試乗記
三菱自動車「デリカミニ」オフロード試乗 悪路でもかなりの実力派だった……!
2023年10月16日 07:05
難関の岩場を何事もなく通過できる頼もしいヤツ
「eKクロス スペース」をベースにした「デリカミニ」。基本スペックは変わらないためにオフロードの実力は正直期待していなかった。ところがその実力はやはりオフロードの三菱自動車らしさが詰まった軽ワゴンだった。
それはタフなピックアップトラック「トライトン」(プロトタイプ)のお披露目が行なわれた、十勝研究所に隣接する「TOKACHI Adventure Trail」のコースをいとも簡単に走り抜けたことで証明された。
デリカミニは「デリカ D:5」のエッセンスを取り入れた秀逸なデザインで、他の何物にも代えがたい独自の存在感で高い人気があるが、デザインだけでなく中身もしっかりオフロードを走れる仕様になっている。
FFと4WD、エンジンも自然吸気とターボの組み合わせから選択できるが、試乗したのはT Premiumでターボ+4WD。タイヤはインチアップされた165/60R15で車高はeKクロス スペースから5mm高い160mmの最低地上高としている。またスプリングは共通なものの、ショックアブソーバーはデリカミニ専用の減衰力が与えられている。
わずか5mm、されど5mmの最低地上高は悪路走破に対して想像以上の効果がある。ピッチングを抑える減衰力としたショックアブソーバーと、SUVらしく前後のオーバーハングを詰めた顎を打たないデザインで凹凸路面でも予想以上に安定して走れる。
デビュー時に試乗したコースは舗装路面が主だったので、乗り心地と舗装路での安定感は体感済み。それがこのような悪路でも当てはまるのは予想以上でとても心強い。
駆動方式はビスカスカップリングで前後の駆動力をコントロールし、左右のブレーキを独立して使うことで空転を防ぐ。システムとしては軽量でシンプルなものだが、なかなかどうしてその実力は侮れない。以前の試乗ではオートキャンプ場で使えるぐらいかなと思っていたが、ここで訂正する。悪路でもかなりの実力派だった。
4輪駆動の制御ロジックもデリカミニならでは。舗装路でも常に後輪に駆動力をかけ、接地力や安定性を優先した設定。さらに前輪が空転するとビスカスカップリングによって後輪の駆動力を大きくし、滑りやすい路面でも力強く前進する。
さらに片輪が空転を始めるとそのタイヤにブレーキをかけて駆動力が逃げないように働くので、接地しているタイヤで高い駆動力を発揮する。こんな時トラクションコントロールが介入すると肝心な時に出力を絞り泥濘地などで脱出できなくなってしまうが、デリカミニでは三菱自動車らしく多少空転してもそこから脱出することを優先している。
本格的な4WDシステムでデリカミニをなめてはいけない。実はこのシステム、先代トライトンから装備されるようになっており、4WDが生活に密着するアジアで実証済みの安定したシステムなのだ。
この効果を確認するため、普段は敬遠する岩場に乗り入れてみた。4WDの本格派フレーム車のトライトンでは多少岩があたってもガンガン進むが、さすがにデリカミニでは遠慮がちに乗り入れる。意外に岩と干渉せずボディをよじるように進むことができた。華奢に感じた軽ワゴンだがボディはミシリとも言わない。アイポイントの高い直前視界のよさはこんな時にも役に立つ。難関の大きな岩もグイとひとかきしてよじ登るように突破した。難関の岩場も何事もなく通過できた。何と頼もしいヤツだ。
また今回は試せなかったが滑りやすい急な下り坂をスイッチだけで簡単に下りられ、ハンドル操作に集中することも可能。上級SUVに備わるヒルディセントコントロールだ。スタッドレスタイヤ付きでもアイスバーンの下り坂は嫌なものだが、初心者でもベテランのように下っていける。
さて660ccのターボエンジンはトルクもあって悪路でも想像以上の動力性能を発揮する。岩場では低速でジワリと走れる粘り強さを確認できたが、それ以外のオフロードでは持ち前の4WDの安定性で快適に走れてパワーも十分だ。
CVTはたまにBレンジに入れて高い回転を維持したエンジンブレーキを使ったり、伸びやかに高速コーナーを駆け抜けたり、ちょっとラリー車気分。エンジンを十分に使いきって走るデリカミニはこんなコースでもおもしろい。市街地からこんなタフな路面までデリカミニの守備範囲は広い。