試乗レポート

【2022 ワークスチューニング試乗会】新型ステップワゴン&フィット RSの無限デモカー、その仕上がりは?

無限の新型ステップワゴン&フィット RSに試乗

ワイドでスポーティな重量感のあるデザインを目指したステップワゴン

 無限(M-TEC)のステップワゴンは「My Fast STEP WGN」をコンセプトに、ワイドでスポーティな重量感のあるデザインを実現することを目標としている。

 エアロパーツはフロント、サイド、リアに装着し、フロントのアンダースポイラーのエア取り入れ口とグリルをブラックアウトし、平板なサイドビューにはガーニッシュを、さらにホイールを18インチの大径ホイールとオフセットを変更することでワイドなイメージを出している。このホイールは切削加工を施したスポーティなもので7.5Jの幅にインセットは40mmとなっており、17インチホイールより2kgほど軽い。

 無限スポーツサイレンサーはチタン製の2本出しで、こちらはその形状からリアアンダースポイラーを同時装着しないと装着できない。これらのエアロパーツとホイール、そしてスポーツサイレンサーを装着した無限ステップワゴンは派手ではないが存在感の強いミニバンに生まれ変わっていた。

新型ステップワゴン用の無限パーツは「My Fast STEP WGN」をコンセプトに、クルマにこだわり誇るユーザーに向けて、無限らしいスポーティさと存在感を際立たせたスタイリングを実現するパーツをラインアップ
エクステリアでは大型で存在感を発揮するフロントアンダースポイラーやフロントマスクをブラックアウトさせ、車両をより精悍に際立たせるフロントグリルガーニッシュを設定。サイドガーニッシュも大型のパネルタイプを設定するとともに、リアにはスポーツサイレンサーと同時装着により一層の存在感を発揮するリアアンダースポイラーを設定。また、車体の微振動を減衰して操縦安定性向上を図る「パフォーマンスダンパー」、スピニング加工を施し薄く軽量化を図りながらも高い剛性を実現したアルミホイール「MDW」(18×7.5J インセット40[5万2800円/本])の新色「ブラッククリアミラーフェイス」も設定する
スポーツマットは赤(5万9400円)と黒(5万8300円)の2色設定

 これらのパーツを装着したステップワゴンは機能的には大きな違いはなさそうだが、実際は空力の改善やスポーツマフラーの装備でノーマルのステップワゴンとは微妙に味が変わっていた。例えば加速時に感じられるレスポンスの違いは排圧の低減効果によるもので低音の排気音は力強さがあり、耳障りもよいのが特徴だ。

 またフロントのエアスポイラーとサイドのアンダーパネルの整流効果でハンドルの切り始めの手応えが出ており、スッキリした味になっている。微小の動きが改善しているのが無限パーツの特徴で、合わせてリアのアンダースポイラーとディフェーザー機能も形だけのものではなく、その他のエアロとの相乗効果があり直進時の接地感も高いのが違いだ。

 ハンドルの操舵力が重めなのもエアロパーツの影響で、手応えのあるフィーリングになっている。乗り心地としては本来それほど変わらないはずだが、少し突き上げ感が大きくなっているのはダウンフォースの違いなのだろうか。ちょっと興味があるところだ。

 今回は間に合わなかったが、近い将来にサスペンションも開発して販売する意向だ。その際はスプリング、ショックアブソーバーも無限らしい仕様が開発され、試乗したステップワゴンのエアロパーツ、ホイールと組み合わされると無限の目指すステップワゴンの形になるはずだ。

フィット RSはハンドル応答性の優れたシャープでスポーティなコンパクトカーに変身

無限パーツを装着するフィット RS

 フィットのマイナーチェンジで出力が80kWから90kWへとパワーアップし、さらにサスペンションも変わっているのでベースはガラリと変わっている。無限ではさらにスポーツパーツを設定してフィットに強いイメージを打ち出している。

 無限仕様は2種類あり新規で登場したRS用と、従来からのBASIC、HOME、LUXEのグレードをベースとしたエアロパーツだ。RS用はスポーツを、他の3モデルではカジュアルスポーツをイメージできるデザインになる。いずれもフロント/サイド/リアスポイラーを設定されるが、RS用ではフロントグリルガーニッシュを設定し、特に赤のアクセントが効きフィットのイメージはガラリと変わる。

 ホイールも鍛造の軽量17インチホイール「MDE」を開発し、リムにスピニング加工をすることで薄くても剛性の高いホイールとなっている。艶のあるブラック塗装とアルミの切削面の美しいホールはインセット60mmの7J×17インチで、標準車の16インチホイールよりも1本あたり1.7kgも軽量化に成功している。タイヤは標準車の横浜ゴム「ブルーアース」から「ブルーアースGT」となり転がり抵抗とウェット、グリップのバランスの高いスポーティタイヤとなった。

走りの質にこだわったフィット RS用のエアロとして、フロントアンダースポイラー、サイドスポイラー、リアアンダースポイラーを設定。レッドのアクセントを加えてひと目で“走りへのこだわり”を感じられるデザインを採用しつつ、サイドスポイラーには無限ロゴポッティングエンブレムを付属。リアアンダースポイラーの中央部にも無限のロゴを配した
フロアアンダースポイラー、サイドスポイラー、リアアンダースポイラーの3点をセットにした「スタイリングセット for RS」も用意し、未塗装は20万3500円、カラード仕上げは23万6500円。フロントグリルガーニッシュはカラード仕上げで5万5000円となり、カラーはプレミアムクリスタルレッド・メタリックとベルリナブラックの2色設定
カーボン調デザインを用いたドアインナープロテクター(1万1000円、左)とスカッフプレート(1万5400円)
反射効果を持つフィルムを採用したドア開口部に貼り付けるリフレクションフィルム(1万6500円)

 クローズドコースを走り始めて驚いた。マイナーチェンジ前のフィットの穏やかな性格からハンドル応答性の優れたシャープでスポーティなコンパクトカーに変身していた。パワーも大きくなっているのが顕著に感じられ、アクセルの反応も速い。サスペンションも設定変更が行なわれ、キビキビと走る方向になっている。リアサスペンションは硬められているが、ロール抑制はスタビライザーで担っている感じで、素直に動き運転が楽しくなるクルマになっていた。ハイブリッドシステムも設定変更でラバーバンドフィールは改善された。

 無限パーツはタイヤと17インチホイールだが、足下の軽い印象は大きく、ライントレース性が高くて長いコーナーでもハンドル操作で切り足さなくてもクリアしてしまう。しかもコーナリング速度は高くなっている。またハンドルを切り返した時の追従性も高く、軽やかなフットワークを手に入れたのがRSであり、さらに無限仕様だ。

 インチアップされた鍛造ホイールによるバネ下の軽さとスポーティタイヤの組み合わせは高い次元でバランスしていた。足下の軽量化による効果は大きい。エアロパーツも効果的でフロア下面を流れる空気が整流されることで安定性にも貢献しており、ステップワゴン同様に接地感が高くなっている。

 無限仕様のフィット RSの乗り心地は上々、かつ力強いエアロパーツと赤いアクセントはフィットのスポーツイメージを強く打ち出しており、人気アイテムになりそうだ。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:中野英幸
Photo:堤晋一