試乗レポート

どんな道でも快適なスズキ「ソリオ」で“ひとり夏ドライブ”

密を避けて夏を探しに

 空は高く風は青い、夏が一気にやってきた。まだ以前と同じようには楽しめない夏だけど、密を避けてのんびりとドライブするだけだって、心に夏を焼き付けることはできる。行き先はやっぱり、海がいい。

“ひとり夏ドライブ”の相棒は、普段は子供と一緒の毎日をしっかりサポートしてくれる、スズキ「ソリオ」。太陽みたいにまぶしいボディは、2020年11月に登場した「フレイムオレンジパールメタリック」という新色だ。全長が80mm延びてダイナミックになったエクステリアデザインに、とてもよく似合っている。厚みを増して存在感が高まり、プロジェクター式LEDヘッドライトで先進的な印象もプラスされたフロントマスク。ダブルスポークの凝った15インチアルミホイールで、ガッシリと引き締まった足下。上質感もアップしたソリオは、ちょっとリフレッシュしたいときの気分にもなかなかいい感じだ。

スズキ「ソリオ HYBRID MZ」(202万2900円)。ボディカラーは夏の青空に映える「フレイムオレンジパールメタリック」。ボディサイズは3790×1645×1745mm(全長×全幅×全高)。ホイールベースは2480mmで、最小回転半径は4.8m

 乗り込むときは、まず子供を乗せるために両側スライドドアを開くのがクセになっているけれど、今日はバッグを放り込むためにドア開閉ボタンを押した。グリップを握らずとも、指1本でボタンを押すだけで自動で開閉できるのは、すでに30℃を超えている暑い日にもありがたい。スライドドアが閉まり切るまで待たなくても、自動でロックしてくれる「予約ロック機能」も追加されて、さらに便利になっている。

 運転席に座ると、あらためてガラ~ンと広い空間で深呼吸を1つ。腕をいっぱいに伸ばしたってOKな天井や、横方向に広がるデザインで心地いいインパネデザイン。カップホルダーやオープントレイ、引き出すタイプのポケットなど、こまごました物もすっきりしまえる収納と、どこに何があるかひと目で分かるスイッチ類で、すぐにリラックスさせてくれるのがソリオのインテリアだ。センターウォークスルーで後席やラゲッジにもすぐにアクセスでき、猛暑の中をわざわざ外に出なくていいから、子供のお世話や荷物の出し入れがストレスなくできる。今日は読みたかった本を持ってきたから、どこか景色のいい駐車場を見つけて、後席で読書を楽しむのもいいかもしれない。後席のスペースがぐんと拡大したソリオなら、シートアレンジで前席と後席をフルフラットにすると、足を伸ばして寝転がれる。身長180cmの人でも余裕だそうで、これなら車中泊のドライブにもよさそうだ。

シックで落ち着きのあるホワイト×ネイビーでまとめられた広々とした車内は、スイッチ類を分かりやすく配置。運転に必要な情報はヘッドアップディスプレイに表示を集約できる
広いインパネアッパーボックスや、スズキ車ではおなじみの助手席シートアンダーボックスなど収納も充実。フロントシート背面には折りたたみ式のパーソナルテーブルも装備される(HYBRID MZ、HYBRID MX)
たっぷりとした厚みのあるシートはリビングのソファがイメージ。リアシートは最大56度のリクライニング機構を備えるほか、165mmのシートスライド量で足下をゆったり広く使うこともできる
ラゲッジは、荷物の量に応じてリアシートをスライドさせたり倒したり、多彩なアレンジが可能

 1.2リッター直4エンジンとISG(モーター機能付発電機)&リチウムイオンバッテリーのマイルドハイブリッドは、スタートボタンを押すと静かなアイドリング。まずは都心から郊外を目指して走り出した。室内はこんなに広いのに、最小回転半径は4.8mという小回り性能のよさで、自宅を出ていきなりやってくるクランクのような曲がり角だって、ソリオならまったく不安なくクリア。出足は軽やかで、モーターアシストがすぐに流れに乗る力強い加速をアシストするから、ストップ&ゴーもキビキビと走れて爽快だ。信号待ちでは積極的にアイドリングストップし、燃費アップに貢献。再始動も素早く、キュルキュルとした音やブルンと大きな振動もないので、何度再始動しても違和感がないことに感心。アップライトな視界と大きなガラスから、夏のバーゲンセールをアピールするカラフルな看板が流れ去って、浮き足立つ夏の気配を感じ取った。

最高出力67kW(91PS)/6000rpm、最大トルク118Nm(12.0kgfm)/4400rpmを発生する直列4気筒DOHC 1.2リッターエンジンを搭載し、最高出力2.3kW(3.1PS)/1000rpm、最大トルク50Nm(5.1kgfm)/100rpmを発生するモーターを組み合わせるマイルドハイブリッドシステムを採用。WLTCモード燃費は19.6km/L

“暑い夏”でも車内は快適に過ごせるアイテムを装備

 だんだんと視界に緑が多くなり、空は一段と突き抜けて、ソフトクリームみたいな入道雲が浮かんでいる。道はアップダウンが激しくなってきたが、軽やかな走りは上り坂でも健在だ。アスファルトが割れたり、ギャップが目立ったりしている路面でも、落ち着きのある乗り味と静かな室内が保たれている。ボディの接合を強化して全体の一体感を向上させたり、リアスタビライザーにストッパーゴムを追加して振動を抑制したり、ショックアブソーバーやバンプストッパーといった細かなパーツも改良を重ね、静粛性や安定性を磨き上げたというのも納得だ。平和な時間が流れる中、Bluetoothでつないだスマートフォンで夏を感じる曲をかけながら、もうすぐ見えてくる海を待つ。

 わずかに開けた窓から、カモメの鳴き声が飛び込んできた。と同時に、キラキラと輝く水平線がどんどん迫ってくる。時折しぶきが跳ねるのは、果敢に波に挑んだサーファーだ。トコトコとそんな海沿いを走っているだけで、求めていた夏気分がザブザブと心に流れ込んでくるのを感じる。太陽はもろに頬や腕を照らしているけれど、ソリオのフロントドアガラスは99%紫外線カットで、赤外線も抑えてくれる「プレミアムUV&IRカットガラス」だから大丈夫。フロントガラスにも紫外線だけでなくIRカット機能があるから、ジリジリと焼けるような暑さからも守ってくれて安心だ。後席にはサッと引き出して使えるロールサンシェードもあるし、何より天井にリアサーキュレーターが付いているから、エアコンの風を素早く効率的に後席に届けられて、暑がりの子供も快適。燃費アップにも貢献してくれて、家計も助かっちゃう機能だ。

 夏気分を満喫してちょっとお腹が空いてきたら、可愛らしいベーカリーショップが目に入った。ガラスケースに並ぶパンはどれも美味しそうで、思わず欲張ってテイクアウト。せっかくだから、丘の上にある絶景が自慢の公園へ行ってランチタイムにしよう。もともとソリオは車庫入れがしやすいクルマだけれど、ドアミラーの取り付け位置が変更されて、死角が減っているから右左折時はもちろん、駐車場での扱いもさらにスムーズになったと感じる。バックギヤに入れると、大きな画面の「全方位モニター」で、真上から自車を見た映像が確認でき、その映像がとてもクリアで分かりやすい。車体がまっすぐになっているか、障害物がないかどうか、ひと目で分かるのは車庫入れが苦手な人でなくても、かなり助かる安心サポート機能だ。デュアルカメラブレーキサポートや誤発進抑制機能など、うっかりミスや慣れない場所での不安を取り除いてくれる先進安全装備も充実しているからこそ、こうしたドライブが楽しめるというもの。全車速追従機能が追加されたACCもあるから、高速道路でのロングドライブもグッとラクで安心になっている。

 人気の少ない公園で180度広がる海を眺めながら頬張ったパンは、どんな高級レストランにも負けない美味しさ。お腹が満たされる頃には、すっかりリフレッシュして夏モード全開になった。帰りもソリオでテンポよく、軽やかなドライブが待ち遠しい。今度は子供を連れて、この絶景を見せてあげたいと考えていた。夏はまだまだ終わらない。

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Zなど。 現在は新型のスバル・レヴォーグとメルセデス・ベンツVクラス。

Photo:堤晋一