試乗レポート

レクサスの新型「RX」イッキ乗り EV走行距離や燃費も魅力のPHEV「RX450h+」

トヨタのハイブリッド技術をいかんなく発揮するRX450h+

 ハイブリッドの「RX500h」、純ガソリン車の「RX350」という2.4リッターターボ「T24A-FTS」型エンジンを搭載する2モデルに続き、「RX450h+」にも試乗した。こちらは2.5リッターエンジンのシリーズパラレルハイブリッドをPHEV化したもの。リチウムイオンバッテリの総電力量は18.1kWh。これまで4半世紀にわたり積み上げてきたトヨタのハイブリッド技術をいかんなく発揮し、EV走行での航続距離はWLTCモードで86kmを可能としている。

 エンジン出力は136kW(185PS)/228Nm。ハイブリッドシステムのフロントモーターは134kW(182PS)/270Nm、リアアクスルにも同じ出力のe-AXELを搭載している。システム出力227kW(309PS)のAWDとなる。

RX450h+が搭載する2.5リッターPHEV(A25A-FXS)

 RXのボディサイズは4890×1920×1700mm(全長×全幅×全高)と、従来型より35mmワイドになったが全長は変わりがない。ラージサイズSUVであることは間違いないが、タイヤを4隅に置いたデザインで引き締まった印象を与える。ホイールベースは従来から60mm長い2850mm。前後トレッドも1640/1630mmから1650×1675mmと特にリアトレッドの拡幅が大きい。このホイールベース、トレッド比が締め上げられたデザインの源流となっている。Cピラー下のウィンドウ造形に先代の面影を受け継ぎひと目でRXと分かり、同時にRXの力強さを表現したデザインはレクサスらしい。

撮影車はRX450h+“version L”(871万円)

 インテリアは水平基調でスッキリしたデザインでレクサスらしい質感を持つ。デザインの根底にあるのは「Tazuna Concept」。ステアリングスイッチとヘッドアップディスプレイが連携してドライバーがストレスなく運転に集中できる空間を作る手法だ。センターディスプレイは大型の14インチタッチパネルで機能を集中することでスッキリしたダッシュパネルがデザインできた。多くの機能はこのパネルに集約されているが、オーディオなどのON/OFFは通常のダイヤルで行なえる。ステアリングスイッチはリニューアルされ、ACC系とオーディオ系などがシンプルに整理されて感覚的にも使いやすいように配慮された。実際に使うとまだブラッシュアップできる部分があるものの、スッキリしたデザインだ。

 試乗車はブリヂストン「ALENZA」を装着し、サイズは235/50R21。タイヤ剛性が高く運動性と乗り心地のバランスが取れたタイヤで、レグノの静粛性を受け継いでいる。

近場ならEV走行で済んでしまう

 そして試乗。RX450h+はEV走行でどこまでも走っていける。モードはEVモード、AUTO EV・HVモード、HVモード、セルフチャージモードの4つがあり、HVモードでエンジンとモーター駆動の両方を使うのが一般的な使い方だが、近場ならEV走行で済んでしまう。AUTO EV/HVモードはレクサスならではの新モードだ。ナビ設定するとバッテリ残量や走行ルートに応じてEVとHVを自動で切り替え、燃費向上を図れる。

 セルフチャージモードは充電のために常にエンジンをかけているモード。2.5リッターのA25A-FXSエンジンから発する音振動はよくカットされているとはいえ、ほぼ無音のEV走行からすると直噴エンジンの音、そして振動はどうしても伝わってくる。この領域では改良の余地はありそうだ。しかし通常使うHVモードでは高速道路でも条件が整うとEV主体で走ることになり、静かで心地よい走行を満喫できる。

 乗り心地はRX500hに比べるとソフトだがドッシリしている。凹凸のある場所を通過してもフラットな乗り心地を保つ。加減速でもピッチングが少なく姿勢が安定し、RX500hと共通した姿勢で揺れが少ない。良いクルマに乗っていることを実感する。後席もシートがたっぷりしたクッションストロークだ。

 ハンドリングはRX500hとは異なるフィーリング。穏やかなのが持ち味だが、重心位置の低いことからコーナーでも意外なほど速くて安定感がある。ロールも小さいが、さらにドライブモードをスポーツ+にするとショックアブソーバーが締め上げられ、ロールとピッチングがさらに小さくなりメリハリのある走りになる。乗り心地は少しゴロゴロ感があるが、シャキとした味は日常的に使っても良さそうだ。ただアクセルの反応や操舵力も変わるため、市街地で少し過敏に感じられるかもしれない。

 また前後駆動力配分も100:0のFF走行を基本として20:80まで常に路面、姿勢を判断して制御が入り、ドライバーはそれを意識することなく高い安定性を享受している。雪道でどんな走りを披露してくれるかちょっとワクワクする。

 動力性能はパワフルなRX500hと比較するとレスポンスや出力の絶対値では劣るものの、RX450h+は十分に速く力強い。それにシリーズ・パラレルハイブリッドの継ぎ目のない走りが魅力でもある。また、少し強めの加速ぐらいではエンジン回転に速度が追いつかないラバーバンドフィールを強く感じないのも最近のTHSシステムでもある。

 実用面でも大きな改良がある。全長は変えずにラゲッジルームがさらに使いやすくなっている。実質的な荷室長を50mm拡大し、床面を30mm下げ、容積は612Lに拡大している。9.5インチのゴルフバックなら4個収納できる広さがある。

 重量はRX500hが2100kgなのに対し、RX450h+では2160kgの車両重量がある。しかし車体だけで見るとアルミや強度の高い軽量構造材の使用範囲が広くなり、ボディサイズが大きくなったにもかかわらず従来モデルよりも90kgも軽くなっている。燃費はRX450h+のハイライトだ。WLTCモードで18.8km/L。RX500hでも14.4km/Lをマークする。重量級のSUVでこの数字は素晴らしい。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:安田 剛