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アウディのEVで屋久島を巡る「アウディ・サステナブル・フューチャー・ツアー」 持続可能エネルギーで島全体の電力を賄う水力発電所を見学してきた

2023年7月10日〜11日 開催

屋久島町役場に新たに設置された設備で充電を行なう屋久島の荒木耕治町長(右)とアウディジャパン ブランド ディレクターのマティアス・シェーパース氏

ツアー3回目は脱炭素に最も近い島、屋久島へ

 電動化戦略「Vorsprung(一歩先に行く)2030」に基づいたプレミアムモビリティを提供する企業へ向け変革し続けているアウディ ジャパンが、「持続可能な社会の実現の重要性について、一人一人が考えるきっかけの場を作る」ことを目的として企画・実行しているのが「アウディ・サスティナブル・フューチャー・ツアー」。

 2022年4月にはゼロカーボンシティの先駆けとなっている岡山県真庭市を、10月には日本で最初に地熱発電所を運転させた岩手県八幡平を訪れた。第3回となる今回は、島内のほぼ全ての電力を再生可能エネルギーである水力発電で賄うことで、脱炭素に最も近い島といわれる鹿児島県屋久島を7月10日、11日の2日間で訪問。実際の発電の現場を見学するとともに、屋久島高校でのアウディ ジャパンによる出張授業や、屋久島町役場で行なわれた未来共創ミーティングなどに参加した。

 東京から約1000km離れた屋久島は、世界自然遺産の縄文杉がシンボルとなっているだけでなく、年間平均降水量が日本平均の2倍の4500mmという、雨の島といわれているのはご存知の方も多いはず。例えば林芙美子の小説「浮雲」の中で、屋久島は「ひと月に35日雨が降る」という一節があるくらいだ。

 羽田から鹿児島経由で屋久島空港に到着すると、そこには島内の移動に使用するe-tronの各モデルがわれわれを待っていた。用意されたのは13台で、そのうち10台は東京から、3台は九州から船便で島に送り込むという力の入れようだ。そして最初に筆者の相棒となったのが鮮やかなタンゴレッドMの「RS e-tron GT」。島内の道路は決して広々というわけではないので、幅が2m近いクルマで走るのは結構気を使うものだが、ドライバーズシートからの視界がよくて走行中の騒音がなく、そして交通量も少ないのですぐに慣れた。

 空港から8km、約15分ほど走って最初に訪れたのは、屋久島の食材をふんだんに使ったランチを提供する「レストラン杉匠」。名物のトビウオの唐揚げをいただいてエネルギーをチャージした後、まずは標高1000m付近にある自然休養林の「ヤクスギランド」で30分間のトレッキングの体験だ。準備してきたモンベルのストームクルーザージャケットや足元のダナーはこうした散策にはぴったりで、アップダウンが多いながらも整備された遊歩道が心地よい歩行を提供してくれ、約270ヘクタールのコース内にある巨大な千年杉やCMのロケにも使用されたという苔むした杉林を見ることで、雄大な島の自然を頭の中に叩き込むことができた。

名物のトビウオの唐揚げ
約270ヘクタールのコース内にある巨大な千年杉
CMのロケにも使用されたという苔むした杉林

 次は、島の電力消費量の99.5%を賄うという水力発電を支える島唯一のダム「屋久島電工尾立ダム」を見学。今回は珍しく2日つづきの好天だったため豪快な放水を間近で見ることができなかったけれども、貯水量200万tという電力の源となる水のエネルギーを実感することができた。続けて14km下流にある安房川第2発電所へ。ここでは特殊なエレベーターで地中に向かって150mも下り、屋久島のカーボンニュートラルの要である巨大なタービンなど普段立ち入ることのできない発電施設を見ることができた。

「屋久島電工尾立ダム」
安房川第2発電所

屋久島高校で出張授業、島との包括連携協定も

「THE HOTEL YAKUSHIMA」に一泊した2日目は、島内唯一の公立高校である屋久島高等学校を訪問し、アウディジャパンによる出張授業を参観。体育館に集まった120人の生徒らに対してアウディジャパンのブランド ディレクターでフォルクスワーゲン グループ ジャパン代表取締役社長のマティアス・シェーパース氏が、アウディの環境に対する取り組みを紹介。再生可能エネルギーとはなにか、CO2排出削減に対して自動車会社は何ができるのか、電気自動車がかなえる持続可能な未来、などについて若い世代にアピールした。

 生徒からは「リーダーとして必要なものはなんだと考えますか、電気自動車が100%になるのはいつ頃になりますか」とシェーパース氏へ鋭い質問も。校庭に集結したアウディのBEV「e-tron」各モデルに初めて触れた生徒たちからは、「1台いくらなんですか?全部電気で走るんですか?」などの声が聴かれた。

 プログラムの最後は、建物全体が屋久杉で作られた屋久島町役場を訪問。屋久島における脱炭素による地域振興・貢献を目指す包括連携協定の成立に向けた基本合意書を、アウディ・ジャパン、屋久島町、株式会社ファーレン九州(鹿児島市のアウディ正規販売店)の3者間で締結した。

(写真左から)屋久島の荒木耕治町長、アウディジャパン ブランド ディレクターのマティアス・シェーパース氏、ファーレン九州の金氣重隆社長が、基本合意書を締結

 シェーパース氏は「今回、屋久島において、こうしたパートナーシップが実現できたことを大変嬉しく思っています。屋久島には屋久杉を代表する多くの自然と人々が共存しており、島内で使用される電気のほぼ全てが水力発電で作られた再生可能エネルギーで賄われている、日本でも稀有な脱炭素に一番近い島です。アウディは自動車のライフサイクルにおけるカーボンユートラル化を進めており、自然と人が共存し、島全体でサステナビリティに取り組んでいる屋久島町の皆様をサポートしたいと考えました。今回のパートナーシップを通して、自動車メーカーとして何ができるのかを考え、さまざまな分野で連携していきたいと考えています」とあいさつ。

 さらにファーレン九州の金氣重隆社長は「今回アウディとともに鹿児島の企業として、屋久島との包括連携協定に向けて協議を開始できることを大変嬉しく思います。この取り組みを通して屋久島のさらなる魅力を発信し、地元鹿児島県の発展に貢献していければと考えています。具体的にはアウディe-tronによるレンタカー事業の開始と、公用車/社用車としての貸し出しを行いたいと思います」と述べた。

 これを受けた屋久島町長の荒木耕治氏は「屋久島が世界自然遺産登録されて30周年という節目の年に、このような取り組みに参加できて嬉しく思います。登録後は国内外を問わず多くの観光客の方に屋久島を訪れていただけるようになりましたが、一方で島のほぼ全ての電力が水力発電で賄われており、脱炭素に非常に近い島であることなどはあまり知られていません。屋久島の自然環境は豊富な水によって作られています。今回の取り組みを通して、新たな屋久島の魅力を国内外に向け届けていきたいと考えています」とコメント。

 シェーパース氏、荒木町長とともに屋久島高校の生徒を交えてディスカッションを行なう「未来共創ミーティング」では、屋久島高校の環境コースと情報ビジネス課の生徒らによる自然環境への取り組みが紹介されたほか、なぜアウディが屋久島に注目したのか、屋久島が電気自動車導入に積極的な理由、悠久の自然を持つ屋久島の持続可能な未来などについての活発な議論が行なわれた。

 アウディ ジャパンでは今後、屋久島での電気自動車の普及によってさらに脱炭素を推し進めるため8kW普通充電器を7台設置するとともに、電気自動車「e-tron」の貸し出し、高校生が未来を考えるための島外(豊橋本社など)での学習機会の提供するなど包括的な支援を行なうとした。