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日産名車再生クラブ、2018年度の再生対象車は「サニー1200クーペ GX-5」のTSレース仕様車
11月下旬のニスモフェスティバルへ向けてスタートを切るキックオフイベントを開催
2018年5月28日 20:35
- 2018年5月26日 開催
日産自動車の開発部門である、日産テクニカルセンター内の従業員を中心としたクラブ「日産名車再生クラブ」では、日産自動車にとって歴史的な価値がある車両を集めた「日産ヘリテージコレクション」に収蔵されている車両から毎年1台を選び、現役当時の状態で動態保存するための作業を行なっている。その際、直す過程で当時の日産が行なっていたクルマ作りや技術的な工夫、考え方を学ぶこともクラブ活動においての大きな目的としている。そして完成した車両は「NISMOフェスティバル」にて展示とデモ走行を披露してきた。
これまで同クラブが手がけたクルマは、2006年のクラブ発足時の「240RS」から、2017年の「スカイライン 2000 GTS-R」のグループA仕様車までの12台となっている。
Car Watchでは日産名車再生クラブの活動について、2015年の「ダットサン・ベビィ」、2015年の「NISMO GT-R LM ルマン仕様」、2016年の「チェリー F-II クーペ GX-T」、そして、2017年のスカイライン 2000 GTS-Rを紹介している。
日産名車再生クラブは2018年の活動を開始するにあたり、5月26日に日産テクニカルセンターでクラブ員を対象にした「2018年度 再生クラブキックオフ式」を開催。その模様をメディアに公開した。
2018年度に同クラブが手がけるのは、1972年に製作された「B110 サニー 1200 クーペ GX-5 特殊ツーリングカー仕様(TSレース仕様)」で、選択理由は3つあった。
1つ目は「シンプルな構造であるB110を再生することで、車両の基本構造を学ぶこと」。次に「当時の若者に支持されていたB110の魅力を再確認すること」。そして「ツーリングカーレースで数々のチャンピオンになったポテンシャルを学ぶこと」だ。
今回選んだ車両は実際にレースに出ていたものではなく、1972年に発売された2ドアクーペ「1200 GX-5」のPRを兼ねて同年の東京モーターショーに出展された展示用のクルマだ。
とはいえ、当時の日産大森ワークスから発売されていたレース用パーツを組み込んでいる完全なレース仕様で、エンジン、サスペンションはもちろん、ボンネット、両ドア、トランクがFRP製で、フロントウィンドウ以外のガラスは全て軽量なアクリル製に変えてある。内装もシート、ステアリングなどを変更。ホイールも日産製のマグネシウムホイールが装着されていた。
また、展示用と言っても何度か走行した形跡があり、エンジンにはバルブ駆動用のプッシュロッド(A12はOHV)がオーバーレブでエンジンヘッドカバーに当たったような跡があるそうだ。その状況を見たクラブ員から「1万rpmくらい回していたのでは?」というコメントもあった。
貴重で人気があるクルマとはいえ、実戦経験がないレース仕様車では魅力に乏しいと思う人もいるだろうが、実車をじっくり見ることができた筆者としては、レースで結果を残してきたクルマより「資料」という点ではかなり価値があるという印象だ。
恐らくこのクルマは新車をベースに作られていて、しかも走行回数が少なく保管状態もいい。ゆえに車体全体の痛みが少ない。写真からも感じてもらえると思うが、ボディに張りがあるというか、角や面、線がパキっとしていて、古いクルマ独特の「ヤレ感」がない。レストアはしていないクルマなので、これは新車当時の「張りのある姿」である。
それに、痛みやすいレース用の内装パーツも程度がいいので、まるでタイムスリップしてきたような1台という印象。B110 サニーのレース仕様車でこのコンディションのクルマは残っていないだろう。B110 サニーのレストアをしている人にとって参考になる部分は多いはずだ。
再生対象車が発表されたあと、日産名車再生クラブの代表である木賀新一氏の挨拶があった。木賀氏は「今年度のクルマですが、今までとは面持ちが違います。先ほど紹介があったように1972年の東京モーターショーに展示されたもので、発売されたばかりのサニー 1200 クーペ GX-5と並んで、“こういうオプションパーツを付けると楽しく遊べますよ”ということを見せたいがために作り、展示されたクルマだったのです。昨今、若い人がクルマに興味を示してくれないとも言いますが、当時もこのような仕掛けをして、若い世代にアピールしていたんですね。そういったことも振り返りながらわれわれも勉強して、マーケティングみたいなことも考えながら、このクルマの再生をしていきたいと思っています」と語った。