トピック
土屋圭市氏とホンダアクセス福田正剛氏の真剣なクルマ作りの話に引き込まれる「ホンダ Modulo 雪上体感試乗会」Modulo X開発トークショー
土屋氏がドライブする「S660 Modulo X」雪上同乗試乗も
- 提供:
- 株式会社ホンダアクセス
2019年3月11日 00:00
クルマの挙動が分かりやすい雪道での試乗を行なうことで、「Modulo X(モデューロ エックス)」と「Modulo(モデューロ)」のアイテムを装着したModulo仕様車の上質でしなやかな走りを体感してもらうことを目的とした「ホンダ Modulo 雪上体感試乗会」がホンダアクセスの主催で開催された。
メイン会場は裏磐梯レイクリゾートで、試乗は雪が降る天候の中の周辺道路(道路使用許可済の一般道)と、レジャー施設である裏磐梯3Dワールドの広い駐車場を利用した特設コースを使用。
試乗用に用意されたのは「ステップワゴン ハイブリッド Modulo X」と「ヴェゼル ハイブリッド Z」にModulo製エクステリアパーツやサスペンションを組み込んだModulo仕様車。さらに、比較用の標準車として「ステップワゴン スパーダ ハイブリッド」と「ヴェゼル ハイブリッド」が用意され、参加者は標準車、Modulo車の順で乗り継ぎ、ベース車との違いやModulo車の特徴を体感した。なお、この試乗会の模様は別記事で紹介している。
標準車とModulo X、Modulo仕様車の比較試乗が一般道と特設コースで体験できるという充実した内容の試乗会は、午前と午後に分かれて計16組が参加。そして参加者一同が集まった裏磐梯レイクリゾートでの昼食時間を利用して、もう1つの目玉イベントである「Modulo開発トークショー」が開催された。
Modulo開発トークショーの登壇者を紹介しよう。まずは、ホンダアクセス Modulo開発統括の福田正剛氏。そして、Modulo開発アドバイザーである土屋圭市氏の2名だ。また、今回のModulo開発トークショーでは、モータースポーツを中心に活動するフリーアナウンサーのピエール北川氏が司会を担当した。
最初に登場したのはMCのピエール北川氏。サーキットではおなじみの方だが、Modulo開発トークショーでは初登場だ。そこでまずは自己紹介。登場したときは「誰だろう?」と見ていた参加者もその声を聞き、そして自己紹介があると「あぁ!」という感じでピエール北川氏を認識。ステージへの注目度がグッと高まった。そしてピエール北川氏の紹介で会場に土屋氏と福田氏の両名が現れると大きな拍手が湧いた。
登壇者全員がステージ上に用意されたイスに座ったところで、ピエール北川氏は午前中に自身が体験していたModulo Xへ試乗のことを切り出した。ピエール北川氏はプライベートでステップワゴンに乗っているとのことだが、Modulo Xに乗ったところ「こんなに違うのか」と心奪われたという。さらに土屋氏の助手席で「S660 Modulo X」の走りも体験したそうで、これによりModulo Xのクルマ作りに改めて興味を持ったとのこと。
ピエール北川氏はまず、Modulo Xの開発において土屋氏と福田氏の役割について質問。その問いに答えたのは福田氏で「Modulo XもModuloのサスペンションキットなど、走りの部分についてはすべて自分が見ています。開発テストには立ち会っていてエンジニアに指示を出したりします。土屋さんにもこちらから要望を出すこともありますよ」と言うと、土屋氏は「僕は口うるさいの役の人です(笑)。言いたいことを言わせてもらっていますよ。でも、福田さんをはじめ開発スタッフは厳しいことを言っても真剣に聞いてくれますし、意見をちゃんと生かしてくれます。すごくやりがいのある現場ですよ」と語る。
さらに「北海道の鷹栖にあるテストコースで開発を行なっているのですが、福田さんはテスト中にもレポートを作成していて、それを現地の全員にメールで送って現状の状況を共有させます。テストには開発部隊だけでなくデザイン部門の従業員が来ることもありますが、その人たちにも同じ情報を送り、ミーティングにも出席させます。そして、テストコースで試乗までさせるんです。こんなことやるメーカーはほかにないですよ」と付け加えた。
土屋氏の発言に続けて福田氏は「デザイナーというと、デザイン室でカッコよくデザイン作業をしているものというイメージもあるでしょう。でも、ウチの会社のデザイナーは違います。自分たちがデザインしたエアロパーツが実際に走りにどう影響するかを、テストコースを走って体感してもらっています。テストコースを走るには社内ライセンスが必要なんですが、当然それも取ってもらっています」と語った。
そして「もちろん危ないことまではさせませんが、実際に走ってみることは大事だと思ってます。それに、開発ドライバーや土屋さんが精一杯走っているところも見てもらいます。また、クルマが走っていないときにはコースを歩いてもらっています。すると“こんなところをあの速度で走るのか……”とか、デザイン室にいては知ることができなかった現場の空気感を分かってもらえます。すると、僕のところに来て“もう1回、気を引き締め直します”と言ってくれるんです」と話した。
“感性”のクルマ作りを行なうModulo開発陣
そんなテストを経て市販されているのがModulo Xシリーズなので、開発のときの走り込みは多い。土屋氏も「ほとんど走っていますよ。コースにクルマが出てないなと思うと次にテストする項目の準備で作業していて、終わるとまた走行です」と言う。
それを聞いたピエール北川氏は素朴な疑問として「今の時代はコンピュータを使っていろいろシミュレーションで予測もできると思いますが?」と問うと、福田氏は「そうですね。シミュレーションの技術を使えばある程度は予測できますね。実際に各自動車メーカーも活用しています。それに、今はテストデータを通信で離れた場所にいるスタッフに送ることだってできます。そんな時代なのになぜ現場にみんなを集めているのか? それは数字だけで判断するのではなく、実際に体験し、そして結果をみんなで話し合いながら創っていくことに意味があるという思いからやっていることなんですよ」と答えた。
さらに「Moduloはドライバーが感じる感性の部分を大事にしています。話が少し戻りますが、現地では設計者もクルマに乗ってもらいます。彼らの書く設計図で例えばどこかの線を太く書くか細く書くかで走りは変わってくるので、その違いを感じることでいい方向にしていこうという気持ちも強まります。そんな積み重ねが“感性”のModuloを作りあげているんです」と語った。
かなり深みのある話に会場がシーンとなる。そこに土屋氏が「こんな会社ないですよ。1台のクルマを作るのに2年も3年もかけさせてくれるなんて。でも、それだけ時間をもらえるので、なんでも試せるんですよ。それも、いいと思うことだけじゃないですよ。これはダメだろうと思うことも試さずに“ダメ”と決めつけるんじゃなくて、ちゃんとテストして納得したうえで次に進むという感じでやっています」と語ると、会場には納得と緊張感が混じったような感嘆の声が湧いた。
このような状況で作っているModulo Xだが、こだわり尽くすだけに開発当初はかなりハードな味つけになることもあるという。これについて土屋氏は「ステップワゴンでもとことんまでやるから、最初はステップワゴンのタイプRでも作るの? と言いたいくらいのものになってるんですよ。運転するお父さんは楽しいかもしれないけど2列目、3列目は固くて乗ってられないよというくらい」と裏話的なことを話した。でも、続けて「いくところまでいき、そこから戻していくのもModulo Xの開発の特徴ですね」と言う。
そして開発チームが「ほぼ仕上がった」と思う段階で改めて土屋氏をテストコースに呼んで試乗してもらうそうだが、ステップワゴンやフリードなど後席にも人が乗るクルマでは、土屋氏はまず後席に乗るという。
この理由についてピエール北川氏が問うと「ファミリカーなんだからなにより家族が乗る後席が大切でしょ」とひと言。だから土屋氏とModulo X開発チームはミニバンなら2列目、3列目での乗り味をまず完成させることに務める。そして、満足できるものになったら土屋氏はようやくステアリングを握り「しなやかであり上質」と表現されるModulo Xの走りの味つけを仕上げていくのだ。
こうした話を聞くとあの土屋氏を「開発ドライバー」ではなく「開発アドバイザー」と呼ぶことが理解できた。つまり、乗って報告するだけでなく一緒に感じて考えて作る役目だったのだ。
土屋氏のことを信頼する開発陣と、その開発陣を信頼する土屋氏のいい関係によって生み出されるのがModulo Xで、今回の話を聞くと「Modulo Xは本当に人が作っていくクルマ」ということが分かる。これは会場にいたすべての人もそう感じたに違いない。
このように作り手の存在が感じられるクルマには特別な魅力があり、クルマ好きと言われる人はそれをキャッチする力がある。だからこそ「試乗会」というありふれたイベントながら「Modulo X」というひと言に大勢の人が反応し応募をしてくれたのだと思う。
そんなことも考えさせてくれたトークショーは会場の参加者とのQ&Aなどを行ないつつ、いい雰囲気で終了。そして最後は特設コースにて土屋氏がドライブする「S660 Modulo X」の同乗走行というスペシャルメニューを行なった。