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シトロエン、新デザイン言語でフェイスリフトした新型「C4」 チーフデザインオフィサーのピエール・ルクレール氏がオンライン解説
2025年3月27日 13:00
- 2025年3月27日 発表
シトロエン(Stellantisジャパン)は、Cセグメントの新型クロスオーバーSUV「C4(シーフォー)」について、シトロエンのチーフデザインオフィサーであるピエール・ルクレール氏、同カラー&マテリアルデザイナーの柳沢知恵氏が解説するデザインプレゼンテーションを開催した。
現行モデルである3代目C4は、2022年1月に日本での販売が開始された車両。2024年10月に行なわれたパリモーターショーで公開された新型では、現在使用されている新デザインのロゴマークを中央に備える新たなフロントマスクが与えられ、リアビューでもコンビネーションランプの配光パターンなどを一新するマイナーチェンジが実施されている。
インテリアではデジタルメーターが5.5インチから7インチにサイズアップして視認性を高め、表皮にテップレザーとアルカンターラ素材を組み合わせてクッション厚も15mmに拡大した新しい「アドバンストコンフォートシート」を採用。
このほかにパワートレーンでは、新たに直列3気筒1.2リッターターボエンジンと48Vシステムによるモーターアシストを組み合わせるハイブリッドシステムをシトロエンモデルとして初導入する。
デザインプレゼンテーションと合わせて行なわれたプロダクト解説では、シトロエン ブランドマネージャー 中山領氏が新型C4の日本導入モデルについて紹介。
中山氏は大きなトピックとして、シトロエンブランドで初導入となるハイブリッドシステムを新型C4にラインアップしていることを挙げ、PSAグループ時代に生み出された「EB2型」の直列3気筒1.2リッターターボエンジンと48Vシステムによる総電力897.9Whのリチウムイオンバッテリ、16kWの出力を持つ駆動用モーターを組み合わせ、合計出力は145PSを発生。これによって実現した23.2km/L(WLTCモード)の燃費はCセグメントではナンバーワンであり、輸入車全体でも3番目となる魅力的な数値であるとアピールした。
技術面では、エンジンはハイブリッド化に合わせて進化を遂げ、タイミングチェーンの採用で耐久性を向上させた「EB2LT型」になっており、トランスミッションの6速DCTは湿式デュアルクラッチを採用することで滑らかな変速を実現。駆動用モーターは30km/h前後までモーターのみでの走行を可能としているほか、80~120km/hという中高速走行中でもモーターアシストを行ない、1回減速して再加速するようなシーンでターボラグによる加速の鈍りを埋めるような用途にも利用されるという。これにより、力強い発進加速や燃費向上に加え、ファントゥドライブという面にもハイブリッドシステムが寄与するという。
また、インテリアについては「シトロエンと言えばファブリックシートを思い浮かべる人も多いかもしれませんが、テップレザーとアルカンターラを組み合わせたこのシートの肌触りも非常によく、シトロエンの歴史的なモデルである『CX』『GS』で採用されたモケットのふっくらとしてホールド性も非常に高いあのシートを、今回のアドバンストコンフォートシートで再現できているのではないかと考えております」と説明している。
有機的な曲面にテクニカルな直線パーツを組み合わせてコントラストを強調
フランス・パリにあるスタジオとのオンライン接続で行なわれたデザインプレゼンテーションでは、最初にシトロエンデザインの歴史とDNAについてルクレール氏が解説。
「新しいことへの挑戦を恐れないブランド」というシトロエンだが、会社統合によって2021年にStellantisが設立され、数多くのブランドが1つの会社になった現在では、自分たちがこれまで何をしてきて、これからどうしていくべきかを考えることが非常に重要になっているという。
100年を超える歴史を持つシトロエンでは、シンプルな数本のラインで表現できるアイコニックなモデルが多数存在し、遠くから見ただけでシトロエン車だと分かる特徴的なシルエットについて、これからも継承していきたいポイントだと説明。2020年に登場した電動マイクロカー「アミ」でもこのような魅力を表現できていると解説した。
また、「自動車業界に一石を投じる」こともシトロエンにとって重要な使命であり、「予想を超えるアイコン」を生み出すことも自動車業界に新たな提案を投げかける1つの手段。一方、自身がシトロエンで仕事をするようになった6年前のモデルラインアップでは、統一感があり、分かりやすい表現が行なわれていたとふり返る。
そこでは曲線基調のラインを使ったラウンドフォルムのグラフィックでボディを構成。多彩な色彩も利用されていたが、競合他社との競争で勝ち抜く競争力を手に入れるため、さらなる進化が必要だと会社側から求められたほか、多用されていたカラーアクセントについてもユーザーからの評価が分かれており、この部分についても改善が必要と考えられていたという。
その視点に立って過去をふり返ると、シトロエンのモデルは必ずしも曲線基調のボディを持っていたわけではなく、有機的デザインが一時期世界的なトレンドになっていた流れにシトロエンも乗っていたのではないかと分析。この傾向を観察していくと、曲線基調のデザインでは、ヘッドライトやテールランプなどの機能部品についても曲線的なラインに埋め込まれるようになっていく点が興味深いと述べ、このデザイントレンドの延長線上にある究極的なモデルはポルシェの「911」であり、ヘッドライトやテールランプなどの機能部品を曲線のラインで表現していると指摘した。
こうした分析を踏まえ、ルクレール氏は着任直後にデザインチームを引き連れてパリを巡り、1週間かけてその後のシトロエンモデルに反映するための「新しいデザイン言語」について話し合っていったと説明。これによって「ブランドとしてのリセットボタンを押した」という。
デザインチームでは、シンプルですっきりとした表面処理のデザイン表現については引き続き守っていくことを確認。これは外観デザインでは豊かな表面表現であり、インテリアでは居心地のよさにつながるもので、デザイン言語としては「軽く見せる」ことが非常に重要だと説明した。
一方、曲線による表現だけではなく、丸いものに直線的でテクニカルなパーツを組み合わせることで強いコントラストを演出。インテリアデザインの例としては、フランス本国や欧州市場ですでに販売がスタートしている新型「C3」「C3 エアクロス」、今後発表する予定の「C5 エアクロス」で新たに採用したインテリアイメージを紹介。柔らかいラウンドフォルムを持つ心地よい肌触りのソファの背もたれに、家電量販店に置かれている製品のようなシャープな印象のテクニカルなパーツを組み合わせることで、まるで異なるデザイナーが担当しているような違いを演出している。
より具体的な例としては、2022年のパリモーターショーで発表した「Oli concept(オリ コンセプト)」を挙げ、白く塗装されたボディパネルにはふっくらと豊かな面構成を与えている一方、ヘッドライトや黒く塗り分けたバンパー、フェンダーといった機能部品には、ナイフで切り取ったようなシャープな表現を実施。このようなデザインにより、プジョー、DS、アルファ ロメオといった、同じStellantis内にある「自動車らしいブランド」との差別化を図っているとした。
3個の四角形でダブルシェブロンを連想させるトライアングルを表現
フロントマスクについての詳細解説も行なわれ、3代目と4代目のC3における違いを例として紹介。3代目C3では当初、フロントグリル中央のダブルシェブロンからそれぞれ両サイドにクロームラインとして伸ばし、下のラインはDRL(デイタイム・ランニング・ライト)と隣接させていくデザインを採用。そこからマイナーチェンジではDRLを下に移動させ、ダブルシェブロンから続くラインを両サイドで広げて新たなトライアングルを描くスタイルに変更した。
しかし、シトロエンでは創業当時のロゴに立ち戻るべく、2022年に新しいロゴマークを発表。これにより、4代目C3の新しいフロントマスクではこれまでとまったく違う形状を生み出す必要が出てきた。新ロゴマークを中央に配置したフロントマスクでは、両サイドに各3個の四角形を設定。それまで両サイドにあったダブルシェブロンを、3個の四角形による3点で描くトライアングルに置き換えていると解説。この構成はこれから登場するすべてのシトロエン車に適用されていくデザインエッセンスになるという。
この新しいデザイン言語を採り入れたフロントマスクは視認性が高く実用性に優れ、フロントとリアに共通点を与えることも可能になるほか、なにより自動車業界でもこれまでにないユニークなデザインになっており、垂直と水平を組み合わせたデザイン要素は幅広い車格のモデルに展開することが可能となっていると説明した。
また、従来使われていた主張の強いカラーアクセントに変わるアイデアとして、新しいデザイン言語では「カラークリップ」と呼ばれるニューアイテムを作成。ヘッドライトと共通するシンプルな直線ラインで構成されるカラークリップは、車両に付属するツールを使って簡単に取り外すことも可能で、外したカラークリップを塗装することで蛍光カラーに変更したり、サッカーのワールドカップ開催期間には自分が住む国の国旗に変えるといった楽しみ方もできると紹介。大小2種類を用意して車両に合わせて展開するという。
CXやGSから着想を得た「チョコレートタブレット」をシートに設定
新しいデザイン言語を反映することになったC4のデザイン変更では、フロントマスクについて「少し複雑すぎるラインで構成されている」と考え、より力強さを感じさせるデザインに生まれ変わらせるため新たなデザインスタディを作成。美しいスタイリングのエクステリアに機能的な内装を組み合わせるイメージでデザインを進めていったという。
新旧C4のフロントマスクを比較すると、新しいC4ではフロントバンパーのより低い位置までボディカラーが続いており、力強いがっしり感を演出しつつ、よりグラフィカルに車幅をワイドに見せることを目指している。新形状のヘッドライトは新しいC4にとって非常に重要なデザイン要素であり、水平基調の形状でワイド感を強調。3セグメントのLEDバーの組み合わせでトライアングルを形成し、ほかのメーカーにはないユニークな表現となっている。中央に置かれた新ロゴマークは垂直方向に長く、誇り高いイメージを表現しており、フロントアンダーグリル内には2本のカラークリップが垂直方向にレイアウトされている。
リアビューではシンプルなデザインにしていくことを心がけ、従来はさまざまな方向に伸びていたラインを水平基調に統一。これによってプロポーションが変化してシリアスな雰囲気を漂わせるようになり、車格を引き上げるような視覚演出を発揮している。また、リアハッチに設置されていたダブルシェブロンが「CITROEN」の社名表記に変更されたが、これは新ロゴマークが縦に長い形状で、スペース的に収まらないことを受けた変更となっており、これも新しい雰囲気を演出する部分になると説明された。
車両側面では、従来モデルでフロントドアの下側にあった六角形のカラーアクセントを廃し、代わってリアドア下にカラークリップを配置。また、空力性能を高めた新形状の18インチアルミホイールも装備している。
インテリアでは7インチのデジタルメーターを採用して視認性を高めたことに加え、新型C3、C3 エアクロスでも使われている新形状のシートを導入。シートのセンター部分にCXやGSといったシトロエンの歴史的モデルのシートから着想を得た「チョコレートタブレット」(板チョコレート)と呼ばれるデザインを施している。また、シートの変更に伴ってクッション厚も増加して快適性が向上しており、シートバック上部のUシェイプが上半身をしっかりとサポートする形状となっている。
また、1月からStellantisジャパンでシトロエン&プジョーが属するフレンチブランド事業を統括している小川隼平氏がプレゼンテーションの最後に登場。
シトロエンの新デザイン言語は日本で2024年10月に発売された新型「ベルランゴ」から採用されており、初期の段階では一部でアレルギー反応も起きつつ、現在では急速に市場に受け入れられ、この要因としてベルランゴの販売が非常に好調に推移していることがあると説明。新型ベルランゴは現在シトロエン&プジョーで最も販売台数が多いモデルとなっており、新デザイン言語自体がシトロエン&プジョーブランドの屋台骨を支えているとアピール。新型ベルランゴと同じくシトロエンの新デザイン言語を採用した新しいC4を、ぜひ実車で見て、その洗練された内外装が持つポップなデザインの魅力を体感してほしいと語った。
新型C4にラインアップするハイブリッドモデルはStellantisジャパンとしても初めて導入するハイブリッドカーであり、シトロエンらしいコンフォート性能を高める完成度の高いパワートレーンに仕上がっていて、自身でもC4を試乗して実感できたと語り、ぜひ新しいC4に試乗して体験してほしいと述べている。