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トヨタ、スーパー耐久参戦のGRヤリス8速AT車に「サメ肌サイドミラー」投入 最高速度を1km/h上げてCd値を0.0005引き下げ
2024年10月25日 14:57
スーパー耐久第6戦岡山が10月26日~27日の2日間にわたって岡山国際サーキットで開催される。それに先立つ25日、岡山国際サーキットでは各車両の練習走行が行なわれていた。
スーパー耐久ST-Qクラスに32号車で参戦しているルーキーレーシングは、この岡山ではORC ROOKIE GR Yaris DAT conceptを投入。GRヤリスの8速AT GR-DAT搭載車で挑んでいく。
前戦の鈴鹿において新溶接方式によってボディ強化を行なったGRヤリスは、ボディ強化がうまくいきすぎて車体とサスペンションまわりの剛性バランスが難しいものとなっていたが、GRヤリスの開発を担当する齋藤尚彦主査は岡山戦において「サスペンションを強化してバランスを取った」という。前回は、「胸まわりの筋肉をモリモリにつけたクルマになっていた」が、今回は動的な部分であるサスペンションアームなどを強化。具体的には開断面のアームを閉断面にしたことで強化したという。
「強化したボディを緩めるなどの考えは?」と聞いたところ、「それでは進歩がない」とのこと。よりよいクルマに向けて開発を行なうため、前へ前へと進めていくのだという。剛性バランスなどは、この練習走行によってセッティングしていくとのことで、今回は鈴鹿よりもよい戦いを見ることができそうだ。
そして、齋藤主査は岡山を迎えるにあたって、2つの新しいアイテムを投入。そのうちの1つが、「サメ肌サイドミラー」というもので、サイドミラーの正面や天面をサメ肌にすることで空気抵抗を下げ、最高速の向上を狙っているのだという。
現代のクルマにとってサイドミラーまわりは、空気の乱流がものすごく発生する部分で、この乱流の制御に各社は工夫を凝らしている。トヨタも通称「お魚フィン」と呼ばれるエアロスタビライジングフィンで、サイドミラーまわりやリアまわりの空気を制御。プリウスの空気抵抗低減に一役かっているのはよく知られている部分になる。
実はこのエアロスタビライジングフィンの開発者の1人が齋藤尚彦主査で、開発部にいたときに開発したとのこと。特許も取得しており、特許公報などで確認できる。
そんな空力にこだわりのある齋藤尚彦主査が投入したサメ肌サイドミラーは、シンプルな構造となっている。よく見ると分かるが、少し厚めのアルミシートでできており、裏から型を押しつけることでサメ肌を作り出している。
このサメ肌により、サイドミラーまわりの空気が剥離しにくくなり、乱流の発生を抑制できる。乱流の発生を抑制できれば空気抵抗係数が下がり、結果として最高速は上昇し、同じ最高速であれば燃費がよくなる。一般に空気抵抗(空気抵抗係数×全面投影面積)は速度の2乗で増加し、速度を得るために必要な馬力(エネルギー)は、力に速度を乗じたものなので、空気抵抗は速度の3乗で影響してくる。そのため、高速域で走行するクルマにとって、ものすごくメリットとなるアイテムになるかもしれない。
実際に影響は計測したとのことで、その効果は「最高速度は1km/hアップしました。空気抵抗係数も計測しましたが0.0005下がっています」とのこと。サメ肌のアルミシートを貼るだけで、それほどの数字が出るとは驚きだが、その数字を真面目に測っているトヨタにも驚きだ。
トヨタと言えば、クラウンセダンなどに使われているアルミシートを空気抵抗低減に用いるメーカーとしても知られている。そのあたりについても聞いてみたが、「その効果も狙っていますが、数字としては確認できていません」とのこと。サメ肌はとくに流れを意識したものではなく、ザラザラ感を狙ったもののようで、アルミシートと型押しだけでできるのであれば試してみる価値はあるのかもしれない。
岡山戦でのドライバーは、MORIZO選手、豊田大輔選手、佐々木雅弘選手、小倉康宏選手とアナウンスされており、各ドライバーのコメントなどによってセッティングを行なっていくようだ。
【お詫びと訂正】記事初出時、Cd値が0.05と掲載しましたが、その後連絡があり0.0005下がるとのことです。本文、タイトルを修正しました。