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デンソー、医療用プラットフォーム技術を展開する新会社を設立
ベンチャーキャピタルと共同で「手術機器情報統合システム」の普及を加速
2019年9月6日 06:00
- 2019年9月5日 開催
デンソーは9月5日、ベンチャーキャピタルのBeyond Next Venturesと共同で、デンソーが持つ医療用情報プラットフォーム「OPeLiNK(オペリンク)」を用いた「手術機器情報統合システム」の販売、教育コンテンツ制作などを行なう新会社「OPExPARK(オペパーク)」を設立したと発表。同日に都内で共同発表会を開催した。
新たに設立されたOPExPARKは、デンソー社内のプロジェクトにおいて、Beyond Next Venturesが運営するアクセラレーションプログラム「BRAVE」を活用する、いわゆる「カーブアウト」と呼ばれる手法を取り入れたもので、早期の事業化実現によりOPeLiNKの普及拡大と医療の質向上を図る。
データと動画で属人化した手術ノウハウを学ぶことが可能に
OPeLiNKは、日本医療研究開発機構の支援のもと、デンソーと東京女子医科大学が中心となって、東北大学や信州大学など4つの大学と、日立製作所、パイオニア、キヤノンメディカルなど11の企業の協力を得ながら開発を進めてきた医療用の情報プラットフォーム。広島大学、信州大学、東京女子医科大学は、すでにOPeLiNKを軸とした「SCOT」と呼ばれる「スマート治療室」を導入して臨床試験などを進めている。
手術中に使用する医療用機器は、それぞれメーカーが異なったりすることから出力されるデータ形式に差異がある。OPeLiNKはこれを一元管理できるようにした上で、執刀医の頭の中にしかなかった手術中の判断につながる情報を、撮影した動画とともに可視化。これによって手術におけるノウハウを共有し、医療・ヘルスケア分野の質向上を図ることを目的としている。
新会社のOPExPARKでは、このOPeLiNKを活用する手術機器情報統合システムの販売、ならびにOPeLiNKから得た動画などのデータを使った教育用コンテンツの制作・配信などの事業を展開していく。手術機器情報統合システムを使うことにより、さまざまな医療用電子機器から集めた情報を統一的に扱えるようにするほか、サードパーティが開発した医療用アプリケーションなどからデータアクセスできるようにする。
OPExPARKの代表取締役社長に就任した本田泰教氏は、自身の医師としての経験から、OPeLiNKについて「すべての医療機器のデータが1画面内にあるだけでも、術者にとってはすごいメリット」と話す。手術においてはそのノウハウが極めて高度に属人化しており、一般的には高価な本やDVDから情報を得たり、実際に手術の様子を見学したりして知識を得ている。しかし、OPeLiNKがあればそうしたノウハウが可視化でき、最先端医療を気軽に学べる環境を実現できるのが大きなメリットだという。
「手術をしているときにはトラブルが起きる。それがなぜ起きたのか、数秒前や数分前を振り返って、修正できるポイントを議論する」といった活用方法も考えられるとし、「どこでも最善の医療を享受できる。そういう世界の実現に貢献していきたい」と意気込みを見せた。