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【インタビュー】スズキ「ハスラー」チーフエンジニアが“よりSUVらしく”を追究した開発について語る
内装はハスラーのチャレンジな性格を表現しており、ベストマッチ
2020年4月21日 08:45
スズキ「ハスラー」のチーフエンジニアを務めたのはスズキ 四輪商品第一部 課長の竹中秀昭氏。実はそれまで竹中氏は車両性能開発の実験を主に行なっており、初めてチーフエンジニアとしてハスラーを担当したのだ。そこで具体的にどのような気持ちで臨んだのか、また、どういう想いでハスラーの開発に取り組んだのか。直接話を聞いてみた。
実験からチーフエンジニアへ
「もともと僕は車両性能開発の実験出身でしたので、先代ハスラーは“もっとよくなるのに”と思っていました」と竹中氏。その当時は主に小型車を担当しており、「スペースも余裕があるし、重量やある程度お金も許されていました」と振り返る。しかし、いざ担当してみると、「軽自動車のコストと重量の制約はすごく大変でした。その中で性能を成り立たせなければいけないし、このクルマはデザインがキモで、見て楽しそう、何かできそうと思って買ってもらうクルマです。そこで、デザインを損なわず性能を成り立たせることに本当に苦労しました」と述べる。
そんな竹中氏は、ハスラーのチーフエンジニアに決まった時に「困ったな」(笑)と思ったという。「直前までテストコースで小型車の振動騒音の開発を見ていましたので、軽自動車はタッチしていませんでした。そんなある日、突然商品企画への移動が決まり、ちょうどハスラーが動き始めたので最初からやってみろとなったのです」と、当時の驚きを隠さずに話してくれた。
チーフエンジニアは通常、アシスタントとして何年か経験を積みながら企画について勉強し、同時に営業や購買、生産など、いろいろな人とのつながりを作っていくもの。そして推薦などがあってようやく選ばれるような立場なのだ。それだけに「重圧でした」と語る。
デザインをやり直し
そうはいっても新型ハスラーの開発は始めなければいけない。竹中氏は、「自分なりのクルマに育てていきたいと思いました。こいつがやったんだという色を出したいと思ったのです。しかし、全然思い通りにいかないということを思い知らされました」と言う。
その最大のピンチは、「デザインが始まり1分の1モデルを作って“これで試作車を作るぞ”という時にひっくり返されたのです」ということ。その理由は、先代ハスラーからの変化感や、何を表現しているのかが分かりにくかったからだ。それは先代の存在の大きさゆえに、いろいろな人の考え方などに耳を傾けすぎたことに理由があるようだ。
「ハスラーはいろいろ想像させてくれて、チャレンジングな気持ちにさせてくれるクルマなのに、自分自身がチャレンジしなくてどうするんだと役員から言われたりもしました。社長も含めたプレゼンの場などでそういった議論をした結果、やり直しとなったのです」と竹中氏。
そこでもう1度市場調査をしたところ、アウトドア用品の動向が目に留まった。「日常生活でライフスタイルやグッズ類、衣服などにアウトドア用品が取り入れられていたのです。そこで、“よりSUVらしく”という方向に振るとともに、今この瞬間を切り取るのではなく、2019年や2020年から数年に渡り作り続けるので、機能・性能も満足し続けるようなものを取り入れながら、デザインも飽きが来ないもの。そして、やはりわくわくさせてくれるいろいろな要素を入れながらデザインしていきました」と語る。
ハスラーでしかできないインテリアデザイン
一方、インテリアは先代から大きく変わった。その点について竹内さんは「9インチのナビを納めることは重視しました」という。そしてインテリア全体としては、「いくつか案がありましたが、その中でこのデザインが一番チャレンジングだったのです」とその選択理由を語る。
しかし、「一番難しくもありました。インパネの天面は少し高く、ナビ部分も出っ張る形ではなく納める形で9インチのモニターを入れるのは非常にチャレンジングでした。他の案でも色々いいものはあったのですが、それらは今後出てくるクルマでも可能だと思えるところがあったのですが、このデザインはハスラーでしかできない、一番ハスラーのチャレンジな性格を表現しており、ベストマッチだと決めました」と採用理由を語った。