ホンダ、F1撤退を決定
チームは売却を検討。2009年の日本GP開催には影響なし

(右から)本田技研工業株式会社の福井威夫取締役社長と大島裕志常務執行役員
12月5日発表



  本田技研工業は12月5日、2008年をもってF1から撤退すると発表した。同日に本社で記者会見を実施し、福井威夫取締役社長と大島裕志常務執行役員が出席した。

  ホンダは、1964年~1968年の第1期、1983年~1992年の第2期に続いて、第3期は2000年より「B・A・R(当時のブリティッシュ・アメリカン・レーシング)」との共同開発でF1に参戦。その後、2006年にはB・A・Rの株式100%を取得し「Honda Racing F1 Team」として参戦し、2005年カナダGPではポールポジションを、2006年のハンガリーGPでは優勝を記録していた。

  今回のF1撤退について、「サブプライム問題に端を発した金融危機や実体経済の急速な後退などによりビジネス環境は急速に悪化。この市場環境の悪化に対し、迅速かつフレキシブルに対応をしてきたが、将来への投資も含めた経営資源の効率的な再配分が必要との認識から、F1からの撤退を決定した」としている。F1撤退は昨日決定され、撤退への検討も直近に行われたと言う。福井氏によれば「11月に実施したバルセロナテストでは、撤退の話はまったくなかった」とのことだ。

  撤退について福井氏は「最高峰のF1できちんと結果を出すという目標に達しないままでの撤退は非常に悔しい。今でもF1への参戦は続けたいと個人的には思っているが、11月より急激に悪化した自動車産業の状況が許さなかった」と説明。F1ではFIAによってエンジンのワンメイク化などといったチームのコスト削減策が検討されているが、この点についても「それらが施行されたとしてもF1はF1であり勝つことが目標ではあるが、コスト削減策を大幅に超える状況悪化があった」とコメント。「これまで応援してくださったファンの声援に応えることなく撤退を決定することは大変困難を伴う決断で、ファンの皆様、F1関係者やチームエンジニア達には申し訳なく思っている」と謝意を示した。

  一方、「地球上の資源需給のバランスが大きく変化し、原油や原材料費が高い状況は、現在の経済状況が回復しても続くだろう。自動車産業も厳しい状況と認識し、今後発表予定の新型インサイトのような従来とは違った価値観の車作りが必要とされる新しい時代に入ったと思う」と前置きした上で、「8年間参戦した経験は、かかわった数百人のスタッフにとっては大きな財産。最先端で磨かれた技術を活用し、経済危機を上手くくぐり抜けて新しい時代に適合した製品を開発することで、3年~5年後には撤退はいい決断だったと評価されるようにしたい」とコメントした。

  また、第1期、第2期は撤退時は「休止」という文言を使用したが、第3期は「撤退」と表明したことについても、「ホンダのモータースポーツへの考え方は変わっていないが、F1に注いできた情熱や技術を新しいものに向けるべきだという大きな変化も含まれている」と説明した。なお、エンジンサプライヤーとしての参戦継続や、再参戦についての予定はなく「完全撤退で、将来は白紙」としている。

10月7日に「ウエルカムプラザ青山」で開催した、Honda Racing F1 TeamのF1日本GP直前記者会見の模様
  Honda Racing F1 Teamおよびエンジンの供給を行ってきたHonda Racing Development Ltd.の今後についてはチーム売却の可能性も含めて検討するとしており、現段階で決定している事はないという。大島氏によれば「チームが存続可能であれば、低い金額で売却してもいいと思っているが、来年のシーズンを考えたら早急に決定しなくてはいけない」との方針を示しており、今後、スタッフの代表と英国の法律に基づいて交渉や検討を進めて行くとしている。

  チームへの通知は、代表のロス・ブラウンやマネージング・ディレクターのニック・フライには行っており、福井氏によれば「彼らも驚いていたが、撤退にまつわる状況を話して理解してもらった。今後は自分たちがリーダーシップをもってチームを引っ張ると言ってくれた」とのこと。レギュラードライバーであるジェンソン・バトンにも撤退決定は通達されているが、バトンとは来期の契約をすでに締結しており、今後は解消の手続きを行い、その際にはそれなりのコストが発生することも認識していると言う。なお、F1撤退に伴うコストは非公表だが、決算年度に与える影響はそれほど大きくないとしている。

  2009年に鈴鹿サーキットで開催される日本GP開催については、撤退の影響はなく来シーズンに向けての改修工事も順調に進んでいるほか、今後の富士スピードウェイとの隔年開催についても変更はないとしている。F1以外でのモータースポーツ活動では、MotoGP(ロードレース世界選手権)およびインディカー・シリーズへの参戦は継続。現在展開している若手ドライバー育成プログラムも継続するとしているが、このほかのモータースポーツ活動についてはこれから検討するとしている。このほか、F1活動に携わった栃木研究所のスタッフ約400名については全員を新技術の開発リソースに振り分けるとしているほか、モータースポーツ以外では市販車ラインナップの見直しも検討していると言う

  第3期のホンダの活動について、福井氏は「2006年ハンガリーGPの優勝はもちろんうれしかったが、2005年カナダGPでポールポジションを獲りながらも勝てなかった状況は今でも印象に残っている」と語った。また、2005年サンマリノGPで重量規定違反による失格と2レース出場停止処分を受けたことについても触れ、「今でも違反はなかったと思っており、出場停止となって勢いを削がれたことが残念だった」とコメント。第3期全体については「第2期からの中断で技術が遅れて、追い付く時間が必要だった。タイトル争いに加われなかったことは残念で、毎年対策を施しても結果が出ず、理由が掴めていない段階での撤退だから、多分我々も理由が分からないだろう」と総括した。

 

URL
本田技研工業株式会社
http://www.honda.co.jp/
ニュースリリース
http://www.honda.co.jp/news/2008/c081205.html

(編集部:大久保有規彦)
2008年12月5日