インプレッション

三菱自動車が満を持して送り出した新型SUV「エクリプス クロス」(車両型式:DBA-GK1W)、その実力を公道で試した

デザイン、実用性、走りのバランスが絶妙

“クーペ”しすぎていない

 コンパクトSUV市場の拡大、とりわけスポーティモデルの人気を受けて、三菱自動車工業が満を持して送り出した世界戦略を念頭に置くニューモデル。その実力の片鱗を、すでにクローズドコースで乗ったプロトタイプでも味わったのは既報のとおりだが、いよいよ公道で量産モデルに乗る機会が訪れた。

 あらためて見ても、スタイリッシュなフォルムはもとより、三菱独自の「ダイナミックシールド」と呼ぶフロントフェイスや深くえぐったサイドのキャラクターラインは、見た目にもなかなかインパクトがある。

 このところクーペSUVの中にもいろいろなタイプが見受けられるようになったが、「エクリプス クロス」は車高がそれほど低くなく、Cピラーも極端に寝かされておらず、あえてあまり“クーペ”しすぎていないようだ。それは見た目だけでなく、いろいろなものがそつなくまとまっているという意味も含めて。クーペ的な要素を高くするほど実用性や快適性が損なわれるのは言うまでもないが、エクリプス クロスの場合は、そう感じさせる部分がほとんどないことを、あらかじめお伝えしておこう。

 まず感じるのが、前後席とも乗降性がよいことだ。サイドステップとフロアの段差が小さいことに加えて、クーペフォルムながら後席もあまり頭をかがめることなく、また足を移動させるときも窮屈な思いをすることなく乗り降りできる。また、三菱車として初めてサイドシルがドア側の下端でカバーされたおかげで膝下を汚す心配もない。

2017年12月22日に受注開始、3月1日に正式発売となった新型コンパクトSUV「エクリプス クロス」。車名は1989年から米国で販売していたスペシャリティクーペ「エクリプス」と、クロスオーバーの略である「クロス」を組み合わせたもの。今回試乗したのは最上級グレード「G Plus Package」の4WDモデル(309万5280円)で、ボディサイズは4405×1805×1685mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2670mm
フロントまわりでは三菱自動車のフロントデザインコンセプト「ダイナミックシールド」を用いて力強さを表現するとともに、G Plus PackageではLEDヘッドライトなどを標準装備。足下は切削光輝仕上げの18インチアルミホイールと東洋ゴム「プロクセス R44」(225/55 R18)。また、エクリプス クロスでは「衝突被害軽減ブレーキ(FCM)」「車線逸脱警報システム(LDW)」「誤発進抑制機能(前進&後退)」を全車標準装備するとともに、G Plus Packageについてはレーダークルーズコントロールシステム(ACC)、後側方車両検知警報システム(レーンチェンジアシスト機能付、BSW/LCA)、後退時車両検知警報システム(RCTA)といった機能も標準で装備される
テールゲートを直線的に落とし込んでオーバーハングを切り詰めたリアエンドでは、テールランプと前傾したリアウィンドウを上下に二分した特徴的なデザインを採用。チューブ式LEDテールランプと中央のハイマウントストップランプが同一直線上で発光することにより、幅広さや安定感を表現したという
パワートレーンは新開発の直列4気筒DOHC 1.5リッター直噴ターボ「4B40」エンジンと8速スポーツモード付CVTの組み合わせ。最高出力は110kW(150PS)/5500rpm、最大トルク240Nm(24.5kgm)/2000-3500rpmを発生し、JC08モード燃費は2WD車が15.0km/L、4WD車が14.0km/Lとなっている
エクリプス クロス、アウトランダー、RVR基本寸法&室内空間(参考値)
エクリプス クロスアウトランダーRVR
全長×全幅×全高(mm)4405×1805×16854695×1810×17104365×1770×1630
ホイールベース(mm)267026702670
トレッド前後(mm)1545/15451540/15401525/1530
オーバーハング フロント/リア(mm)955/780990/1035930/765
最低地上高(mm)175190195
アプローチアングル20.3度19.5度19.5度
ディパーチャ―アングル30.8度21度31.5度
室内長×室内幅×室内高(mm)1870×1490×12402580×1495×12651865×1480×1260

後席乗員に優しい

 運転環境も申し分ない。適度に高めの目線はもちろん、実際にドライブしても視界がとてもよいことが分かる。斜め後方については外観から想像できるとおりやや死角が気になるものの、前方とその左右脇、側方ともに見晴らしがよく、真後ろも上下2分割式になっているおかげで不自由を感じることはない。インパネの質感も申し分なく、いろいろなものが見やすく、使いやすくレイアウトされている。コネクティビティについては、今回はじっくり試す時間がなかったのだが、話を聞くにつけ非常に便利に使うことができそうだったので、いずれ機会があればあらためてしっかりレポートしたい。

 後席は座面を200mmも前後スライドできることと、背もたれを9段階もリクライニングを調整できることがポイントだ。このクーペフォルムながら、筆者が座っても頭上はコブシを横に1つぶんの空間があるし、膝前も十分で、最後端までスライドすると足を組めるほどの広さとなる。

シート地はファブリックが標準となるが、GおよびG Plus Packageではオプションで本革シートも用意される。後席は6:4分割可倒式となり、スライド&リクライニング機構も備わる。スライド量は200mm、リクライニング角度は16~32度の範囲で9段階から選択できる

 Cピラーの太さや角度の設定も絶妙で、乗降時にあまり頭をかがめずに済むし、乗り込んでからも後席乗員の視界をできるだけ遮ることのないよう配慮したことがうかがえる。細かく調整できるリクライニング機構が重宝するのも言うまでもない。静粛性についても概ね気になることはなく、SUVでは気になりがちな後方からの音の侵入もよく抑えられている。もっと高価な上級モデルを含め、これほど後席乗員にとって優しいクーペSUVというのはなかなかないように思う。

エクリプス クロスのインテリアはいずれのグレードもブラックを基調とし、水平基調のインパネにシルバーのフレームを与えることでダイナミックさを表現
G Plus PackageではApple CarPlay、Android Autoに対応するスマートフォン連携ディスプレイオーディオ「SDA」を標準装備。センターコンソールに配置するタッチパッドコントローラーでSDAの操作を行なえる。センターコンソールには車両運動統合制御システム「S-AWC」の切り替えスイッチも備わり、「AUTO」「SNOW」「GRAVEL」という3モードから選択可能
インパネ下にUSBポートが2つ備わり、手持ちのスマホをUSBポートにつなげることでApple CarPlayやAndroid Autoのアプリを利用できる
「S-AWC」の切り替えを行なうと液晶ディスプレイに選択画面が表示される
同社初採用のカラーヘッドアップディスプレイ。車速、シフトインジケータ、ナビ矢印といった情報を確認できる

 ラゲッジスペースも十分に広い。後席の居住空間をもっとも広くした状態でも、これだけあれば不自由は感じないだろうし、必要に応じていろいろアレンジできるところもよい。

 こうしてスタイリッシュさを保ちつつも、使い勝手にかかわる諸々のせめぎ合いを上手く帳尻を合わせていることには感心させられる。

ラゲッジスペースのレイアウト例。リアシートを最前端にスライドさせることで448Lの容量を確保し、リアシートバックを倒せば荷室長は最大1569mmまで拡大可能

快適な乗り心地とクイックなハンドリング

 そつない仕上がりは走りの味付けも同様だ。もっとクーペらしくスポーティに特化することも検討したことだろうが、やりすぎていないところがよい。走りに関するいろいろな要素がとてもバランスよくまとめられている。

 乗り心地は前後席ともいたって快適性で、ストローク感のあるサスペンションは、路面の凹凸を巧みにいなしてくれる。アンジュレーションのある路面ではやや抑えの利いていない感もあるものの、そこをあまりきつく締めていないおかげで、この快適な乗り心地が実現しているのならそれでよいと思う。

 一方で、ハンドリングはなかなかクイックな味付けで、そこはいかにもクーペっぽい。それでいてステアリングの切り始めは適度にマイルドに味付けされているので乗りやすく、センターの据わりがよく直進安定性にも優れるので、リラックスしてドライブできるところも好印象だ。

 1.5リッター4気筒ターボと8速CVTを組み合わせたパワートレーンの動力性能は十分で、市街地はもちろん高速巡行や再加速でもストレスを感じることはない。回すとCVT特有のラバーバンドフィールがやや顔を出すのは宿命として、普通に乗っている分にはステップATのようにリニアでダイレクト感もあり、自然なフィーリングに仕上がっている。マニュアルシフトしたときの素早い反応も心地よい。

 このように三菱自動車が久々に送り出したニューモデルは、デザイン、実用性、走りのバランスが絶妙だ。三菱自動車ファンはもちろんのこと、このクラスのSUVを所望している誰にでも薦められる、まさしく万能選手である。

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:中野英幸