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トヨタ、コロナ禍に従業員が自発的に開発した手指消毒用スタンド「しょうどく大使」説明会レポート

トヨタらしさが生み出したクルマじゃない商品は、約2か月で1万台生産を達成したという

2021年2月8日開催

「しょうどく大使」とは?

 2020年の春以降、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けるなか「自分たちにできることはあるか」「仲間から感染者を出さない」という気持ちを持ったトヨタの工場で働く従業員の行動力から同時多発的に生まれたのが、それぞれの工場独自の構造を持つ手指消毒用の消毒液スタンドだった。

 そして、このアイデアをトヨタ独自の「カイゼン(改善)」という活動のなかでブラッシュアップされたのち、足踏み式消毒スタンドの「しょうどく大使」という商品名で、2020年12月1日より全国のトヨタ車販売店、トヨタレンタリース各拠点にて販売されている。

 Car Watchでは2020年の11月に、トヨタ自動車高岡工場を取材した記事「トヨタの足踏み式消毒スタンド「しょうどく大使」感染対策として工場従業員が自発的に開発」もあるので、ぜひご参照いただきたい。

トヨタ自動車が販売する足踏み式消毒スタンドの「しょうどく大使」。価格は8000円(税別)。商品サイズは330×430×1169mm(幅×奥行き×高さ)で重量は約3.2kg。消毒液は付属しない

「しょうどく大使」はトヨタの工場で製造に携わる従業員による「まかない」的な作業から生まれた製品であるだけに、あらかじめ商品として作られたものとは違う素朴さがある。しかし、まかないといってもトヨタ車を作る現場が手がけるものなので「いいものを作ろう」という気持ちはベースにしっかりとある。それゆえ以前に現物を見せてもらったときには、素朴なアイテムながら道具としての魅力を感じた。

 そんな「しょうどく大使」は発売から約2か月で累計約1万台が生産され、個人、法人、自治体、病院、学校、商業施設などで使用されているという。そこでトヨタ自動車は「しょうどく大使」ユーザーの声や販売の現場の声を集めて紹介する発表会をインターネット会議方式で開催したので、今回はその様子をお届けしたい。

まさに「トヨタらしさ」を具現化したアイテム

 トヨタ広報担当者から「今回、皆さまにお伝えしたいのは消毒スタンドを販売していますということだけでなく、我々作る側の想いや販売をとおしての地域の方々との繋がりなどもご覧いただければと思います」と挨拶があったあと、製造現場の代表者としてトヨタ自動車サービスパーツ物流部の山下氏が登場した。

 山下氏は「豊田社長は日頃から私たちに向けて“トヨタらしさとは何か?”という問いを投げ続けています。われわれはお客さまのニーズをしっかりとくみ取り競争力のあるもの作りを継続し、それを高い次元でバランスさせていくことが“ひとつのトヨタらしさ”と思っています。そしてその気持ちを持って作る『しょうどく大使』が皆さまにご愛好されるだけでなく、安全、安心な社会を作るお役に立てればと思っています」と語った。

 そんなことから「しょうどく大使」は開発期間においては大勢の人が利用する約64か所の施設にモニターを依頼。そして使用者からの声を聞いたうえで30種類以上の異なる仕様の試作品を作り込んだ末に製品になったという。

 続いて同じくサービスパーツ物流部の磯部氏が登場し「しょうどく大使」の製造における直近の模様が紹介された。

 品質面についてはそもそも十分な耐久性を持っていたが、それをさらに高めるため、フレームやペダルを改良しているとのこと。また、改良を加えたあとの現在でも製造現場に試験器を置いて「200万回足踏み耐久テスト」も実施しているとのことだった。

 製品のカラーに関しても発売当初は2色に限定されていたが、現在はシルバ-、ブラック、サクラ、サックスブルー、イエローの全5色になり、設置場所の雰囲気に合わせたチョイスが可能になった。なお、このうちサクラとサックスブルーはトヨタ元町工場の塗装生産技術に在籍する高技能者による3コート塗装で品のある穏やかな仕上げとなっている。

発売から約2か月だが、ユーザーの声や設置場所ごとの要求などを元にすでに改良が加えられていた
塗色を増やして設置場所の雰囲気に合わせやすいようにするなどの進化が進んでいる

 2020年11月の取材会では「しょうどく大使」を組み立てるための作業台と作業デモンストレーションを公開することで作業効率の高さを見せていたが、現在は作業員の熟練度も上がっているため1台あたりの組み立てが約40秒で完了するという。そして作業員を複数配置することで1日の生産能力は800台となったとのことだが、そこはトヨタの生産方式に基づき、販売量に合わせて柔軟に対応。また、納期は工場の稼働日ベースで配送を含めて約3日で届けられるという。

生産現場からのコメントも紹介された
「しょうどく大使」は一度のペダル操作で手のひら、手の甲、手指までを消毒できる量の液剤が出るように設定されている
消毒液を置く台の高さは自由に調整できるので、子供が多く利用する場所では子供専用の消毒台として設置することも可能
病院だけでなく自宅で車いすを使用している人向けには、手の甲でポンプを操作できる仕様も用意している
足でペダルを踏んで、手は消毒剤の前に差し出すという一連の動作は「消毒をする」という意志によって行なうもの。新型コロナウイルス感染症の予防にはそうした「ハッキリとした」ものが大事と捉えているので「しょうどく大使」は足踏み式にこだわったという
メッセージボードも数種類用意して設置場所のニーズに合わせている。画像はないが荷物を持っている人が使いやすくなるよう荷物置き場となる台も用意している
「しょうどく大使」の製造工程を紹介するスライド

販売の現場からの声も紹介された

 説明会では販売店実例として、ネッツトヨタ山形とトヨタカローラ名古屋の2店舗の取り組みをまとめたレポートも紹介された。

 ネッツトヨタ山形では同社の高橋社長が「しょうどく大使」に関するトヨタの取り組みを高く評価し、発売開始当初から取り扱っているとのこと。

「しょうどく大使」は部品、用品のルートで流通されるため販売の現場ではサービス部が窓口になっているが、日頃から機械や道具に接する整備士の方の目にも「よくできている」と映ったそうで、整備士でもある販売担当者(松田課長)も本気で勧めていきたいと思う商品だという。

 トヨタカローラ名古屋では豊川店の伊藤店長の談話が紹介された。こちらのお店でも「しょうどく大使」は「トヨタらしいもの作り」であることに魅力を感じて取り扱いを始めたという。なお、トヨタカローラ名古屋では法人や自治体への納入割合が多くなっているのが特徴。

ネッツトヨタ山形の高橋社長と松田課長。新しい商材なのでDMやPOPなどのツールを製作して現場の人、ユーザーともに特徴をわかりやすくまとめたという
トヨタカローラ名古屋の伊藤店長とショールームに置かれた「しょうどく大使」
トヨタ一般受注分の販売データの内訳。「しょうどく大使」に関してはクルマの取り引きでは縁のなかった法人からも引き合いがあると明かした

製造現場からの声も聞いてみた

 トヨタには多くのクルマや用品があるが、それらの後ろには「トヨタの人達」の姿は浮かんでこないが、この「しょうどく大使」では作っている「トヨタの人達」が見える気がする。

 そこで「しょうどく大使」を生み、そして製造する現場の方にいまの状況をどう捉えているかを質問してみたところ「お客さまに最も近い物流職場の我々がもの作りと販売をとおし、直接お客さまの声を聞いてカイゼンを行うことが「シアワセの量産」となっていることに歓びと責任の大きさを感じています。また、この取り組みは現場での人材育成にも繋がっているということも実感しています」と言う回答だった。

 以上が「しょうどく大使」の累計生産1万台を突破したことに関する説明会の内容であるが、トヨタはこの「しょうどく大使」を社会貢献のためのアイテムとしてみているので、重要なのは売上金額ではなくて「多くの場所で大勢の人に対して『しょうどく大使』が役に立っている」という実績がもっとも大事ということが最後に伝えられた。