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トヨタ、医療現場や医療用品への支援を表明

マスクの自社生産による自給自足なども開始

2020年4月7日 発表

トヨタ自動車の元町工場 組立生産ライン

 トヨタ自動車は4月7日、トヨタグループ各社とともに医療現場や医療用品への支援を表明した。医療用フェイスシールド(防護マスク)の生産、人工呼吸器を始めとする医療機器の増産に対してトヨタ生産方式(TPS)のノウハウ活用などを検討していくというもので、生産活動に必要なマスクの自社内生産による自給自足への取り組みも発表した。

 こうした医療現場や医療用品への支援の表明は、「安全・安心を最優先に現場で戦っている方々、苦しんでいる方々の気持ちに寄り添いながら、私たちにできることを即断、即決、即実行していく」という、トヨタ自動車 代表取締役社長 豊田章男氏の方針に基づくもの。

 現在、社会的な最優先課題となっている感染拡大の抑制や医療現場の支援に向けて、自動車産業が持つ製造・物流面でのノウハウや、グローバルに広がるサプライチェーンを活かし、さまざまな側面から対策を検討して迅速に取り組んでいくという。

 一方、自社内に向けた具体的な取り組みとしては、社会的なマスク不足に対する需給緩和に向けて、生産活動においてグループ内で必要とされるマスクの自給自足を進めるため、自社施設内でのマスク生産を検討している。

 デンソーでは、製造現場を中心に社内で必要となるマスクを自主生産することを決定。4月中の生産開始を目指して試作品の生産に着手しており、軌道に乗れば10万枚/日の量産が可能となる見通し。

 トヨタ紡織では、4月上旬より刈谷工場において1500枚/日で生産を開始。順次、増産を図るとともに、5月以降は猿投工場に移管、1万2000枚/日への増産を計画中。そのほか、アイシン精機、ダイハツ工業、日野自動車などでもマスクの自社生産を検討中としている。

 今後、トヨタグループが進めていく、医療現場および医療用品に対する支援に関する主な取り組みは以下の通り。

医療現場および医療用品に対する支援

1:医療用フェイスシールド(防護マスク)生産

 医療現場にて不足する医療用フェイスシールドを、試作型や3Dプリンターなどで製作し、医療機関へ提供。具体的には、トヨタ自動車貞宝工場にて、試作型による医療用フェイスシールドの生産準備を進めており、週500~600個程度から生産開始予定。加えてグループ企業でも生産が可能か検討を開始する。

2:トヨタ生産方式(TPS)活用による医療機器メーカーの生産性向上への協力
 政府による日本自動車工業会を通じた要請に基づき、医療機器メーカーによる人工呼吸器を始めとする医療機器の増産に対し、トヨタ生産方式(TPS)のノウハウ活用による工程改善など、生産性向上への協力を検討。トヨタ自動車を中心にTPS支援チームを結成し、医療機器の大幅な増産などで困りごとを抱えている企業にすぐに支援に入れるよう、現在、製造者側を含めた関係各所と具体的な対応について調整を開始している。

3:軽症の感染者移送に対するサポートの検討

 東京都内を中心とした感染拡大地域において、軽症の感染者を他の医療機関や待機施設、自宅などに移送する際の運転者の感染を抑えるために、JPN TAXI等を中心に、車室内での飛沫循環を抑制する方法について、検討を開始している。

4:サプライチェーンを活用したマスクなど衛生用品の調達支援

 政府による自工会への調達協力要請を受け、トヨタ自動車のサプライチェーンを通じ、医療用マスクや防護服、体温計など衛生用品の調達支援に向けた取組みを進める。

5:医療機関にて活用可能な備品の供給

 病院向けの簡易ベッド台、消毒液容器、医療機関等での簡易間仕切り壁など、医療機器以外で必要とされる備品の生産での協力の可能性について、アイシン精機が調査を開始。

6:治療薬開発や感染抑制に向けた研究支援への参画

 治療薬開発や感染抑制に向けた各国の研究支援を目的に、カナダのD-waveが進める量子コンピューターの利用サービスの無償提供プロジェクトにデンソーが参画し、利用促進に向けた技術支援を行なっていく。

 これらの対策の中には、現時点では構想段階のものや着手直後のものも含まれており、トヨタグループとして可能な限りの協力をしていく考え。

 医療現場や医療用品への支援を表明する一方で、トヨタグループでは将来に向けた企業体質改善に取り組んでいくという。オフィス勤務者の在宅勤務のあり方や生産性向上に取り組むとともに、生産現場では、需要減退による生産停止や縮小によって生まれる時間を活用して改善活動や人材育成などを積極的に進めるとしている。

「無駄なことは、思い切ってやめる」「より生産性を高めるために、やり方を変えていく」「どのような状況でも『やるべきこと』はしっかりやる」を基本的な考え方に、新型コロナウイルスの感染拡大防止のために、中止とせざるを得なかった行事や施策、在宅勤務などへの働き方の変更等を踏まえつつ、これまでの取り組みが本当に必要か、もっといいやり方がないか、ゼロベースで1つずつ検証していくとしている。

 企業体質改善に向けた具体的な取り組みは以下の通り。

主に事務・技術系職場での取り組み

1:在宅勤務拡大に対応するネットワーク基盤強化やツールの整備

 急速な在宅勤務拡大により逼迫する外部からのリモートアクセス容量の拡張など、在宅勤務に必要な様々なシステム環境の整備を各社で進めていく。多くの企業が一斉に在宅勤務への対応を進めていることから、短期的なネットワーク基盤の整備には限界があることも判明しており、優先順位をつけながら対応を進めていく。また、SkypeやTeamsなどの新たなコミュニケーションツールの積極的活用を進めることで、業務の活性化とより一層の効率化を進めていく。

2:生産性向上に資する働き方改革と在宅勤務ルールの確立

 在宅勤務など場所にとらわれない働き方をより一層促進するために、就業規則や勤務ルールなどの見直しを実施していく。また日々、1人1人の仕事のタスクや実施事項をより明確にすることで、個々人の業務量や進捗を日単位で把握し、個人の評価に反映していくとともに、仕事の組み換えや組織全体の効率化に結び付けていく。

3:人材育成の加速

 各職場において、身につける必要のある専門能力などを「能力マップ」として整備していく。1人1人の能力向上プランを考えることで、人材育成をより一層加速させていく。

主に生産系職場での取り組み

1:生産停止や縮小によって生まれた時間を利用した改善活動と人材育成

 通常の生産ライン稼働時には、取り組むことが難しい老朽設備の更新、生産設備の点検、職場環境の向上や、今後の競争力強化につながる改善など、各社において将来に向けて取り組むべき改善活動を、生産停止や縮小によって生まれた時間を活用し、積極的に進めていく。

2:仕入先と一体となった生産ネットワーク維持と改善活動

 サプライチェーンを維持するために、各仕入先の困りごとを把握し、仕入先とともに生産性向上へ向け、一体となった改善活動を促進していく。また、各国・各地域において、ラインストップを余儀なくされた部品などについて、代替生産をグループ企業や仕入先と一体となって実施するとともに、応受援を通じた人材育成についても積極的に進めていく。

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