーストカー需要や、Lクラスミニバンなどから乗り換えるダウンサイジングの受け皿としても重宝されるモデルがしのぎを削る。
その中で迎えた4代目ソリオは、どんな姿へと進化するべきか。スズキが放った3本の矢は、「デザイン」「室内空間」「安全性」の3つだという印象を受けた。とくに室内空間については、後席の快適性アップと、荷室をもっと大きくしてほしいという、既存のソリオユーザーからの要望も大きかったという。
そんな新型ソリオ/ソリオ バンディットのデザインは、やや背高ノッポ感が強かった先代から打って変わって、どっしりとしたロー&ワイドな安定感あふれるフォルムに。フロントマスクは、フード先端がソリオで45mm、バンディットで25mm高く上げられ、立体感のあるメッキガーニッシュが横のラインを強調するソリオ、大型で細部まで作り込まれたグリルが精悍なバンディットと、どちらも存在感と上質感がかなりアップしたと感じる。
全長が80mm延びたボディを生かした伸びやかなルーフラインや、20mm拡大した全幅に大胆に入ったキャラクターラインがダイナミックなボディラインも、日常からフォーマルなシーンまで似合うような大人っぽさで溢れている。
そしてインテリアを見てみると、ソリオはネイビーを基調にホワイトのラインがオシャレさを加え、バンディットはボルドーとブラックの2トーンがシックな印象。大きなグラスエリアで明るく開放的な空間は、後席ショルダールームで20mm、ヘッドクリアランスで5mm拡大して、ユーザーの要望に見事に応えた広さを実現。後席は165mmの前後スライドや最大56度のリクライニングもでき、座ってみると体がスッとラクな体勢になる。
バンディットの方は、シート生地がハリのある素材のためか、やや弾力が強めで走行中に腰が動きやすいシーンもあったが、使っていくうちにこなれてくるのかもしれない。上級グレードには前席にシートヒーター、後席には足下から暖かい風が出るリアシートヒーターダクトや、「スペーシア」で好評のスリムサーキュレーターも装備されて、季節を問わず心地いい温度が保てるよう配慮されている。広いだけじゃない、しっかり心地いいのが新型ソリオの室内空間だ。
そして今回、とても感心したのが床面長を100mm拡大したというラゲッジ。まだまだコンパクトクラスだと、5人乗ったら全員分の旅行バッグは積めないな、というモデルが多い中、新型ソリオは35Lのスーツケースが5個積載可能。ラゲッジ側からも簡単に後席がスライドできるので、人と荷物の状況に合わせてアレンジしやすいのも便利だ。間口もほぼスクエアで大きな荷物も積みやすく、後席を倒せば自転車やスノーボード、助手席までフラットにすればスキーやサーフボードなど長い荷物もOK。さらに、フロアボードの下にはサブトランクもあり、ボードを上げればベビーカーなど背の高い荷物を立てかけて運ぶこともできるようになっている。
シートアレンジでは、アウトドアブームで車中泊の需要が高まったこともあり、フルフラットにすれば大人2人がゆったり寝そべることができる。車内で前席と後席を行き来できるウォークスルーや、折りたたみテーブルにロールサンシェードもあって、子育て世代が欲しいものはなんでも揃っている印象だ。
乗れば分かる“見えない部分”の大幅改良
さて、新型ソリオのパワートレーンは1.2リッター4気筒ガソリンと、1.2リッター4気筒ガソリン+マイルドハイブリッドがあるが、試乗したのはソリオもバンディットもマイルドハイブリッドモデルとなった。ソリオのベーシックグレードとなる「G」のみ1.2リッターガソリンで14インチタイヤ、あとは全てマイルドハイブリッドで15インチタイヤを装着。アルミホイールも標準装備の豪華仕様だ。
走り出すと、出足こそ少し重さを感じるものの、その後はスムーズで滑らかな加速が続く。モリモリとパワーを感じるほどではないかわりに、高速域でもまったく不足はなく、追い越し加速も十分に引き出してくれる。ステアリングフィールにも落ち着きがあり、重すぎず軽すぎず操作しやすい印象だ。
そして驚いたのが、低速から高速まで一貫して高い安定感と、室内の静かさ。後席でも試乗してみたが、乗り心地も予想以上にしっとりとしている。
開発者に聞くと、ユーザーからの「後席を快適にしてほしい」という要望に、広さや装備の充実だけでなく目に見えない「乗り心地」の面でも応えられるよう、ボディや足まわりを磨き上げたという。
まずはボディの接合を強化するために、構造用接着剤で部品間のわずかな隙間を埋め、一体感を向上。リアサスペンションはストロークを拡大しつつ、コイルスプリングのリアバネ定数を先代比30%アップして路面からのショックを吸収。前後のショックアブソーバーに高応答・飽和特性のピストンバルブを採用したり、バンプストッパーのゴムをウレタン化したりと、地道な改良を行なっている。
さらに、エンジン音を吸収するダッシュアウターサイレンサーの改良や、ロードノイズを低減するリアフェンダーライニングの全面採用、リアスタビライザーにストッパーゴムを追加するなど、ノイズ対策も徹底的に。こうした改良により、市街地走行60km/h時の騒音レベル、会話明瞭度ともに先代より進化を遂げているという。この違いは、短時間の試乗でも明らかに分かるレベルだけに、毎日使うユーザーならこの恩恵は計り知れないだろうと感心したのだった。
そして安全性の面でも、スズキが持ちうる最新の安全装備、運転支援システムを全て搭載。車庫入れなどストレスを感じやすい場面でも、「全方位モニター」のカメラ映像をスズキ小型車初となるデジタル伝送化し、合わせてナビ画面を9インチにサイズアップしたり、画素数をアップしたりと、より鮮明に映し出して運転をアシストしてくれる。速度やシフト位置などが表示されるヘッドアップディスプレイも、スズキ小型車初搭載だ。
こうした安全性の面でも、装備の充実だけでごまかさないのが、やはり感心したところ。ドアミラーの高さや取り付け位置を工夫して右折時の死角を小さくしたり、メーターをドライバーに向けて視認性をよくするなど、細やかな心遣いも含めてトータルでドライバーをサポートしている。
新型ソリオはまず誰が見てもカッコよく垢抜けたこと。広さはもちろん快適性が段違いによくなったこと。いざという時だけでなく、毎日の運転からラクに安全になったこと。これらが約200万円ですべて手に入るという、コストパフォーマンスのよさ。「だからソリオがいい」と言わせるチカラが、新型ソリオにはあると感じたのだった。