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SBドライブ、無人タクシーを疑似体験できる「ココロドライブ」実験風景公開

往復15分~20分を自動走行

2016年10月27日 実施

 ソフトバンクグループのSBドライブは10月27日、愛知県内で実施している自動走行の社会受容性実証の実験風景を報道関係者向けに公開した。

 SBドライブでは、アイサンテクノロジーが愛知県から事業委託されている自動走行の社会受容性実証の一部を担当しており、9月からアイサンテクノロジーが愛知県内で実施している自動走行の実証実験内でSBドライブが開発したアプリケーション「cocoro Drive(ココロドライブ)」を運用。関係者や一般から募った参加者に自動走行システムと合わせて体感してもらい、感想や要望などをヒアリングしている。

 また、アイサンテクノロジーは同社が手がける「モービル マッピング システム(MMS)」で作成した「高精度3次元地図」をZMPの「RoboCar MiniVan」に載せ、高精度3次元地図を活用した自動走行を実証実験している。

ZMPの「RoboCar MiniVan」に、アイサンテクノロジーの「高精度3次元地図」、SBドライブの「cocoro Drive(ココロドライブ)」を搭載したテスト車両
ルーフ上のLIDAR(ライダー)と車内の助手席前方に設置したデュアルカメラで車両の周辺情報を認識する
アイサンテクノロジーによる自動走行の実証実験で使われたこの車両は、走行に関する制御をラゲッジスペースに置かれた2つのノートPCでまかなっている。左側がRoboCar MiniVanを実際に走行させるシステムとなり、右側ではアイサンテクノロジーの高精度3次元地図と、車両に設置されたライダーなどの情報を組み合わせて処理しているとのこと。また、右側のノートPCでは名古屋大学がオープンソースの自動運転ソフトウェアとして公開している「Autoware」が利用されている
車両から波紋のように広がっている赤いラインはライダーが検知した周辺の物体。これに、白黒写真のように詳細な高精度3次元地図がリンクしている。車線上のグリーンやブルーのラインは自動走行で走る予定の経路
交差点部分は横断歩道や右折専用レーンなどの情報も設定されている
車内に設定されたディスプレイには、一般的なカーナビ向けの地図(上段)と、デュアルカメラが撮影した情報を自動運転で利用するための高精度3次元地図を表示
自動走行する車両の試乗は、愛知県みよし市の市内にある公園を起点に、少し離れたところにある市民病院までの往復約15分~20分のコースで実施された
iPadの画面に表示されたココロドライブのアイコン

 自動走行車両の助手席ヘッドレストに固定されたiPadにインストールされたココロドライブは、ソフトバンクグループの「cocoro SB」が開発したAI技術「感情エンジン」を活用したアプリケーション。クラウド上の感情エンジンで乗員と会話して質問に答えたり、目的地までの所要時間や右左折前のアナウンスなどを行なう。

 試乗中に実施されたデモンストレーションでは、発話の内容をうまく認識できず対応できなかったり、使用時間が長くなってくるとログデータの蓄積で動作が不安定になるといったシーンもあったが、周辺情報についての問いかけに回答したり、右折レーンで減速しはじめたタイミングで“この信号で右折する”ことをアナウンスするなどの動作を体験できた。

ココロドライブを起動させた状態。中央の球体を模した表示が会話の内容に反応して変形したり色が変わったりして作動状態を示す
ココロドライブの返答内容は文字でも画面に表示される
乗員との対話ではない、ココロドライブが走行内容の説明としてアナウンスした情報は画面の上側に表示。通常の会話と混同して判別しにくくならないように狙った使い分けだが、体験した人から分かりにくいとの指摘もあり、変更することも検討しているとのこと

 短時間のデモではあったが、自動運転タクシーが実現した将来の車両運用について擬似的に体験できた。今回のデモではココロドライブをインストールしたiPadは独立した状態で運用されていたが、SBドライブの開発担当者によれば、先々には車両と接続して情報を利用し、障害物を発見して緊急ブレーキが作動するときに急制動をアナウンスするといったことも検討しているとのこと。SBドライブは2018年ごろに公道での実証実験をスタートさせ、そこから実用化を目指しており、今後もココロドライブの開発を続けていく予定となっている。

右折の前に右に曲がることをココロドライブがアナウンス。自動運転の車両では本来的に乗員は操作を行なわないが、大きく挙動が出ることを知らせることで乗員が身構えたり、飲み物をこぼしたりしないことを目的にアナウンスするようになっているとのこと。なお、今回の実証実験ではステアリング操作は車線に沿って走る場合のみに限定し、右左折などは運転席に座ったスタッフがステアリングを操作。自動走行のシステムを一時的にオーバーライドさせる運用になっている