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ランボルギーニのカーボンニュートラル実現に向けた挑戦 ヴィンケルマンCEOが語るサステナビリティ戦略

2022年9月21日(現地時間) 開催

イタリアにあるランボルギーニのファクトリーで講演するランボルギーニ CEO ステファン・ヴィンケルマン氏

カーボンニュートラルへの取り組みはランボルギーニのようなスーパーカーメーカーでも無縁ではない

 アウトモビリ・ランボルギーニ(Automobili Lamborghini S.p.A.)は9月21日(現地時間)、イタリア共和国ボローニャ市にある同社ファクトリーなどで「ランボルギーニ・サステナビリティ・デイズ」を開催した。

 このイベントでは、同社のサステナビリティ(Sustainability=持続可能な成長)戦略として、環境などに配慮し、CO2排出を削減しながら持続できる事業継続に関しての説明が行なわれた。

 ランボルギーニ ステファン・ヴィンケルマンCEOは「我々は2015年から持続可能な成長戦略に取り組んでおり、CO2排出を2025年までに50%削減し、2030年には80%削減することを目指して取り組んでいる。車両側でも内燃機関を採用した車両は2021年~2022年に発表する製品が最後となり、2023~2024年にはHEV(ハイブリッド車)を投入し、2024年には全モデルで電動化車両を導入する。さらに車両だけでなく、サプライヤーも含めて製造段階でもカーボンニュートラルの実現を目指していき、エコシステム全体で持続成長可能にしていく」と述べ、ランボルギーニが車両だけでなく、製造から販売など自動車ビジネス全体でCO2排出を削減して、持続成長可能な成長戦略に取り組んでいくと説明した。

イタリア現地では、ランボルギーニ「アヴェンタドール」「ウラカン」「ウルス」などに乗って移動した

 今回ランボルギーニが開催した「ランボルギーニ・サステナビリティ・デイズ」は、カーボンニュートラルを、いかに実現していくのかを説明するのが目的のイベント。

 ランボルギーニは1963年に自動車収集家として知られていた故フェルッチオ・ランボルギーニ氏が、その趣味が高じて創業した自動車メーカーで、前出のミウラ、イオタ、カウンタックなどの日本でもよく知られるようになったスーパーカーを次々と送り出してきた。

 近年ではドイツの自動車メーカー「アウディ」の傘下企業となり(※アウディはフォルクワーゲン・グループの傘下企業なので、フォルクスワーゲン・グループの一社となる)、アウディと開発プラットホームを共有したりしながら、ランボルギーニ自体はスーパーカーメーカーという位置づけで運営している。

販売台数が好調のSUVモデル「ウルス」はV8エンジン搭載車
「アヴェンタドール」はV12エンジンを搭載したモデルだ
ウラカンSTOにはV10エンジンが搭載されている

 現在はV型8気筒エンジンやV型10気筒エンジンを搭載したウラカン、V型12気筒エンジンを搭載しているアヴェンタドールなどのスーパーカーに加えて、ハイエンドSUVでV型8気筒エンジン搭載のウルスが投入されるなど、多角的な車両ラインアップで人気を集めている。

 ランボルギーニの魅力と言えば、カーボンファイバーやアルミニウムのような高価な素材を多用した高性能のシャシーに、V8、V10、V12のようなこちらも高性能ハイパワーエンジンを組み合わせ、官能的なエンジン音が魅力となっており、SUVのウルスは別にして、街乗りよりもサーキットでの走行を楽しむようなそんな魅力が特徴と言える。

 その意味では、ランボルギーニはそうした環境対策とは対極にある存在に思えるかもしれないが、今の時代はたとえランボルギーニのような高級ブランドであろうが、地球環境への配慮がない自動車メーカーは生き残れない状況になりつつある。

 例えば“Z世代”と呼ばれるような若い世代は、ブランドの魅力の1つとして地球環境への配慮を含めるのが一般的で、そうしたことへの配慮が足りないとされると製品が買ってもらえなくなるという現実がある。今はまだZ世代はランボルギーニのメインストリームの顧客ではないかもしれないが、それが10年後、20年後を見据えれば、状況が大きく変わってくるのは明らかだ。

 また、そもそも地球環境の配慮というのは、車両単体だけで判断するものではない。結局のところ、多くの自動車メーカーがカーボンニュートラルの実現を目指しているように、大事なことは排出と吸収のバランスをとることなので、内燃機関を利用していても、カーボンニュートラルフューエルのような植物由来のバイオ燃料を利用する。あるいは水素を燃やすなどの方法で、限りなくそれに近づくことができるかもしれない。その意味でも、カーボンニュートラルを実現する道は1つではなく、さまざまな方法があり、各自動車メーカーがそれぞれに工夫して取り組んでいるのが現状となる。

筆者はこのウラカンEvoで宿泊施設からファクトリーまで移動した
さすがスーパーカーと思ったのは「車高調整スイッチ」で、車高が低いため下部を擦りそうな場所では、スイッチをオンにすると車高が上がる

2023年~2024年にハイブリッドモデルを投入し、2025年まで50%エミッション削減、2030年までにはバッテリEVも投入

ランボルギーニのサステナビリティの取り組み

 ランボルギーニ CEOであるステファン・ヴィンケルマン氏は「ランボルギーニはサプライチェーンのすべての段階を持続成長可能にしようと考えており、上流のサプライヤーを点数化するなどの取り組みを行なっている。また、ランボルギーニ自体としても2015年からカーボンニュートラルの実現を目指して取り組みを行なってきた」と述べ、ランボルギーニが本気でサステナビリティの活動に取り組み、サプライチェーン(自動車メーカーに部品を供給するサプライヤーを含めた製造時のつながりのこと)も含めて、持続可能な成長を目指して活動を行なっていると説明した。

内燃機関だけのモデルは2021~2022年で終了になる
2023年~2024年にはハイブリッドを加えたモデルを投入予定

 そして、欧州の各国政府が取り組んでいるゼロエミッション(CO2排出ゼロの自動車)への取り組み関しても触れ、「ゼロエミッションの取り組みは、欧州、いくつかのアジアの国、そして米国などが取り組んでおり、米国では2035年までにこれを実現するという意欲的な目標を掲げている。2021年を基準にして、2025年までに50%のCO2排出を削減し、2030年までにそれを80%に高める計画だ。そのため、内燃機関のみのモデルを出すのは2021年が最後となり、今後は何らかの電動化モデルをもった製品を市場に投入する計画だ」と述べ、今後ランボルギーニが発表する製品は、何らかの電動化されたパワーユニット(ハイブリッドやモーターなど)を搭載することになると強調した。

目標は2025年には、2021年対比で50%CO2排出を削減
180億ユーロの投資を行なう、ランボルギーニの歴史上過去最高の投資額

 その具体的な製品計画に関してヴィンケルマン氏は「2023年~2024年にはハイブリッドモデルをすべてのモデルでラインアップし、それにより2025年にCO2排出を2021年比で50%削減することを実現する」と述べ、2023年~2024年に発表するハイブリッドのパワーユニットを搭載したモデルにより、CO2排出を削減していくという同社のプランを説明。そしてそれらを実現するために、同社史上最高額となる180億ユーロの投資を行なっているとも述べた。さらに、その後第2段階の電動化として、2030年までにはBEV(バッテリ電気自動車)も計画されており、それらの取り組みにより2030年には2021年比で80%のCO2削減を実現すると強調した。

その後2030年までにEVを投入、2030年には2021年対比で80%のCO2削減の実現を目指すとしている
サステナビリティの取り組みは360度全方位で行なうとヴィンケルマン氏

ファクトリーでの塗装工程で使われる水を削減し、バイオマス燃料で加熱した温水を循環させるなどの取り組み

ランボルギーニ CMO(Chief Manifacturing Officer) ラニエリ・ニッコーリ氏

 ランボルギーニ CMO(Chief Manifacturing Officer) ラニエリ・ニッコーリ氏は、同社のファクトリー(工場)におけるサステナビリティの取り組みに関して説明を実施。

ランボルギーニが掲げるサステナビリティに向けた3つのコンセプト「回避」「削減」「相殺」

 ニッコーリ氏は「われわれの取り組みは、回避、削減、相殺という3つのコンセプトを掲げている。それぞれ効率の向上、CO2排出の地道な削減の取り組み、グリーン電力の認証などの取り組みだ」と述べ、同社の向上では高効率を目指し、少しでもCO2削減を実現する取り組みの推進、グリーン電力の証書の活用などの取り組みを通じて、ランボルギーニの生産プロセスを持続可能にしていくと説明した。

太陽光発電は2010年から導入している
工場に隣接する敷地にランボルギーニ・パークを作っている
高効率なオフィスビルは、グリーンビルディング認証プログラム「LEED(Leadership in Energy & Environmental Design)」の認証を受けている

 その具体的な取り組みとしては、太陽光発電のパネルを取り付けた工場のビル、1万のオーク(落葉樹)を植樹した公園(ランボルギーニ・パーク)を工場に隣接した場所に作り、CO2を光合成により酸素に換えて放出する取り組み、工場やオフィスビルの高効率化、バイオマス由来の燃料を利用して沸かしたお湯を利用して、塗装工程で塗装を乾かす時の熱源として利用する取り組みなどを説明した。

バイオマス燃料を利用した温水循環を構築
熱源から生産される熱や電気に加え、発生するCO2も有効活用するエネルギー供給システムとなるトリジェネレーションプラント
CO2ニュートラルに向けての遷移

 そうした取り組みにより、2015年にはCO2ニュートラルを実現した工場も誕生し、その当時よりも工場が拡大した現在でも、その状態が維持されていると強調した。

ウルスの塗装工程
車体は電車で輸送

 さらには2018年に開設されたウルス用の塗装工程では、95%の工程は水性の塗料を利用して行なわれているほか、25%のエネルギーの削減、さらに80%の塗料利用効率の改善、30%の工場の面積削減などが実現されていると説明した。また、ドイツのサプライヤーで組み立てられたボディは、「従来は自動車で配送されていたのを電車利用に切り替えた結果、85%のCO2削減につながった」と述べた。

ランボルギーニ・パークの自然をモニタリング
カーボンファイバーのリサイクリング、レザーのアップサイクリングなどを行なっている
バイオマス燃料を利用

 それ以外にもユニークな取り組みが行なわれており、2016年から前述のランボルギーニ・パークにおいて、自然の観察事業や、ミツバチの生態の調査研究などの自然モニタリング事業、シートなどに利用したレザーの残りから財布やiPhoneケースなどを作成するアップサイクル事業などに取り組んでいると幅広い活動を紹介した。

 最後にニッコーリ氏は「現在は2021年に比較して、無駄に捨てていたものが15.8%削減され、さらに無駄な水利用も15%削減しているなど、工場の床面積が増えているのにエネルギー消費は増えていない」と述べ、サステナビリティの実現に向けて確実に進化しているとまとめた。

2021年と比較して削減できている内容