試乗レポート
新型「ゴルフ GTI」、その走りは内燃機関モデルの集大成といえる仕上がりだった
2022年2月21日 11:38
内燃機関モデルで登場したGTIにはフォルクスワーゲンの意地を感じた
第8世代となった新型「ゴルフ」は電動化の未来をにらみ、そのパワーユニットを48Vマイルドハイブリッド化させた。しかし、フォルクスワーゲンはそのハイパフォーマンスバージョンである「GTI」を“ピュアICE”(純粋な内燃機関)として継続。これにはフォルクスワーゲンの、最後の意地を見せられたような気がした。
実際この新型ゴルフ GTIは、「ガソリン仕様のGTIの集大成」と言える仕上がりだ。搭載される直列4気筒 2.0リッターターボエンジン「EA888」は、直噴インジェクターの制御を大きく進化させるなどして第4世代へと進化。現代の厳しい排ガス規制をクリアしながらも、先代モデルの特別仕様だった「GTI パフォーマンス」と同等の、245PS/370Nmを発揮するに至っている。
そしてこのパワー&トルクは、7速となったDSGを介して前輪へと伝えられるわけだが、新型GTIはその高出力を効率よく路面へと伝えるべく、内輪ブレーキによる電子制御式ディファレンシャル“XDS”だけでなく、電子制油圧式フロントディファレンシャルロック機能をも付け加えた。そしてヴィークル・ダイナミクス・マネージャーと呼ばれる新システムによって、2つの機能を統合制御してきたのである。
こうしたアウトプットの最適化と、GTI専用に鍛え上げられたサスペンション、そしてプログレッシヴステアリングの組み合わせによって、GTIは歴代随一とも言える鋭いハンドリングを得ている。
特に19インチタイヤを履いた走りはステアフィールが明確で、フロント荷重を高めるほどにターンインが力強くなっていく。対してリアタイヤはきちんと路面を捉えており、基本的な旋回性姿勢は安定志向。しかしながら、前述したLSD効果から、アクセルを開けていくことができる。
踏み込めばターボながらに粒の揃った心地良いエキゾーストノートが響き、歯切れよいDSGの変速が心地いい。内燃機関の肩身が狭くなるほどにこうしたピュアな走りができなくなっていくのかと思うと、やっぱり残念である。
その分乗り味はハッキリと硬めで、乗り心地と速さを極めた先代GTIと比べると、ちょっと驚くほどのスパルタンさである。
もっともそのソリッドな乗り心地は現代のハイパフォーマンスカーが背負う宿命でもある。特に高速巡航を重視するドイツ勢にとっては、環境性能を重視して極力変形を抑える硬めのタイヤを選ぶ傾向が強く、現状ではどうしても日常領域での乗り心地が犠牲になっている。
こうした背景があるせいかは定かでないが、新型GTIはカスタムメニューから、可変ダンパーの減衰力を任意に調整できるようにしてきた。ちなみに筆者の好みは、スポーツモードから2段ほど緩めた位置であった。
果たしてフォルクスワーゲンは、これまでに培った技術をさらに磨き上げ、この8代目GTIに、ぎゅっと凝縮してきたと筆者は感じた。正直その手法は極めてオーソドックス。電子制御を用いたとはいえ目新しいことは何ひとつもないのだが、飛び道具的な走りのエボリューションは、リアアクスルにトルクスプリット機構を備えた「R」に任せることになるのだろう。
高純度な洗練で着実に進化する姿こそが、ゴルフ GTIらしいと言えるのだと思う。