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デンソー、新型コロナの研究貢献のため量子コンピュータ無償提供するプロジェクトに参画

治療薬開発や感染抑止に向けた研究のため世界35か国で「Leap2」を無償提供するプロジェクト

2020年3月31日 発表

D-Wave Systemsの量子コンピュータ

 デンソーは3月31日、量子コンピュータのクラウド利用サービス「Leap2」を新型コロナウイルス対応で利用する企業・団体に無償提供するという、カナダのD-Wave Systemsが実施するプロジェクトに参画することを決定した。

 新型コロナウイルスの世界的流行によって、各国では治療薬開発や感染抑止に向けた研究などが進められているなか、D-Wave Systemsはカナダ政府の要請を受け、新型コロナウイルス対応で利用を希望する企業・団体に対し、世界35か国で「Leap2」を無償で提供するプロジェクトを立ち上げた。

 量子コンピュータによって研究開発スピードの加速に期待が寄せられているものの、その利用には専門知識が必要とされ、このプロジェクトはD-Wave Systemsが同社サービスの利用実績を持つ企業や団体に対し、技術面での支援を呼び掛けたものだという。

 これまで量子コンピュータを使った工場の効率化シミュレーションの実証実験をはじめとする研究を行ってきたデンソーは、その中で培った知見を社会に役立てるべく、現実の問題を量子コンピュータが解くことができる形にする定式化や、問題を解くスピードを高速化するなどの技術支援を行なう。

D-Wave Systems本社にて、デンソー社員とD-Wave社員
工場効率化の実証実験に使っているデンソーの無人搬送車

 デンソー 代表取締役社長 有馬浩二氏は、この参画について「コンピューティング技術は、科学技術や産業の発展に貢献してきました。量子コンピューティングは、さらなる発展に貢献できる技術として期待されており、デンソーはその研究を続けてきました。世界中で新型コロナウイルス対策に携わる多くの研究者や開発者が、D-Wave Systemsによる量子コンピュータの無償提供を即座に利用開始できるよう、技術支援のプロジェクトに参画し、デンソーのスピリットである総智・総力で、新型コロナウイルスによる危機の回避と世界の継続的な発展に貢献したいと思います。世界の知恵を結集させることで、この困難は必ず乗り越えられると信じています」と述べている。

株式会社デンソー 代表取締役社長 有馬浩二氏(写真は2019年5月24日の事業方針説明会のもの)

 また、D-Wave Systems CEO アラン・ブラッツ氏は、「私たちは、ほぼすべての産業と人口に影響を与える未曾有の危機に瀕しています。お客さまやパートナーの専門知識を当社のハイブリッド量子コンピューティングと組み合わせることで、世界中の個人、組織、政府が迅速かつ共同で解決策を構築するための強力なリソースを提供できると考えています。デンソーの研究チームは、D-Wave量子コンピュータの利用に精通しています。われわれは、量子システムに関する専門知識を結集し、新型コロナウイルスに対応する皆さまを支援します。このプロジェクトを通じ、D-Wave Systemの最新サービス“Leap2”に無償でアクセスできるようになり、古典的コンピュータと量子コンピュータを組み合わせたハイブリッドソリューションを、迅速に使うことができるようになります」と期待を込めている。