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ルノー、ルノー・スポールの開発テストを鈴鹿サーキットで公開

欧州以外で初となる開発テストを日本で実施

鈴鹿サーキットでの走行後に記念撮影するルノー・スポールの首脳陣とルノー・ジャポンの大極社長
2013年4月16日、17日開催

 ルノー・ジャポンおよびルノーのモータースポーツ部門であるルノー・スポール テクノロジーズ(RST)は4月17日、鈴鹿サーキットでルノー・スポールの開発テストの模様を報道陣に向けて公開。前日の16日には、テスト実施の意義やRSTについて解説するプレスブリーフィングを開催した。

 全6日間の日程で4月12日に来日したRSTの開発テストチームは、まず東京でテスト車両となる日本仕様のメガーヌ ルノー・スポールを受領。日本の道を知るため、首都高速などを走行してルノー・ジャポン本社のある横浜に足を運んだあと、東名高速や一般道を使って関西方面に移動。大阪や神戸などの都市部のほか、郊外でも日本の交通事情を体感して、16日にクローズドである鈴鹿サーキットに入った。

 鈴鹿サーキットの国際レーシングコースでは、主にタイヤテストを実施。メガーヌ ルノー・スポールに標準採用するブリヂストン「ポテンザ RE050A」に加え「ポテンザ RE-01R」、ヨコハマタイヤ(横浜ゴム)の「アドバン ネオバ AD08」などを装着してサーキット走行領域での挙動変化などを確認した。

鈴鹿サーキットの国際レーシングコースで4月16日に実施されたテスト走行の様子

繰り返し行うテスト走行がルノー・スポールの走りを魅力的にする

「我々は“ルノー・スポールはクルマに対する情熱のエキスパート”を合い言葉に活動しています」と語るRSTのジャン・カルカ氏(写真・左)

 16日に行われたプレスブリーフィングでは、RSTで国際販売担当を務めるジャン・カルカ氏からRSTの概要やルノーのモータースポーツに対する取り組みなどが解説された。

 ルノーは100年以上にわたる長い歴史の中でさまざまなモータースポーツに参加。近年ではここ数年のF1シーンを席巻するレッドブル・レーシングチームにエンジン供給しているほか、欧州でフォーミュラ・ルノーの年間戦を主催して数多くの有名ドライバーを輩出。さらに、市販車ベースのGTマシンを使った大小さまざまなレースにも精力的に取り組んでいる。

 フランスにあるルノー本社から100%出資を受ける子会社のRSTは、ルノーの通常ラインアップ車をベースとしたホットハッチモデルからフォーミュラ・ルノーのマシン製作まで手がけており、市販されるルノー・スポール車はこれまでにルノーがモータースポーツシーンで培ってきたスポーティイメージをルノー車に還元させる、ジョイントとしての役割が与えられていると説明された。また、RSTはニューモデルのデザインや開発、生産、販売、マーケティングなどに加え、ユーザー参加イベントやレースシリーズの開催・運営など、幅広く事業展開していることも合わせてアピールしている。

欧州ではフルラインアップメーカーとして大小さまざまなクルマを販売しているルノー。その一方、モータースポーツ界の頂点であるF1でも4チームにエンジン供給を行っており、このスポーティイメージをルノーの市販車と結びつける架け橋になるのがルノー・スポール車となっている
RSTが手がけるモデルは、内外装にスポーティイメージを与える「GTライン」、装備内容の変更によって走行性能を高めた「GT」、トータルチューニングでサーキット走行まで見据える「ルノー・スポール(R.S.)」の3種類に大きく分けられる
ルノー・スポールのホットハッチモデルはルノーのスポーティイメージを牽引するほか、2011年6月にはニュルブルクリンク北コースでメガーヌ ルノー・スポール トロフィーが量産FF車の最速ラップタイムとなる8分7秒97をマークしてRSTの実力を証明している

 このほか、RSTのシャシー系の開発エンジニアであるフィリップ・メリメ氏からRSTの開発姿勢などについて紹介された。

 この中でメリメ氏は、「現代ではRSTに限らずほとんどのメーカーでニューモデルの開発をコンピュータ上のシミュレーションで8割前後まで進めている。しかし、残る2割はやはり人間にゆだねられる部分で、ここでRSTの真価や独自性が発揮される」と語り、「この2割の部分をさらに引き上げるため、RSTの職人たちはサーキットや公道で実際に走ってチェックし、経験を積み重ねることが重要だと考えている。これまでの車両開発でヨーロッパは知り尽くし、次のステップとして日本人のニーズを深く知るため、今回ヨーロッパ以外で初めてとなる開発テストを日本で実施することが決定しました」と、今回の来日に込められた真意を明かした。

RSTの開発現場を解説するフィリップ・メリメ氏。右ハンドル車を開発テストで使うことも今回が初めてのケースになると言う
ルノー・スポールで市販される車両の最上位となるのが「ルノー・スポール ラディカル」と呼ばれるモデル。公道を走るナンバー取得は可能だが、サーキットでのパフォーマンスを最優先したモデルになっている
ニューモデル開発で欧州中のサーキットや公道を走り、さまざまなシチュエーションでテストを行ってきたRST。新たな段階を目指し、欧州以外で初めてのテストを実施するため日本にやってきた
「ルノー・ジャポンは昨年3108台を販売していますが、このうち約25%をルノー・スポール車が占めています。これだけスポーツ車の販売比率が高いことは一般ブランドとしては珍しいことです」と語るルノー・ジャポンの大極社長
「私はこれまで30年以上の経験で、ニューモデル開発で一番大切なのは開発ドライバーとエンジニアの協力姿勢だと考えるようになった。その点で、今回日本でのテストに参加したディリップ・メリメとロラン・ウルゴンの2人はRSTでもベストなペアだと信じています」とコメントするRSTのパトリス・ラティCEO

サーキット走行でルノー・スポール車の真価を披露

 17日には、まず6日間のテストの締めくくりとして、鈴鹿サーキットの国際レーシングコースでメガーヌ ルノー・スポールのラップタイム計測を実施。ニュルブルクリンク北コースでのタイム計測時にもステアリングを握り、レコードホルダーになったRSTが誇る開発ドライバーのロラン・ウルゴン氏がアタックドライバーを務めた。

 この走行では、前日の同サーキットのテスト走行で相性のよかったアドバン ネオバ AD08を装着する以外は、市販モデルと同じメガーヌ ルノー・スポールで2分33秒328という周回タイムを計測。電光掲示板にタイムが表示された瞬間、RSTのスタッフから歓声が上がる上々な結果となった。

鈴鹿サーキットのメインストレートを駆け抜けるメガーヌ ルノー・スポール
タイムアタック後に車両の前で報道陣から取材を受けるロラン・ウルゴン氏
6日間のテスト走行で使用されたメガーヌ ルノー・スポール
ピット内で待機する3台のテスト車両。装着パーツを少しずつ変更しており、例えば鈴鹿サーキットのスプーンカーブでは、強い制動力が発生するプレーンタイプのブレーキディスクより、コントロール幅が広いスリットタイプのほうがタイム削減に効果的だったとのこと
走行前に自らタイヤの空気圧をチェックするロラン・ウルゴン氏
ヘルメットを装着して車両に乗り込もうとするロラン・ウルゴン氏に声を掛け、笑顔で会話するフィリップ・メリメ氏。開発チーム内にしっかりした信頼関係が築かれていると感じさせる光景だ
タイムアタック車両に装着されたアドバン ネオバ AD08
こちらはブリヂストンのポテンザ RE-01R

 ラップタイム計測の終了後には、集まった報道関係者にメガーヌ ルノー・スポールの走行性能を体感してもらうためのテクニカルラップを実施。走行前にはロラン・ウルゴン氏からコース内で注目すべきポイント、テストで感じた感想などが解説され、ロラン・ウルゴン氏とフィリップ・メリメ氏の2人がドライビングを担当して同乗走行が行われた。

「デグナーはトラクションの掛け方がテクニカルな部分。LSDのセッティング開発に向いているコーナーになっていると感じた」と語るロラン・ウルゴン氏
時間の関係もあって4人乗車での同乗走行となったが、テストドライバーのテクニックは重量増でも影響を感じさせない高次元の走りを実現。あまりの激しさに、後部座席に座った人には気分がわるくなることもあるほどだった
同乗走行のテクニカルラップでピットレーンを通過するメガーヌ ルノー・スポール

(佐久間 秀)