開発者に聞く「ブーン ルミナス/パッソ セッテ」
徹底したコスト削減を行いつつ、商品性と利便性を確保

ブーン ルミナス(CX、アクアマイカメタリック)
12月25日発売
153万5000円~207万3000円(ブーン ルミナス)
149万円~203万3000円(パッソ セッテ)



  ダイハツ工業が12月25日に発売した「ブーン ルミナス」、トヨタ自動車がブーン ルミナスのOEM供給を受けて販売する「パッソ セッテ」は、3列シート7人乗りのコンパクトカーだ。ダイハツにとっては、軽1BOX「アトレー」をベースとした「アトレー7」以来の7人乗り車となり、トヨタにとっては最も低価格な7人乗り車となる製品だ。

  開発にあたっては、軽自動車からより上級の普通車に移行するユーザーのニーズに対応する製品としての企画から開始。この企画が、低価格な7人乗り車を必要としていたトヨタのニーズと一致したため、ダイハツとトヨタで販売を行うことになったと言う。デザインと商品企画についてはトヨタの意見が取り入れられたものの、設計・開発・生産などはダイハツが担当している。

  「最廉価クラスの3列シートコンパクトカー」をコンセプトに開発されたことから、エクステリアからインテリア、パワートレインに至るまでコスト削減が行われたと言う。プラットフォームは、ダイハツとトヨタが販売している「ブーン/パッソ」や「クー/bB」のものを流用。グレード構成も、エンジンやトランスミッションを同一とし、装備品をニーズに応じて変更するシンプルな構成としている。こうしたコスト削減を行うことで、価格をブーン ルミナスで153万5000円~207万3000円、パッソ セッテで149万円~203万3000円と低価格に設定している。

パッソ セッテ(G、マルーンブラウンマイカ)。ロゴや車名エンブレム以外は、ブーンル ミナスと同じエクステリアブーン ルミナス(CXエアロ、マルーンブラウンマイカ)。エアロパーツを装備したグレードで、エンジンなどのパワートレインはほかのグレードと同一パッソ セッテ(S、シルバーマイカメタリック)。ブーン ルミナスのCXエアロと同様に、エアロパーツを装備したグレード

リアサスペンションまわりの模様。スタビライザーが装備されている
  しかしながら、ダイハツ第2シャシー設計部の橋本健太郎氏によれば、サスペンションなどの足まわりは新設計だと言う。足まわりを新設計としたのは、ブーン/パッソからの重量増に対応するためのほか、操舵性の向上を図るため。ブーン/パッソと比較して、ブッシュ幅の拡大、タイヤ外径の拡大、高めのサスペンション圧の設定、サスペンション取り付け剛性の向上などが図られている。

  また、前後にブーン/パッソでは装備されていないスタビライザーを追加。スタビライザーと中間ビームを湾曲させた構造とし、旋回時にタイヤをトーイン方向に向くように設定したことから、横方向から加わる外部の力に対して強い、ロールのしにくい足まわりに仕上がったとのとのことだ。また、7人乗り車でありながら全高を1620mmと低めに抑えていることも、ロールの低減に貢献していると言う。

  こうした足まわりのセッティングは、「ファミリー層向けの車ではあるものの、ロール量を少なくして乗りやすくしたい」との考えから施されたもの。ホイールベースを2750mmと長く設定したことで直進安定性も向上しており、高速道路での遠出や山道も楽しめ、家族全員が快適に乗車できる車に仕上がったとしている。

  インテリアについても、クー/bBの部品を多く流用しているほか、インパネセンター下部のインパネセンターロアトレイのような複雑な加工を必要としない収納機能などを採用し、昨今の7人乗り車では多く見られる後席スライドドアではなくヒンジドアとすることで、コスト削減を図っている。

  ダイハツテクナーの丸尾昌弘氏によれば、「最廉価ではあるものの使い勝手や質感の低下は避けたい」として、インパネなどのシボ加工にダイハツ車では初採用となるヘアライン加工を取り入れることで質感の向上を図っている。また、ミュージックサーバー機能付きCDプレーヤーや、オプションの後席モニターとDVDプレーヤー、ワイヤレスヘッドホンから構成される「リヤエンターテイメントシステム」を用意することで商品性も向上。このほか、グレードに応じてシートカラーと表皮を3種類用意し、1列目シートもベンチシートとセパレートシートを選べるようにしたことで、低価格であってもユーザーの多様にニーズに応えられるようにしたと言う。

  また、「最廉価ではあるものの7人がきちんと乗車できる機能性を確保したい」との考えから、シートアレンジについてはより多く検討重ねたとのこと。特に3列目シートの居住性にはこだわっており、シートクッション素材や座面・背もたれのサイズの検討を初め、2列目シートで3列目乗員足元スペース確保のために、3人乗車ができるシートでありながら5:5の分割可倒式を採用したほか、3列目乗員足元を低床フロアとするなどして、3列シートでも大人が快適に乗車できるようになったとしている。

  後席スライドドアを採用しなかった点については、コスト削減のほかリアドア開口幅を広くすることも目的であったと言う。ヒンジドアを採用したために、リアドア開口幅を935mm確保でき3列目シートの乗降性が向上したとしている。

インテリア。ダッシュボードやドア内張にダイハツでは初採用のヘアライン加工のシボを設けて質感を向上させている
オプションのリヤエンターテイメントシステム。2~3列目用のリアモニターはDVDプレーヤーも搭載。ワイヤレスヘッドホン×2とリモコンも付属する「ムーヴ」と同型のカップホルダーや、レバー式のキーレススタートを採用することでコスト削減を図っている。レバー式のキーレススタートは、昨今では主流のボタン式よりもはるかに低コストだと言う
ブーン ルミナスのCXエアロ、およびパッソ セッテのSで採用しているダークブラウンインテリア。オプションのトヨタのカーナビ向けサービス「G-BOOK mX」対応HDDカーナビを装備しており、ステアリングスイッチもあわせて装備パッソ セッテのSの1列目シート。ブーン ルミナスの「CL」、パッソセッテのS、「S “C Package”」「X」、がセパレートシートを採用し、このほかはベンチシートとなる。セパレートシートはアームレストが非装備だが、フロアトレイを装備しているダークブラウンインテリアの2~3列目シート。2列目シートは「6:4分割可倒式では、構造上3列目シートの足元空間がなくなってしまう」とのことから5:5分割可倒式に。そのため、中央席のヘッドレストは右側シートに固定する特殊な構造となっている
リアドア開口部2列目シートを前進させるなど、シートアレンジ次第では7人がきちんと乗車できるスペースを確保できる3列目シート乗車時は、2列目シートをさらに前進させることで乗降性を向上

ブーン ルミナスの運転席。4速ATでありながらマニュアルモードを搭載しており「ファミリーカーだが、お父さんなど運転が好きな人も楽しめるよう訴求するため」とのこと
  ブーン ルミナス/パッソ セッテのエンジンは、クー/bBや「ビーゴ/ラッシュ」で採用した直列4気筒 DOHC 16バルブ 1.5リッターエンジン「3SZ-VE」を、トランスミッションは既存の4速ATを搭載している。ダイハツ電装開発部の井内張影氏によれば、ダイハツでは1.0リッター以上のエンジンに対応するCVTを開発しておらず、他メーカーからの購入ではコストが上昇するため、採用を見送ったとのことだ。

  しかしながら、中低速でより太いトルクがを得られるよう、エンジンや4速ATのギア比をチューニングし、ボディの軽量化も実施。装備をシンプルな構成とし、後席スライドドアを採用しなかったことからさらにボディの軽量化を図ることが可能となり、7人乗り車としては比較的軽量な1170kg~1240kgの車体重量を実現した。こうしたセッティングや車両特性から、CVT搭載車に匹敵する低燃費性を実現できたと言う。


URL
ダイハツ工業株式会社
http://www.daihatsu.co.jp/
トヨタ自動車株式会社
http://www.toyota.co.jp/
製品情報(ブーン ルミナス)
http://www.daihatsu.co.jp/lineup/boon_luminas/
製品情報(パッソ セッテ)
http://toyota.jp/passosette/
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【2008年12月25日】トヨタとダイハツ、新型コンパクトカー「パッソ セッテ」「ブーン ルミナス」
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20081225_38348.html
【2008年12月26日】写真で見る「ブーン ルミナス/パッソ セッテ」
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20081226_38313.html

(編集部:大久保有規彦)
2009年1月15日