トピック
ブースもクルマもみんなで考えて作ったから心底楽しめた! 東京オートサロンに対するホンダアクセスの取り組みを振り返る
- 提供:
- 株式会社ホンダアクセス
2019年3月20日 00:00
- 2019年1月11日~13日 開催
カスタムカーの祭典である東京オートサロンは、チューニングショップ、カスタムショップ、パーツメーカー、そして自動車メーカーがそれぞれの「クルマ好きである気持ち」を技術に換えて、その技を注ぎ込んだ自慢のクルマやアイテムを展示する場である。
そんな東京オートサロンに2019年もブースを構えたのがホンダアクセス。ホンダアクセスはホンダ車用の純正アクセサリーを開発、販売するメーカーだが、ホンダ車を購入したユーザーの満足度を追求するもの作りを長年に渡り続けてきた企画力や技術力を生かして、近年では「Modulo X」シリーズのコンプリートカーや「S660」をベースにしたカスタム車「S660 Neo Classic」などを作り出している。ホンダもとてもいいクルマを作るメーカーだが、ホンダアクセスは「面白いことをするほうのホンダ」と言える、クルマ好きにとって注目すべき存在でもある。
クルマ好きで「楽しみ上手な家族の家」をイメージしたホンダアクセスブース
東京オートサロンの会場である幕張メッセは通路が上階にあるので、展示ホールへ入ると会場内を俯瞰で見ることができるが、ここで目に付くのが来場者にブースの位置を分かりやすくするため上げている大きなバルーンだ。
このバルーンも各社、色や形など凝ったものが多いのだが、ホンダアクセスブースが上げていたのが白地に黒文字で「オープンハウス 開催!」と書かれた風変わりなバルーンだった。そのバルーンを目印に人混みの中を進んでいくと見えてくるのは「楽しみ上手な家族の家」をイメージした作りのホンダアクセスブースだ。
家というだけに正面には門があり、奥には住居をイメージする建屋がある。そして門から建屋までは板張りの通路があり、玄関前は展示フロアより高くなったウッドデッキとなっている。そして通路の両脇にはこの家の住人が乗るそれぞれの生活シーンにマッチしたホンダ車が置かれている。
このブースもホンダアクセスの従業員チームがデザインしたもので「楽しみ上手な家族の家」というテーマに沿って家族構成なども詳細に設定。その設定を元に展示スペースのセットを考えている。
そして何より、ブースを訪れた人が展示車を見てまわりやすい配置にして、さらにフロアより高いウッドデッキを設けることでちょっと変わった角度からも展示車を見てもらえるようにしている。
東京オートサロンには数多くのブースが出ているが、ブースの作りやアイデアを取り上げる賞があれば、確実に上位を獲っていると言っていいほどよくできたブースだった。このことは現地に行かれた方ならうなずいてくれるはずだ。
東京国際カスタムカーコンテスト 2019のコンセプトカー部門で優秀賞を受賞した「Modulo Neo Classic Racer」
では、展示車を順に紹介していこう。まずは「Modulo Neo Classic Racer」だ。このクルマは2016年の東京オートサロンで「東京国際カスタムカーコンテスト 2016」のグランプリを獲得したS660 Neo Classicの進化バージョン。製作したのはホンダアクセスのデザイン部門に所属する従業員チームで、リーダーは山田真司氏。ちなみに山田氏はS660 Neo Classicのデザインを行なった人物でもある
今回の東京オートサロンでは、受賞をきっかけに市販化までこぎ着けることができたことに対するお礼の意味を込め、あらためてS660 Neo Classicを展示しようという案もあったが、せっかくの機会なので応援してくれた多くの声に対し、S660 Neo Classicを超える魅力あるクルマを作ることで「感謝を示そう」という考えからModulo Neo Classic Racerは作られた。そしてなんと! 2016年のグランプリに続いて今回も東京国際カスタムカーコンテスト 2019のコンセプトカー部門で優秀賞を受賞するという快挙を成し遂げた。
お礼のクルマが再び大勢の人に認められるという格別のうれしさを味わった山田氏からは「S660 Neo Classicの世界観を広げたいという思いもあって作ったクルマでした。それが皆さんから高い評価をいただいたことがとてもうれしいです。チームには昨年入社した若手もいますが、彼らにもいい刺激になったと思います」というコメントをもらえた。そして「皆さん、本当にクルマが好きなようで、細かい作り込みの部分にも気が付いてもらえれて、それもうれしかったです」と、ブースで出会った多くの人の印象を語った。
Modulo Neo Classic Racerの初期デザインは1960年代レースカーのテイストを取り入れているが、全長や全幅のバランス、空力面の造形に関してはModuloのエンジニアからの指摘を元にブラッシュアップしていった。そしてデザイン的に及第点が出た後にテスト用パーツを製作。それを実車のS660 Neo Classicに装着してサーキットでの実走テストを行なっている。
こうしてできたのがショーモデルであるModulo Neo Classic Racer。フロントに当たる風をきれいに流すスポイラー一体型のバンパーを付け、ルーフにはハードトップを装着。そしてリアのエンジンフードも風の流れを考えて段差のない形状に作り替えた。
リアスポイラーはフロントとの空力バランスを取るため大型化されているが、初期デザインでは全体のバランスに対してリアスポイラーが大き過ぎるイメージになった。そこで山田氏はリアのブリスターフェンダーを後方に伸ばすことで全長を延長。これでリアスポイラーの位置と全体のバランスを修正した。
ちなみにリアフェンダー延長とオーバーフェンダー化によって軽自動車の規格を超えているが、今回はサーキットマシンとして製作しているので規格内に収めなければいけないという考えはなかったと言うことだった。
Modulo Neo Classic Racerのデザインについて山田氏は「性能的に必要とされるところを合わせていっただけです」と言うが、そこはS660 Neo Classicを生み出したスゴ腕デザイナーだけに、各部にデザイナーの力量が伺える造形が組み込まれていた。
フロントまわりでは旧車のレーシングカーに見られたヘッドライト飛散防止用テーピングをモチーフにしたグリル一体型のカバーを製作。グリルのセンターには革ベルトを貼り、そこに「Neo Classic Racer」のロゴを入れた。
また、スポイラーにはスチールバンパーのイメージとして両端にメッキ加飾パーツを追加するなど、空力を重視していながら当初のコンセプトに沿った“旧車レーサー的ルックス”を作るための小技も盛りこんでいる。
そしてボディカラーは当初、ホンダっぽく白+赤も考えたとのことだが、今回は旧車らしいメタル感があるメタリックシルバーを調色してそれを塗装している。この塗料はメタリックの粒子が粗いので光の当たり加減により明暗がハッキリと出て、樹脂性のフェンダーもスチールの叩き出しっぽい見え方になっていた。
外観上の特徴であるオーバーフェンダーは前後ともModulo Neo Classic Racer用に製作。現代のレースマシン用オーバーフェンダーはタイヤをスッポリと収める形状になっているが、旧車のオーバーフェンダーは頂点がいちばん張り出していて、下に行くにつれて絞る形状になっているものが多い。そこでModulo Neo Classic Racerも下部を絞るような形状にしているので、フェンダー下部からタイヤのトレッド面がチラりと見えるようにしていた。こんな見え方まで考えているのでなおさらカッコいいのだ。
インテリアに関しては少しおとなしめ。インパネやメーター類まで作り替えるのは「やりすぎになる」ということであまり手を加えていないのだ。それでもMOMO製のステアリングやブリッド製シート、シュロス製のシートベルト、トラスト製の追加メーターを組み、助手席は取り外している。そしてサイトウロールケージ製のロールケージを組むという作り。また、ダッシュボードとドアトリムにはエクステリアと同じイメージでラインを盛り込むことでレーシーなイメージとしている。
なお、東京オートサロン 2019が終わった後は、各部の手直しを施してからサーキット走行を行ないたいということだった。
“VANカルチャー”をイメージした「TRIP VAN」
ホンダアクセスブースには全部で5台のコンセプトカーが展示されたが、これらはすべて社内で行なわれた東京オートサロン出展車を選ぶコンペで選ばれた優秀作のアイデアを具現化したもの。それだけに、カスタムカーコンテストで優秀賞を獲得したModulo Neo Classic Racer同様、魅力あるクルマが揃っているのがこのブース最大のポイントだ。
そこでここからは他の展示車を順番に紹介していこう。まずは軽商用車「N-VAN」をベースにした「TRIP VAN」。サーフィンが趣味というデザイナーの渡邊岳洋氏が主体になって製作したクルマで、ヒントになったのは海外で出会ったサーファーが実践していた“VANカルチャー”という生活スタイル。短期間でしっかりと仕事をしてお金を貯めた後、いい波を求めて旅を続ける暮らしのことで、その生活拠点がバンタイプのクルマであることからそう呼ばれるという。
そんな生活スタイルをイメージさせるクルマを作ってみたいという気持ちを持っていたところにデビューしたのがN-VANだった。若い人にも購入しやすく、日本の生活習慣にも合う軽自動車であることに直感的に「いいな」と感じ、そして「若い人が日本中を旅することができるバンを作りたい」ということからTRIP VANのデザインが開始されたのだった。
ブースに展示されたTRIP VANはアウトドア感たっぷりのスタイルに仕上がっているが、これは見せるためのデザインではない。機能性を感じさせ、そこから受ける道具っぽいカッコよさを求めたものとなっている。
その点を強く感じさせるのが車体の黒い部分。これは通常の塗料ではなく、耐衝撃性、耐摩耗性、防錆、防蝕性に優れていて、戦車や装甲車の防弾パネルにも使われる「LINE X」という特殊なコーティングである。
このコーティングは外板パーツに塗布することで傷が付きにくくなるどころか、塗布したパネル自体の強度も上げてしまう効果がある。そのためボディ下側に塗布すれば、少しくらいぶつけても平気なくらいの頑丈さが得られるのだ。
また、TRIP VANはリアゲートにラダーを追加しているのだが、この部分は鉄板の肉厚が薄いため、純正状態で登り降りするとラダーを支える部分が凹んでしまう。そこでLINE Xを塗布してリアゲートの強度を高めているのだ。
ホントに?と思うところかもしれないが、実際にブースの説明員が何度も登り降りしていたがリアゲートは少しも凹まず、ラダーに足を掛けるときにつま先でリアゲートを蹴ってしまうことも多かったが、それでもLINE Xの塗布面は傷1つ付かない。そんなハードさを与えるLINE Xを採用したことはTRIP VANの大きな特徴であり、道具的なカッコよさを作り出すキーにもなっている。ここだけを見ても、TRIP VANが見かけだけのカスタムカーではないことをしっかりと感じられた。
色と素材変更だけで表現する“女性ならではのカスタム術”
続いて紹介するのは「FIT Elegant Color Collection」。製作の中心になったのは開発部の斉藤愛歌さん、デザイナーの武井ゆりかさん、商品企画部の藤巻愛実さんという3人の女性。このメンバーは普段からチームを組んでいて、主に女性に向けたインテリアアクセサリーなどを企画、開発している。2018年の東京オートサロンにも参加していて、その時は世界的な人気キャラクターである「バーバパパ」とコラボした「N-BOX《BABAPAPA》COLLECTION」を出展して好評を得た。後にこのアイテムは純正アクセサリーとして発売されている。
ベースになっているのは2018年7月に発売された「FIT Modulo style」だが、写真を見ても分かるようにエアロパーツを付けたり車高を落としたりといったカスタムはしていない。ホイールも純正用品だ。では、どんな手段でカスタムカーに仕立てているかというと、色替えである。
FIT Elegant Color Collectionは20歳後半の働く女性が乗ることをイメージしてデザインされている。20歳後半となるれば会社に入って数年の経験を積んでいるし、後輩もできているので大人の女性として「キチンとしている」ことを意識するが、同時にかわいさも持っていたいと思う……。そんなことを考える女性が通勤で使うクルマなら「こんな風に」と仕上げられていて、そのポイントになるのはインテリア。
チームが選んだのは「紺色」。この色は今まさに20~30歳代の女性に人気がある色である。そしてカジュアルすぎず、落ち着きのあるところが何よりコンセプトに合っていた。その紺色の生地でシート表皮を張り替えているが、生地の質感や触感、発色のよさにも気を配り、数多くの内装用生地のサンプルの中からスエードの人工皮革を選んで使用した。
実際、このチョイスはブースを訪れた女性には好評で、色合いだけでなくスエードならではの手触りのよさからシートを撫でる光景をよく見かけた。そんな紺色のスエードを使うことで落ち着いた女性らしさを演出しているが、紺色だけでは大人っぽさが際立ってしまうということから、ステッチにはボルドーピンクの糸を合わせている。この色は化粧品やネイルの色見本から探し出したもので、ボルドーピンクを差し色で使うことで「大人のかわいらしさ」を表現しているという。
エクステリアは色替えのみ。ボディカラーは「プラチナホワイト・パール」で、ルーフを深みのある「キャンディブルー」で塗り分ける。ホイールも純正用品だが、ここにもキャンディブルーを使って色のバランスを取っている。なお、リアバンパーは本来は下の部分が黒い塗装になるのだが、空力パーツっぽい見え方はこのクルマには似合わないということからボディと同じプラチナホワイト・パールに塗装されていた。
さらにグリルまわりには「目元のメイク」的な感覚でシャンパンゴールドの差し色を入れた。ここで使うゴールドも化粧品などを参考にしながら20色以上のサンプルを作って決めたもので、上品な発色になることに加えて、車体から離れた場所から見てもゴールドであることが分かる色合いにしている。
このように、シート表皮やステッチ、そしてゴールドの差し色など、色にこだわることでクルマを作り替えるカスタムを実践したのがFIT Elegant Color Collectionなのだ。
現実味のあるクルマ作りはリサーチの成果
次に紹介するのは「シビック ハッチバック」をベースにした「CIVIC VERSATILIST」だ。このクルマはデザイン部門の古川順一朗氏と清澤雄氏が手がけたものだが、他の展示車が製作側の思いを軸に作られているのに対して、こちらは市場の声を汲み上げて、それを元にカスタムを行なっているのが特徴だ。
このチームはまず、シビックが属するカテゴリーの市場調査を行なった。その調査では「立体駐車場に入れる車高のSUVが人気」ということが掴めた。次に“都市型SUV”に乗るユーザーに集まってもらい、インタビューを実施。ここでは開発チームが思っていた以上に「走り」を大事にする声が多かったことや、近年増えている豪雨や大雪などに遭遇してもSUVなら頼りになるという意識を持っていること、それに自分のクルマ選びが時代と調和しているかを気に掛けている人が多いという結果が掴めた。
古川氏と清澤氏が次に行なったのは、シビック ハッチバックで実際にあちこちをドライブして色んなシーンを体験することだった。そして見えてきたのが「シーンを選ばず、肩肘を張らずに気軽に出かけられる」という価値観だった。シビックが属するカテゴリーではスポーティなクルマだけでなく、都会も似合うしなやかさを持つSUVが求められていたのだ。そしてこれを「都会も自然も涼しい顔して難なくこなす垢抜けSUV」と定義してクルマ作りを開始した。
メインのデザイン作業は古川氏が担当したが、デザインにおいて難しかったのはフロントフェイスという。というのも、シビックはバンパーの開口部が多いので、後からデザイン的に何かを付け足すのが難しいのだ。
そこで古川氏が取った方法は、付け足すのではなく開口部を減らす方向のデザインである。必要な開口部を残してダクトを塞いでいくと、スポーティなデザインから上品な顔つきになっていった。ただ、それだけではSUVらしさがないので、古川氏はここでエアロパーツとプロテクターを融合させたイメージのボディパーツを生み出した。それがグレーに塗られている部分だ。
さて、そのエアロ+プロテクターだが、フロントではアンダーガード的な強い印象を、バンパー下部に設けた「山型の造形」で表現。フェンダーアーチモールも実にSUVらしいアイテムだが、アーチ後端をあえて開くデザインとした。これはタイヤハウスに巻き込んだ走行風が抜ける風の通路的な意味を持っている。まさにプロテクターとエアロの融合といった作りだ。そしてサイド、リアへとつながるすべてが「ちょうどいいスポーティさと力強さ」を感じさせるデザインとなっている。
このようにユーザーの声を聞いて、実際にクルマを使って想定するシーンを体験し、それからデザインしているだけに、非常に現実味のある仕上がりになっているのがCIVIC VERSATILISTなのである。
家族が楽しめるミニバンを作る
最後に紹介するのは「ステップワゴン」をベースにした「Well Concept」。製作はデザイナーの隈泰行氏が中心になって行なった。
自らも子育て真っ最中という隈氏が作りたかったのが「家族が楽しめるミニバン」というもので、隈氏の印象では今どきのミニバンは豪華で凝った作りになっているけど、それはいわゆる高級セダン的な装備のよさであり、家族で乗るという要素に関しては外れたものであった。また、最近のミニバンは“顔つきがシャープで強い”ところにも違和感を持っていたという。
では、Well Conceptの紹介だが、まずは大きく印象を変えたフロントまわりについて。ここでモチーフにしたのが“赤ちゃんの顔”である。言われてみると広いおでこにまん丸の目、薄く開いた口と赤ちゃんっぽく、ベースになったステップワゴンのシャープな顔とはまるで印象が違っている。
ただ、この顔を作るのにもデザイン的な技が盛りこまれていて、とくにおでこにあたるボンネットの造形は凝っている。
このクルマではグリルの位置を下げ、なおかつ面積を減らしているのでボンネットの前面がさらに広く見えるので、そのままではヘッドライトの位置などをいくら調整しても“赤ちゃん顔”には見えない。それどころかロボット的な顔になってしまう。そこで隈氏はボンネット前方の折り込みを2段階とすることで不自然な張り出し感を消し、丸みを帯びさせることでおでこっぽさを演出したのだ。
そして小振りで丸型のLEDヘッドライトを組み合わせた。グリルの幅や置く位置もライトとのバランスを見ながら決めている。そしてグリルの通気口はヘッドライトと同じ丸型を使うことで表情の一体感を出した。また、この顔つきはどことなく昔のホンダ車の「T360」や2代目シビックといった旧車を思い起こさせるものとなっているので、クルマが好きなお父さんにとって「自らも気に入ることができる顔」になっているのもポイントだ。
Well Conceptをデザインする前に、隈氏は実際に子育てをしている世代の人にミニバンの使い方をリサーチ。その結果、父親が運転し、母親と子供は2列目シートに乗るというケースが多く、助手席はほぼ荷物置き場となっている状況が見えたのだ。
そこでWell Conceptでは思い切って助手席をなくし、そこに子供のおむつ交換や着替えをさせることができ、収納スペースにもなるユーティリティボックスを設けた。ちなみに助手席がないので2列目シートからの前方視界もよくなるし、圧迫感も大幅に減って居心地が向上している。
加えて2列目シートの座面には、クッション部を引き起こすことで1段高めのジュニアシートになるギミックも盛りこまれていた。これは座りやすいだけでなく、子供の着座位置を上げることで身体の小さい子供がシートベルトを装着した際、ベルトが首に当たることを防ぐ役目もあるのだ。
さらに2列目シートは360度回転する機能を持っており、目的地に着いてから3列目シートとの対座レイアウトを利用できるようにした。なお、3列目シートをフロア下に収納すれば足下にかなり広いスペースが生まれるので、車内で伸び伸びと過ごすこともできる仕掛けを盛りこんでいる。
そして最大の魅力がルーフに追加されたキャンバストップだ。隈氏の言葉では「家族でドライブに行っているのに、子供はモニターで映像ソフトを見ていたり、ゲーム機で遊んでいたりするケースは多いのですが、せっかく外に来ているのだからクルマから見える風景や土地ごとの空気感なんかを感じてほしいのです。そんなところから、直接外気が入り、ガラスなどを通さず外が見えるキャンバストップを装着しました」とのこと。この点はブースに来た人にも説明したとのことだが、この考えは多く人から賛同をもらったという。そして隈氏は最後に「東京オートサロンに出展できたこと、そして皆さんに自分の思いを詰め込んだクルマを見てもらえたことがとてもうれしいです」と語った。
というのが東京オートサロン 2019に出展したホンダアクセスブースの全容。現在は自動車メーカー系のブースも数多く出展しているが、このようなスタンスでブースを構えていたのはホンダアクセスだけである。それどころかベース車を尊重しつつ、個性的に作り替えるというクルマ作りのレベルの高さは東京オートサロン全体で見ても特筆モノだろう。
冒頭でホンダアクセスのことを「面白いことをするほうのホンダ」と書いたが、ここまで読んでいただければおそらく納得していただけると思う。Car Watchではホンダアクセスを取り上げることが多いが、これだけ面白い会社なのでそれは当然のことでもあるのだ。