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まるも亜希子はどう感じた? ランボルギーニの“スーパーSUV”「ウルス」の魅力とは

家族でも乗れるランボルギーニは女性にも扱いやすい優しい猛牛だった

5人家族でも乗れるスーパーSUV

 よほどクルマと隔離した世界にいる女性でない限り、「ランボルギーニ」という名を1度や2度は耳にしたことがあるはず。中には、夫や彼氏が街中ですれ違ったランボルギーニに興奮し、どれどれどんなクルマなのかと、一緒に見たことくらいはあるかもしれない。

 圧倒的な個性と低くワイルドな迫力を携えたその姿は、多くの女性に「自分とは縁遠いクルマ」と感じさせたことだろう。とくに、私のように家庭を持つ身となった女性ならばなおさらだ。この先ずっと、自分がランボルギーニのステアリングを握ることなどないのではないか。そう悟って分不相応な夢など抱かないようにするのが、普通の感覚だと言い聞かせてきた。

 ところが、世の中には想像もつかない「まさか」が起こるものだ。リアドアのあるランボルギーニ。砂漠も走れるランボルギーニ。5人家族でも乗れるランボルギーニ。そんな、夢でさえ見ることのなかったスーパーSUV「ウルス」が誕生したのである。ちなみにランボルギーニとして初のSUVは1986年に登場した「LM002」。こちらは4シーター仕様で、ウルスは5シーターのSUVとして同社初のモデルということになる。

 世界的なSUVブームは冷めることなく、続々と新しいモデルが世に出てはいるが、初めてウルスを目の前にすると、そんな雑多なSUVたちがオモチャのように見えてしまうほど、とんでもない存在感で周囲を威嚇していた。鋭い眼光と大胆なエッジを効かせたフロントマスク、風の吹き抜ける様が感じられるようなエアインテークやキャラクターラインは、ランボルギーニでなければ生み出せなかっただろう。見たこともない造形だ。そしてSUVスタイルになっても、どこにも生活の匂いは混ざっていない。

 それは、全体の3分の2がボディ、3分の1が窓という、ランボルギーニの基本となるスーパースポーツカーの比率を踏襲しているからだろう。ウルスはあくまで、SUVである前に1つのスーパーカーなのだ。

新型「ウルス」は2017年12月に世界初公開され、今春に日本導入された5シーターの“スーパーSUV”。5112×2016×1638mm(全長×全幅×全高)、ホイールベース3003mmという堂々とした体躯を備える。価格は2816万1795円
ウルスでは車速と選択したドライブモードに応じて最大で±3.0度のリアステアリング角を設ける、「アヴェンタドール S」でも導入されたリアホイールステアリングを採用。低速時は後輪が前輪のアングルの反対を向いてホイールベースを最大600mm相当短縮する効果を得ることができ、高速時は後輪が前輪と同じ方向に切れ、ホイールベースを最大600mm長くする効果が得られる。足下は23インチホイールにピレリ「P ZERO」(フロント:285/35 ZR23、リア:325/30 ZR23)の組み合わせ
撮影車はオプション設定の4座仕様。ランボルギーニらしいラグジュアリーでスポーティなインテリアデザインを採用するほか、上部はエンターテインメントを中心とした情報表示を、下部はエアコンのコントロールが行なえる2つのタッチパネルディスプレイを搭載

「STRADA」モードの秀逸さ

 そしてドアを開けると、そこは不思議な空間に映った。試乗車はオプションで選べる4座タイプだったが、まるで飛行機のプレミアムシートのように1人ひとりにたっぷりと贅沢なスペースが与えられている。前席と後席が分け隔てなく、「同じ道をともにする同志である」と言わんばかりに、とても快適な座り心地を平等に享受できる。なにせ、後席までパワーシートなのである。

 ブラックレザーにイエローのステッチは、レーシーで男性的な印象を受ける半面、プレミアムブランドのスポーツラインのような「エレガント×スポーティ」をイメージさせるところもあり、女性にとってもテンションが上がる空間。インパネのスイッチ類は、ちょっとメカメカしくて最初は戸惑ってしまうが、ドアを開けると数秒だけメーター画面に表示される「URUS」のロゴには、イタリア国旗のカラーもあしらわれて親しみを覚えた。

シートにはブラックレザーを用い、イエローのステッチがあしらわれる
メーター画面に表示される「URUS」ロゴ

 また、レザーをはじめアルカンターラ、アルミニウムなどインテリアを彩る素材はどれも素晴らしい品質。ここに身を置くだけで、自分まで最高級レベルになれるような、いや、ならなければ女がすたると思わされるような、背筋がピッと伸びる気持ちよさに包まれた。

 真っ赤なルージュならぬ、真っ赤なカバーを指でめくると、そこにスタートボタンが隠されている。高鳴る胸とともに押すと、果たしてウルスは「ブォォォン」と野太い雄叫びで応え、4.0リッターV8ツインターボが目覚める。新型のアルミニウム製エンジンは、ランボルギーニ初のターボ。これはオフロード走行を想定し、低回転での高トルクを実現するためでもあるという。

ウルスの走行モードはオンロード向けの「STRADA」「SPORT」「CORSA」に加え、オフロードパッケージとしてオプション設定されるオフロード向けの「SABBIA(砂漠)」「TERRA(オフロード)」「NEVE(雪上)」を設定

 最高出力650HPを6000rpmで発生し、最大トルク850Nmはわずか2250rpmから手に入る。乾燥重量が2.2tほどのボディで、0-100km/h加速が3.6秒というのはものすごい数字である。日ごろ、300Nmのクルマでもパワフルだと感じている身には想像もつかないなか、恐る恐るアクセルを踏み込んでみた。

ランボルギーニ初となるターボエンジンのV型8気筒4.0リッターツインターボユニットは、最高出力478kW(650HP)/6000rpm、最大トルク850Nm/2250-4500rpmを発生。0-100km/h加速は3.6秒、0-200km/h加速は12.8秒、最高速は305km/hに達する

 するとウルスは、不意をつくほどに紳士的な対応を返し、とても丁寧にスムーズに加速していく。しっかりと路面を捉えるフラットな安定感は、手を取りエスコートされている気分になる。ステアリングフィールにも傲慢さはなく、手のひらにほどよいインフォメーションが伝わり安心感さえ生まれてくるほどだ。

 そして高速道路はもちろん、市街地のストップ&ゴー、海沿いのクネクネと細い道、つづら折りの山道と、どんなシーンでも決して弱点を見せない。6つある走行モードのうち、今回はほとんど「STRADA」を選択して走ったが、パワフルな加速フィールと俊敏なコーナリングの高揚感とは裏腹に、どこでもその乗り味には落ち着きがある。これはウルスが全速度域にわたって、「アヴェンタドール S」で導入されたリアホイールステアリングを採用している恩恵もあるはず。車速と選択したドライブモードに応じたステアリングアングルをとることで、シーンに応じた柔軟な特性変化を実現してくれるのだ。

 さらに、最初に23インチのホイールを見て「これは絶対に硬いでしょう……」と覚悟して座った後席が、騙されているかのような乗り心地のよさ。不快な振動もノイズもほとんどなく、たっぷりとした足下スペースでリラックスできるシートには心から感心した。

 ただ、その快適な空間も「SPORT」を選択すると一変。途端にゴツゴツとした乗り心地になり、大きなギャップでは腰が浮く。今回はすぐに「STRADA」に戻してしまったが、サーキットに解き放てば遠慮なく獰猛な一面を剥き出しにする、スーパーカーとしての血統を見た気がした。

 ちなみにそのほかの走行モードの表記はイタリア語。「TERRA(オフロード)」「NEVE(雪)」「SABBIA(砂漠)」なんて、眺めているとちゃんとした発音が知りたくなってくる。こんな風に異国の文化に触れるのも、ちょっと刺激的で楽しい。

世界のどこへでも走っていける信頼感

 夢中で走っていると、通りかかったのは小さな漁港の真鶴港だった。海とともに暮らす人たちの昔ながらの営みが垣間見られるその場所へ、私は吸い込まれるようにウルスのノーズを向けた。エンジンを止めると、全身に静かさが染みわたる気配を感じる。それはウルスがくれた、極上の「動」を存分に堪能したからこそ感じられる贅沢だ。

真鶴港でいただいた地魚を使った刺身定食や塩焼き定食。美味しい食事をいただく至福のときをウルスが一層引き立ててくれたのでした

 そして、普段なら見過ごしていただろう、この景色と出会えたのも、ウルスが心を潤してくれたからこそ。ウルスとなら、世界のどこへでも走っていける。そんな信頼感が短時間で芽生えるクルマというのは、そうそうあるものではない。家族とともに乗るクルマだからこそ、そんな信頼感はとても大切な要素だ。

 ここに家族が一緒だったならば、どんな時間が過ごせただろうと想像せずにはいられない。幸い、後席にはISO-FIXでチャイルドシートの装着も可能だし、ラゲッジスペースは最大1596Lの大容量。1050mmの長い荷物も積み込めるから、この冬にスキーデビューを目論んでいる娘を連れて、雪山へ行くのも楽しそうだ。帰り道には、先進の運転支援システム「ADAS」がサポートしてくれるのも頼もしい。

4座仕様のラゲッジスペース容量は574Lで、後席を倒すことで1596Lまで拡大できる

 こうしてウルスを知った今、もう「ランボルギーニは縁遠い」なんて諦める必要はない。ファミリーはもちろん、女性にも扱いやすい優しい猛牛に人生をエスコートしてもらうなんて、それはとびきりの幸せに違いない。