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アイシン、次世代自動駐車支援システムにAMD SoC採用 2024年に登場する量産車に採用

2021年11月16日(現地時間) 発表

アイシンがAMDのZynq UltraScale+ MPSoCを次世代自動駐車支援システムに採用

 AMDは11月16日(現地時間)、同社がザイリンクス(Xilinx)を買収して得たFPGA(Field Programmable Gate Array)ベースの製品となる「AMD Zynq UltraScale+ MPSoCオートモーティブ・プラットホーム」(以下、Zynq UltraScale+ MPSoC)が、アイシンの次世代自動駐車支援(APA)システムに採用される計画だと明らかにした。AMDによれば、2024年から量産するモデルより採用される計画。

 AMDによれば、FPGAが採用されるアイシンの次世代自動駐車支援システムは、カメラと超音波で得られる周囲の情報を複合的に活用し、マシンラーニングベースのAIによりドライバーレスで自動駐車機能を実現することができる。また、ソフトウエアのコードは1つで、複数のグレードのZynq UltraScale+ MPSoCに対応することで、プレミアムセグメント向けだけでなく、普及価格帯のグレードなどにも適用可能なことがもう1つの特徴となっている。

FPGAのザイリンクスを買収したAMD、同社製品はテスラやスバルも採用

AMDの自動車向け半導体が採用されている自動車向けソリューション。テスラやスバルなどで採用されている

 AMDは、2020年10月にFPGAの最大手だったザイリンクスの買収を発表し、2022年2月に買収手続き(当局の許可、会社統合などの手続きのこと)をすべて完了。現在ザイリンクスはAMDの一部門となるAECG(Adaptive&Embedded Computing Group)に統合されている。

 AMDの自動車向けソリューションとしては、テスラ向けの車載情報システム向けなどがよく知られている。

 AMDはx86プロセッサ(一般消費者向けのRyzen、データセンター向けのEPYC)と、ゲーミング向けのGPU(Radeon)などで知られている半導体メーカーで、特にCPU市場では競合となるインテルに先駆けて新しい技術を投入することで、インテルからシェアを奪い続けている。近年はそうしたCPU、GPUの強みを自動車向けに投入して、テスラなどに採用されている。

 AMDの一部門となったザイリンクスは、長年自動車向けのビジネスを展開してきており、同社が提供している半導体製品は多くのティアワンの部品メーカーや自動車メーカーなどに採用されている。その代表例は、日本の自動車メーカーであるスバルの「アイサイト X」だろう。

 アイサイト XにはAMD(当時はザイリンクス)が開発したZynq UltraScale+ MPSoCが採用されており、高い安全性能を実現することが可能になっている。

AMDの自動車向けビジネスは年率2桁成長している

 Zynq UltraScale+ MPSoCには、Arm CPU(Cortex-A53/2コア、Cortex-R5F)、Arm GPU(Mali-400MP2)などの汎用演算器のほか、プログラマブルロジックと呼ばれるFPGAが搭載されている。CPUやGPUが最初から整数演算や浮動小数点演算などのどのような処理に適しているのかをハードウエア的に規定されているプロセッサであるのに対して、FPGAはソフトウエアによりどのように使うかを後から定義することができる演算器を備える。このため、ユーザーの目的に合わせて柔軟に利用することが可能になっている。それらのCPU、GPUそしてプログラマブルロジックを活用することで、他社のCPUやGPUだけの製品に比べて高い電力効率で高性能なシステムを構成することが可能になる。

ドライバーの介入が必要になる自動駐車支援システムを、フル自動にするAMDのZynq UltraScale+ MPSoC

AMD AECG オートモーティブ製品マネジメントおよびマーケティング担当 シニア・マネジャー レハン・タヒル氏

 AMD AECG オートモーティブ製品マネジメントおよびマーケティング担当 シニア・マネジャー レハン・タヒル氏は、従来の市販車で採用されてきたような自動駐車支援(APA)システムと、アイシンが採用を決めたZynq UltraScale+ MPSoCを搭載した次世代自動駐車支援システムの違いに関して「4個のカメラと12個の超音波センサーを搭載しており、それらのセンサーのデータを融合して周囲の情報をリアルタイムに把握して、マシンラーニングベースのAIがそのデータをリアルタイムに読み込んでドライバーレスの自動駐車機能を実現することができる。また、複数のグレードのZynq UltraScale+ MPSoCを利用することで、プレミアムセグメントの車両だけでなく、より安価な一般消費者向けの車両など幅広い価格帯に対応することができる」と説明した。

自動駐車支援(APA)システムの潜在市場性

 現在市場で販売されている一般的な自動駐車支援システムは、カメラなどのセンサーを利用して駐車スペースの把握を行なうことはできるが、駐車位置などの指定はドライバーが能動的に行なうなどの制限がある製品が多い。タヒル氏がいうドライバーレスの自動駐車とは、そうしたドライバーの介入を減らし、最終的にはそれをなくすことで、例えばスマートフォンから操作して自動車を駐車するなどのドライバーレスで駐車機能を実現するという意味になる(アイシンの製品でそうした機能が実装されるということと同義ではなく、あくまで実現が可能になるということ)。

次世代のシステムではドライバーの介入を減らす方向に発展していく
アイシンのシステムは4個のカメラ(前後と左右ミラー)と12個の超音波センサーとAIを利用してフル自動での駐車を実現

 タヒル氏によれば、4個のカメラと12個の超音波センサーが想定されており、それを利用して駐車位置を特定する。次にハンドルやダッシュボードにあるスイッチを押すことで、駐車位置ターゲットの特定が行なわれ、それ以降はAIが自動でハンドルやアクセル、ブレーキなどを操作しながら駐車位置へと移動する。縦列駐車や斜め駐車もできるということで、より高度な自動駐車支援システムを実現可能としている。

アイシンがAMDを選んだ理由

 現在の自動駐車支援システムはプレミアムセグメント車両向けであり、高性能な半導体を利用して構成されていることが多く、システムのコストは決して安くない。しかし、Zynq UltraScale+ MPSoCという複数の価格帯向けのグレードが用意されている半導体を活用することで、1つのソフトウエアコードを利用して複数セグメントに展開することが可能になるとタヒル氏は強調した。これは、普及価格帯の自動車などにもこうした次世代自動駐車支援システムを用意することを意味する。

AMDの自動車市場での可能性
機能安全を実現

アイシンは2024年から量産開始する計画

 こうしたAMDの発表に対して、アイシンの走行安全カンパニーPresidentである大下守人氏は、「当社が考えるAPAシステムは複雑なAIを活用したもの。アイシンでは高性能かつ低レイテンシを実現するSoCを求めており、AMD Xilinx XA Zynq UltraScale+ MPSoCプラットホームはそれに応えるものだった。基本的なサラウンドビュー・システムによって、駐車を行なう際の負担は一部軽減されたが、新しいAPAシステムでは、狭いスペースでの駐車の負担を大幅に軽減する。このソリューションの開発に着手し、お客さまにお届けできることをうれしく思っている」というコメントを出している。

 AMDによれば、アイシンのZynq UltraScale+ MPSoCを搭載した次世代自動駐車システムは、2024年に量産する製品に採用される計画となっており、アイシンの顧客となる自動車メーカーが2024年に量産開始する車両に採用される可能性が高いと言えるだろう。