試乗インプレッション
「欲しい」と思わせる要素で敵うモデルなし!? スズキ新型「ハスラー」の進化点をチェック
自然吸気の2WD、ターボの4WD。どちらが魅力?
2020年2月4日 13:12
絶妙な外観デザイン
最近、軽自動車のニューモデルに試乗して、その完成度の高さに驚かされることが多いのだが、新型「ハスラー」もまぎれもなくそうだったことを、あらかじめお伝えしておこう。
思えば6年前、初代ハスラーの登場は衝撃的だった。ハイトワゴンにSUVテイストを融合させ、かわいらしくまとめたルックスを目にして、この手があったか! これは売れそうだ! と思ったら、まさしくそのとおり。発売後それなりに時間が経過しても、まだこんなに売れているのかと何度も驚かされたことを思い出す。そして、モデル末期まで息の長い人気を持続させた。
そして迎えた初のフルモデルチェンジ。文字どおりすべてが刷新されているが、外観は変わらなさすぎるとつまらないし、あまり変えるとハスラーらしさがなくなるところ、ひと目でハスラーと分かるアイコンを残しつつも、ニューモデルらしい新鮮味も感じさせる絶妙なデザインとされたことに感心。また、初代に比べてフードを持ち上げたりウィンドウを立てたりしたことで、新型のほうが大きく見える。
一方でインテリアはガラリと変って、かなり奇抜なデザインになった。インパネに3つ並ぶ丸型のモチーフも斬新そのもの。しかもいろいろなアイデアを満載していて収納スペースなどの使い勝手も格段に向上している。新感覚のカーナビゲーションもよくできていて目を見張る。短時間の試乗ながらスグレモノであることは十分伝わってきた。
新型では前席の左右乗員間距離が30mmも拡大したとのことで、たしかに広い。後席も35mm延長されたホイールベースによりさらにレッグスペースの余裕が増した。ヒップポイントを高めながらヘッドクリアランスも確保されている上、シートを荷室側から前後スライドさせることが可能で、前倒しすると荷室フロアとフラットにつながるようになったのも重宝する。荷室下には防汚タイプのラゲッジアンダーボックスを設定するなど、もはや突っ込みどころがないほどあらゆる部分が進化している。
操縦安定性と快適性の両立
試乗したのは自然吸気の2WDとターボの4WDで、印象はそれなりに違うものの、いずれも完成度の高さをヒシヒシと感じさせる点では共通していた。
「HEARTECT(ハーテクト)」と呼ぶ新世代プラットフォームは、すでにスズキのいくつかの車種にも採用されているが、新たに採用した環状骨格構造や構造用接着剤、高減衰マスチックシーラーなどにより、「別物」と呼べるレベルまで進化している。そんな強い味方を得て実現した走りは、操縦安定性と乗り心地の快適性を見事に両立している。
操舵に対する動きが穏やかでどこにも角がなく、いたって素直に応答する。ストローク感のある足まわりとハイトのある大径タイヤが相まって、軽自動車ではおざなりにされがちな後席も含め、乗り心地は軽自動車の既成概念を打破するほど快適に仕上がっている。すべての根底にあるのは、軽量で剛性の高い新しい車体が大きい。おかげで足まわりがより理想に近い形で動いていることが伝わってくる。
思えば初代はアウトドア向けというクルマの性格に合わせて、あえてゆったりとした乗り味とされていたのだが、ゆったりしすぎて不規則な揺れが生じやすく、ロングドライブでは疲れやすいように感じていた。そこを、実際にはハスラーを使う人の大半が市街地をコミューター的に使っていることを受けて、新型では快適性とともにキビキビと走れることにも配慮したらしく、そのよさが出ている。
両モデルの違いは、車両重量が大きい影響かターボ+4WDの方が微妙にしなやかで、高速巡行時のフラット感もあり、一方でリアサスがトーションビーム式の2WDの方がストローク感では上まわる印象。欲をいうと、もう少しタイヤのロードノイズが抑えられ、車速を高めたときの走りに一体感があるとなおよい。
数値が下がっても実力は上がった
パワートレーンについて、エンジンは自然吸気が新開発のR06D型エンジンと、ターボは従来のR06A型の改良版となり、副変速機を廃するなどした新開発CVTが組み合わされる。出力向上したISG(モーター機能付発電機)が全車に搭載されたのもポイントだ。
乗り比べると、やはりターボの方が全域でパワフルなことには違いないのだが、自然吸気の走りっぷりもなかなか好印象だった。諸元の数値が従来よりも3PSばかり低くなったことに驚いたのだが、体感する性能は確実に向上している。エンジン回転が高めでやや音が大きい点は今後の課題ではあるが、至って軽快かつスムーズに加速していき、タウンスピード領域ではなんらストレスを感じることなくスイスイと走れる。どちらが好きかと聞かれればやはりターボだが、自然吸気も「これで十分」と感じさせる実力を持っている。これには従来よりも出力が増し、高い車速域までアシストできるようになったというマイルドハイブリッドも効いていることに違いない。
安全面では、すでに初代の途中から採用していた「デュアルカメラブレーキサポート」の衝突被害軽減ブレーキには、夜間の歩行者検知機能や後退時ブレーキサポート機能も付くなど、こちらもいろいろ進化している。さらにターボ車には、いずれもスズキ軽初となる全車速での追従機能を備えたACCや車線逸脱抑制機能を装備した。これがターボ車以外でも選べるようになることに期待したい。
もう1つハスラーで特徴的なのが、驚くほどのアクセサリーの豊富さだ。初代もそうだったが、2代目もそこはしっかり受け継いでいて、自分好みに仕立てることができるのもハスラーならではの楽しさだ。
持ち前のキャラクターだけでも十分に魅力的なところに、さらにコンセプトの「もっと遊べる!もっとワクワク!!もっとアクティブな軽クロスオーバー」のとおり、基本性能まで大幅に高め、機能性や装備等すべてをアップデートさせた2代目は、すべてが「もっと」引き上げられたのだから、まさに鬼に金棒。このところライバルたちもめきめきと実力を高めているが、「欲しい!」と思わせる要素の多さではハスラーに敵う車種はそうそうない。きっと2代目も初代にも増して人気を博することに違いない。