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ルノー、鈴鹿サーキットで新型「メガーヌ ルノー・スポール トロフィー R」のタイムアタック
ニュル量産FF車最速モデルでテストドライバーのロラン・ウルゴン氏、谷口信輝選手が競い合い
2019年11月28日 00:00
- 2019年11月26日 開催
仏ルノーのモータースポーツ部門であるルノー・スポールは11月26日、鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)で新型「メガーヌ ルノー・スポール トロフィー R」のタイムアタックを実施した。
2019年10月に発売された「メガーヌ ルノー・スポール トロフィー」(6速MT)をベースにさらなる改良を施したトロフィー Rでは、これまでにもドイツ ニュルブルクリンク、ベルギー スパ・フランコルシャンといった世界に名だたるサーキットでタイムアタックを実施。それぞれで「量産モデルのFF車最速タイム」を記録してきた。
フランスでの価格は5万5000ユーロ(約660万円)で、500台の限定モデルとして販売されることがすでに発表されており、この鈴鹿サーキットでのタイム計測に合わせ、本国仕様の主要スペックが明らかにされた。日本での一般公開は2020年1月10日~12日に幕張メッセ(千葉県千葉市美浜区)で開催される「東京オートサロン 2019」のルノーブースで行なわれ、同時に日本仕様のスペックや価格なども発表されるという。
新型トロフィー Rの開発では、先代モデルが同じく世界各地のサーキットで記録してきた“最速タイム”をさらに短縮することを目的に設定。直列4気筒DOHC 1.8リッター直噴ターボエンジンのスペックはベースモデルのトロフィー同様の最高出力220kW(300PS)/6000rpm、最大トルク400Nm(40.8kgfm)/3200rpmながら、「徹底した軽量化」「回頭性と精度を高めるサスペンション」「ダウンフォースの最大化」という3点を柱として進められた。
中でも軽量化では、すでに軽量化の取り組みが行なわれて車両重量が1450kgとなっているトロフィーから130kgの重量減を開発目標として設定。この実現に向け、現行モデルの「メガーヌ ルノー・スポール」シリーズで特徴的な装備となっている4輪操舵システム「4コントロール」を、可動式ではない通常のリアアクスルに変更して35kg減。さらにリアシートを排除し、サーキット走行などで重要になる交換用のタイヤ&ホイール4本セットを搭載可能なスペースに置き換えて25.3kg減。
このほかにもNACAダクトを備えたカーボンボンネットの採用、ウィンドウガラスの薄板化、リアドア用ウィンドウの固定化、チタン製のアクラポビッチ製エキゾーストシステムの採用、吸遮音材の削減などを行ない、乾燥重量は1306kgを達成している。
足まわりでは、車高や減衰力の調整が可能なオーリンズ製ショックアッブソーバーを採用。車高は16mmの調整が可能で、出荷時には一番高い状態にセットされているという。前後245/35R19サイズのタイヤは、サイドウォールにルノー・スポールのマークも入った専用セッテイングのブリヂストン「ポテンザ S007」を用意。これにトロフィーの装着品から2kg/本の計8kgの軽量化を果たす軽量アロイホイールを標準装備するほか、オーストラリアのカーボン レボリューション製カーボンホイールをオプション設定。軽量アロイホイールからさらに2kg/本の軽量化となるカーボンホイールは、フロント用のカーボンセラミックブレーキディスクとセットで新型トロフィー Rにオプション設定される。
このほか、ブレーキではフロントにブレンボ製4ピストン42mmキャリパーを装備し、フロントアクスルにトルセンLSDを採用している。
空力性能の面では、軽量化で車両後方側が大きく重量減となっていることや、4輪操舵システムの4コントロールがなくなって調整が効かなくなったことから、主にリアのスタビリティ確保をターゲットに変更を実施。風洞実験やCFD解析などを重ね、フロア下にカーボンパネルを設置してフラット化。リアエンドは大型ブレードを備えるディフューザー形状として、空気抵抗を極力増やすことなくリアセクションに大きなダウンフォースを発生可能としている。
ニュータイヤに交換した3回目のタイムアタックで2分25秒454をマーク
鈴鹿サーキットの国際レーシングコースで行なわれたラップタイム計測では、これまでと同じくルノー・スポールのテストドライバーであり、新型トロフィー Rの開発にも携わったロラン・ウルゴン氏がタイムアタックを実施。また、ルノー・スポールのアドバイザーも務め、新型トロフィー Rの開発にも協力しているレーシングドライバーの谷口信輝選手もタイムアタックを行なっている。今回の目標タイムは、ウルゴン氏が先代のトロフィー Rで2014年11月に記録した2分28秒465。
当日は朝から曇天で、日暮れごろには雨が降り出すような濃い雲に覆われ、タイム計測が行なわれた午後の外気温は10℃台前半の冷え込み。ターボチャージャーを採用するトロフィー Rにとって加給による効果を得やすく、良好なタイムが望めるコンディションとなった。
取材に足を運んだ報道関係者が見守る中、ウルゴン氏は1回目のタイムアタックで早くも先代の記録を超える2分25秒961を計測。しかし、それでも右ハンドル仕様に慣れないウルゴン氏がアタックラップ中に数回シフトミスを発生させてしまっていたとのことで、クーリングとコンディションチェックを挟んで再びコースイン。「とにかくシフトチェンジにだけ集中した」という走行で、2分25秒749のタイム更新を実現した。
量産モデルのFF車としては驚異的なラップタイムの達成でピット内が祝福ムードに包まれる中、続いて谷口選手のタイムアタックがスタート。谷口選手はそれまでの走行で燃料が減っていたことによるガス欠症状でアタックラップの中断などを挟みつつ、2回目のタイムアタックでウルゴン氏のタイムを超える2分25秒656を記録。現場をさらに盛り上げた。
これでラップタイム計測は終了かとも思われたが、両ドライバーとも早々にスーパーラップを刻んだことでタイム計測のスケジュールが前倒しになったことで、最後に予備として用意されていた標準装備の軽量アロイホイールにセットされた未使用のフレッシュタイヤに交換し、ウルゴン氏が再びタイム計測を行なうことになった。
前出のように、軽量アロイホイールとカーボンホイールでは4本で計8kgの重量差があるが、未使用タイヤが初期から高いグリップ力を発揮したことに加え、それまでの走行でウルゴン氏が右ハンドル仕様に順応していったことなどから、3回目のタイムアタックでこの日最速となる2分25秒454と、目標タイムから3秒以上短縮という記録が樹立された。
ラップタイム計測後に行なわれたグループインタビューでは、ウルゴン氏が今回のタイム計測について「メッセージとしてとくに強調したいのは、今回はクルマについて知り尽くしている私と、鈴鹿を知り尽くした谷口選手の2人でタイムアタックをしましたが、結果として出てきているクルマのパフォーマンスは同じようなものになっているということです。お互いに10分の1秒といった世界で戦うことができています。それは、ドライバーの腕によらず、クルマが高いパフォーマンスを持っていることを分かっていただけると思います」とコメント。
また、タイム計測を2時間で終えたことの理由については「例えばこれが3時間あったら、また谷口選手が乗って私のタイムを上まわったでしょう。そして私に交代してさらに、となれば、どんどんクルマやコースに慣れてタイムはよくなっていくことでしょうが、それはもはやドライバー同士の戦いです。今回はクルマが持っているパフォーマンスを紹介するためなので、2時間で素晴らしいタイムを出すことができて光栄だと思っています」と解説している。
谷口選手は「新しいトロフィー Rに乗って、楽しくてよく曲がる、速い素晴らしいクルマだと確認しました。実際に鈴鹿でこのタイムはむちゃくちゃ速くて、某日本メーカーのC何とかというクルマではこんなタイムは出ないと思います。2月にテスト車の状態でも乗って、先日もメガーヌ R.S.トロフィーにも乗って、このメガーヌシリーズは前輪駆動なのに、こんなにも曲がって乗っていて楽しいことを実感しています。このトロフィー Rは完全に走りに振っていて、それなりに腕に覚えがある人にしか薦められないですが、R.S.トロフィーなどは誰でも楽しく走ってもらえるよと声を大にして言えます。こんな風に運転して楽しいというクルマは少なくなってきていますし、最近は走りをアピールしたクルマでも、素性はイマイチでも電子制御でごまかしてしまうクルマも少なくありません。メガーヌシリーズは電子デバイスなしでも素性がよくできたクルマだなと感じています」と運転した感想を語った。
このほか、鈴鹿サーキットでラップタイム計測を行なう意義について、ウルゴン氏は「鈴鹿サーキットはニュルブルクリンクやスパ・フランコルシャンなどと並ぶ名門のサーキットです。また、鈴鹿サーキットは日本のサーキットです。われわれにとって日本市場は非常に重要なマーケットで、2020年はメガーヌ R.S.だけではなく、ルノー・スポール全体で日本が国別の販売ナンバー1になってほしいと考えています。ですから、ルノー・スポールが日本に来てテストを行なうことは意義深く、中でもニュルやスパと並ぶ名門として鈴鹿サーキットを選んでいます」と語っている。