試乗記

スバル「インプレッサ」「クロストレック」にSTIパーツを装着したら走りはどう変わる?

インプレッサ STIパーツ装着車に試乗

「フレキシブル」な特性

「STI」(スバル テクニカ インターナショナル)は、スバルのモータースポーツ活動を担うかたわら、そのノウハウを活かしてスバル車のために独自のチューニングパーツを開発して好評を博している。そのSTIの「パフォーマンスパーツ」を装着した車両に試乗する機会があった。

 内外装や走りを好みに仕立てる数あるパーツの中でも注目は、「フレキシブルタワーバー」「フレキシブルドロースティフナー」だ。これまでも何度かお伝えしてきた「フレキシブル」と名の付くパーツについて、改めて述べたい。

 よく車体剛性を強化するためのものとか、ヤマハ製のパフォーマンスダンパーのようなものだと認識されているようだが、剛性には関与するものの、単に剛性を高めるだけではないので、どちらも正しくない。

 一般的なストラットタワーバーでは、剛性を高めるためにストラットの左右をつなぐのに対し、フレキシブルタワーバーは、中間にピローボールを配置しているのが特徴だ。これにより、左右方向にひっぱられる力に対しては強く、上下方向の突き上げに対しては、まさにフレキシブルにいなす特性を持つ。乗り心地を犠牲にすることなく、ハンドリングを向上することができる。

 一方のフレキシブルドロースティフナー リアは、「ドロー=Draw」のとおり、リアフレームの左右を結ぶスティフナーにより、支持部に内蔵されたスプリングが両側のフレームを引きつける方向にテンションをかけることで、たわみを排除して応答性を高める効果が期待できるというものだ。

フルでSTIパーツを装着したインプレッサとクロストレックに試乗

 そのほか、今回試乗した「クロストレック」「インプレッサ」には、各種エアロパーツ、パフォーマンスマフラー&ガーニッシュキット、軽量なブラック塗装のアルミホイール、小物系が装着されていた。

ごく普通に走っても分かる

「フレキシブル~」は、それぞれ車種の特性に合わせて個別に専用のチューニングが施されている。念のため、いずれもスプリング、ダンパー、スタビライザーはノーマルのままであることを断っておこう。

 どちらも同じ条件で乗って感じたのは、初期応答の遅れがなくなり、ステアリングフィールがスッキリとして、走りの一体感が増していることだ。操舵に対してついてくる感じがだいぶ違う。それでいて乗り心地の悪化も見受けられない。

 とくに重心が高く大径タイヤを履くクロストレックのほうが効果は大きいようで、コーナリングを試みると、しっかり内輪も接地していて、路面に吸い付くような感覚がある。

 一方、もともととても乗りやすく、走りにおいては有利なインプレッサは、はたして違いが分かるのかという気もしたのだが、持ち前のキビキビ感とともに、ライントレース性もさらに高まっていて、より意のままに操れる感覚が増している。

 バネ下が軽くなり、タイヤがしなやかにしっかりと路面を捉える感覚も高まっている。2ピニオンの電動パワステの恩恵と相まって、操縦性の精度も高まり、よりすみずみまで神経が行き届くようになった感じがする。

 いずれも限界走行ではなく、ごく普通に走るだけでも、意識の高いドライバーなら、操る醍醐味が高まっていることを感じられるはずだ。エアロパーツについても、高速ではなく一般道での日常域の走りにおける操縦安定性、その効果らしきものは感じられた。

 インナーフレーム構造を採用した新世代のSGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)をはじめ、スバルが持つ最新の内容を誇る両車は、ツルシのままでも十分に完成度が高いことは、すでに何度か走る機会があるたび実感してきた。

 その上で、さらなるプラスアルファを求める人には、こうした優れたアイテムがすでに存在して、それをもうひと手間かけてやることで、また違った境地を味わうことができるというわけだ。

ルックスとサウンドが魅力のマフラー

 かたや要注目のセンター出しマフラーを装着するには、バンパーを加工する必要があるそうだが、これほど特別感のあるルックスになるのならそれもいとわない。

 エンジンをかけた瞬間からノーマルとの音の違いは明らか。乾いた感じの等長等爆ボクサーサウンドは太いながらも軽やかで、低音が効いていながらも車内に音がこもらないことを相当に意識したように見受けられる。どの回転域からでも心地よい吹け上がりを楽しむことができる絶妙なサウンドに仕上げられている。心なしか音が太いと抜けがよくなって、そのぶん速くなったようにも思えてくる。

 SIドライブをSモードにすると、エンジンが高い回転域に維持されるようになって、よりそのサウンドを楽しむことができる。エキゾーストサウンドが目立つようになったことで、ふだんはやや印象の薄いエンジンの存在感が増すとともに、実はe-BOXERが縁の下で頑張ってくれていることも思いがけずよく分かった。

 また、別の機会に、1月に限定500台が発売されるや、それなりに高価ながら即座に完売したという特別仕様車「レヴォーグSTIスポーツ♯」にも試乗した。こちらもフレキシブルドロータワーバーといったSTIのパフォーマンスパーツをはじめ、数々の特別装備があらかじめフルに装着されている。

 エアロパーツをまとい、ブラックのアクセントを各部に配したエクステリアからして印象的で、足まわりにはミシュラン・パイロットスポーツ 5にBBS製の鍛造19インチホイールを組み合わせている。レカロシートの着座感も上々だ。

 前出の2台に対して、ワゴンボディのレヴォーグは前後重量配分に優れる点も有利だが、ドライブすると同様に応答遅れが小さく、意のままの走りが楽しめるのはもちろん、2.4リッターのDITによる強力なパワーやVTD-AWDの制御も効いて、圧倒的な高性能をより質の高い洗練された中で味わうことができた。

 ベース車のよさをうまく引き出し、より高い次元のドライバビリティを実現するSTIパフォーマンスパーツは、走りの質にこだわるスバル車オーナーの思いに非常に的確に応えてくれるスグレモノであることがよく分かった。

インプレッサ STIパーツ装着車

インプレッサ STIパーツ装着車。ベース車両となる「ST-H」のボディサイズは4475×1780×1515mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2670mm
最高出力107kW(145PS)/6000rpm、最大トルク188Nm(19.2kgfm)/4000rpmを発生する水平対向4気筒DOHC 2.0リッターエンジンを搭載し、最高出力10kW(13.6kgfm)、最大トルク65Nm(6.6kgfm)を発生するモーターを組み合わせる。トランスミッションはCVT
ボンネット内にはフレキシブルタワーバー(e-BOXER用)を装着
チェリーレッドの「フロントアンダースポイラー」「サイドアンダースポイラー」「リアサイドアンダースポイラー」をセットにしたSTIエアロパッケージ。ブラックも選択可能。さらに、フレキシブルドロースティフナー リア、パフォーマンスマフラー&ガーニッシュキットを装着
STIルーフスポイラー
STIドアハンドルプロテクター
STIアルミホイール 17インチ ブラック。そのほかのカラーラインアップとして、シルバーとガンメタを用意
STIバルブキャップセット。装着されているのはブラックで、シルバーもラインアップ
インパネ
シート
STI CVTシフトノブ
STIプッシュエンジンスイッチ

クロストレック STIパーツ装着車

クロストレック STIパーツ装着車。ベース車両となる「Limited」のボディサイズは4480×1800×1575mm、ホイールベースは2670mm。パワートレーンは同時に試乗したインプレッサと同じ
フレキシブルタワーバー(e-BOXER用)
STIルーフスポイラー
STIパフォーマンスマフラー&ガーニッシュキット。STIフレキシブルドロースティフナー リアも装着
STIアルミホイール 18インチ。シルバー、ガンメタ、ブラックの3色からブラックを装着

レヴォーグSTI Sport♯

「レヴォーグSTI Sport R EX」をベースに、STIパフォーマンスパーツをはじめとする特別装備を採用し、専用チューニングすることで、操縦安定性の向上と、より上質な乗り味を実現
水平対向4気筒DOHC 2.4リッター直噴ターボエンジンを搭載
ウルトラスエードを使用したRECAROシートを装着
岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:堤晋一