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カロッツェリアから新10.1型ディスプレイオーディオ&7年越し新スピーカーが登場、ハスラーでその進化を体感!

最新のディスプレイオーディオ「DMH-SF900」とカスタムフィットスピーカーCシリーズを試してみた

 近年はナビ機能の省かれた「ディスプレイオーディオ」を選ぶユーザーが右肩上がりで増加しているという。車載カーナビと比べてリーズナブルで購入しやすいだけでなく、Apple CarPlayやGoogle Android Autoといったスマホ連携機能が成熟し、ライフスタイルの中でスマホが中心になっている時代も背景にあるようだ。

 加えて、後付けを考慮した設計で幅広い車種に対応できること、それでいて大画面モデルのラインアップが充実していること、オーディオ・ビジュアル性能にこだわった製品もあること、といった点もディスプレイオーディオが人気を集めている理由だろう。

 この秋、パイオニア カロッツェリアから登場した新型「DMH-SF900」も、まさしくそうしたディスプレイオーディオの特徴的な部分を強化したモデル。さらに同じようなタイミングで、カスタムフィットスピーカー3シリーズを7年ぶりにリニューアルし、音質を一段と向上させている。

 カロッツェリアの新しいディスプレイオーディオとスピーカーがどんな進化を遂げたのか、開発に携わった担当者に話を伺いつつ、それら2製品がセットで装着された実車をドライブして、どんな体験が得られるのかも確かめてきた。

パイオニアの担当者らに新製品や開発時のこだわりを伺った

10.1型大画面、音と連動するルミナスバー搭載の「DMH-SF900」

新型ディスプレイオーディオ「DMH-SF900」

 これまでパイオニアが展開してきたディスプレイオーディオの画面サイズは、最大で9型。それに対し新型の「DMH-SF900」はシリーズ初の10型を超える10.1型フラグシップモデルとなる。ディスプレイはIPS液晶、豊かな黒表現を可能にするノーマリーブラック方式とし、内部の空気層をできるだけ薄くして光の反射を抑えることでより広い視野角を確保している。

シリーズ最大となる10.1型ディスプレイ

 もちろん従来どおり1DINタイプのフローティング構造だ。本体部はセンターコンソールに埋め込み、ディスプレイ部はそこから手前に浮かび上がらせることで、幅広い車種で干渉などの問題を回避しつつ取り付けることが可能となっている。

 取り付け時には上下左右位置のオフセットを調節できるほか、取り付け後もチルト(上下方向)の調整が行なえるため、使いやすい画面ポジションにセッティングできる。こうした仕組みにより、対応車種は392車種(2024年10月現在)にも上る。

フローティング構造で、滑らかなRを描いたエッジ
2パターンの塗装を使い分け、より薄い印象を与える外観とした

 機能面ではCarPlayとAndroid Autoに対応。いずれもスマホとワイヤレス接続して利用できるので、ケーブル接続の煩わしさから解放される。スマホアプリとの連携により10.1型の大画面で音楽再生やナビができるのはもちろん、パイオニアのカーナビアプリ「COCCHi(コッチ)」を使えば、一見すると地図の描写やルート案内などカロッツェリアカーナビだ。

メインメニューの画面。CarPlayとAndroid Autoに対応する
パイオニアのカーナビアプリ「COCCHi」もAndroid Auto対応で、カロッツェリアユーザーはなじみやすい
全方位モニターやバックカメラなど車載安全装備との連携も問題なし

 同製品のマーケティングを担当する堤氏は、DMH-SF900の一番の強みを「大画面で見やすく、操作しやすいこと」と説明するとともに、「例えば画面が小さいスマホでナビアプリを使うのと比べて、大画面で車載カーナビのように使えることは、結果的に安全なドライブにもつながる」とアピールする。

 そして今回のDMH-SF900に関しては、「これまでにない新しい提案をしたい」という思いも込めたとのこと。そこには、「ディスプレイオーディオではCarPlayとAndroid Autoがメイン。これらは統一プラットフォームでどのメーカーも作りは似通ってしまいますから、カロッツェリアらしさがないと」という課題を解消する狙いもある。

パイオニア株式会社 マーケティング推進部 堤大士氏

 そこでDMH-SF900では、差別化を図る上で2つのユニークな仕組みを取り入れた。1つは、音を視覚でも楽しめる「ルミナスバー」を追加したこと。画面上部に配置されたルミナスバーは、DMH-SF900で流しているサウンドの強弱に連動して光り、「空気感やステージ感、高揚感などのエンタメ性を、音を可視化することで高める仕掛け」。また、ナビアプリのルート案内に連動してドライバーに右折・左折を視覚的に運転を補助する機能も。最近はコンソールやメーターパネルなどの周辺をイルミネーションで彩るクルマが増えてきていることもあり、そうした車両との「一体感のある空間デザイン」にも貢献できるとしている。

サウンドに合わせて伸び縮みしながら光る「ルミナスバー」。色合いは柔軟にカスタマイズでき、OFFにもできる

 もう1つは、連携しているスマホをディスプレイオーディオのサブ画面にしてデュアルスクリーン的に使えるようにする「PxLink」という独自アプリだ。

 従来は、設定などを変えようとするたびにCarPlay/Android Autoをいったん閉じ、他の画面で作業してから再びCarPlay/Android Autoに戻ってくる、といったような切り替え操作が発生していた。

 しかしPxLinkがあれば、再生中の楽曲のコントロール、イコライザーやメディアソースの変更といった操作がスマホ側で行なえ、ディスプレイオーディオ側は同じ画面を映し続けられる。例えばナビゲーション中にその画面から離れずに済むので、自車位置が分からず戸惑うようなこともなくなるわけだ。

デュアルスクリーン的に使えるようになる「PxLink」。左右スワイプで3種類の画面を行き来できる
ディスプレイはもちろんタッチ操作可能
タッチセンサー式の物理キーを画面外に用意。ここも車載カーナビのような確実な操作性を実現してくれる工夫の1つ

 一方、同社オーディオ製品が目指す理念でもある「原音忠実再生」は、DMH-SF900にも受け継がれている。堤氏は「アーティストが曲に込めた思い、気持ち、表現したいステージ感、息遣い、楽器1つひとつの音、それらをありのまま再生するのが私たちの目指すべき音の理想像」と語る。

 とはいえ車内は通常、座る場所が左右に分かれ、さまざまな素材の障害物が存在している。左右スピーカーとの距離に違いがあり、音の反射・吸収が発生し、さらに走行中はロードノイズと風切り音も加わるため、決して理想的とは言えないリスニング環境だ。

 しかしながら、そうした不利な環境でも、原音忠実再生に向けたポテンシャルを発揮できるのがDMH-SF900。フルカスタム48bitデュアルコアDSP、著名メーカー製コンデンサなどの高品質部品を搭載し、タイムアライメントや13バンドグラフィックイコライザーといったオーディオ調整機能で最適な(またはユーザー好みの)チューニングを施すことによって、ハイクオリティなサウンドを車内で楽しめるのだ。

きめ細かくカスタマイズできるDMH-SF900のオーディオ設定。これらを駆使することで自分好みの最適な音質を実現できる

7年分のアイデア、技術が盛り込まれたカスタムフィットスピーカーCシリーズ

 そんな音質向上技術を満載したメインユニット側のDMH-SF900にプラスすることで、さらなる原音忠実再生に近づけることが可能になるアイテムが、7年ぶりにリニューアルした同社のカスタムフィットスピーカーだ。

カスタムフィットスピーカー Cシリーズ

 カロッツェリアのカスタムフィットスピーカーは、最上位の「V」シリーズ、ステップアップに向けた「C」シリーズ、エントリークラスの「F」シリーズという3シリーズをラインアップしている。このうち主にCシリーズの開発に携わったのが、山形に拠点を置く東北パイオニアの白幡氏だ。

東北パイオニア株式会社 スピーカー技術統括部 白幡駿氏

 同氏はリニューアルの狙いについて「市場や社内での評価、ご購入いただいたお客さまやレビューサイトの声を参考にしながら、旧モデルのよさは活かしつつ、まだ伸びしろがあった部分を向上させて、製品としての“深化”を目標に設計しました」と話す。

 7年前の旧モデルも十分に完成度の高いモデルではあった。そのため、次にどのように進化させていくべきかを判断するには「市場の評価を蓄積できる十分な時間と、技術のアップデートや信頼性の検証が必要でした」と、同氏は7年もの歳月がかかった理由を明かす。

 ユーザーとしては長く待たされてしまった感もあるが、それだけに、この7年間にかけた開発の手間、苦労も並々ならぬものがあったようだ。例えばCシリーズで特にフォーカスしたのは、同氏によると「中低域の量感と全体の解像度の向上」。それに向けてこだわった1つはウーファーの「最大化と深型化」だったという。

こだわりの1つはウーファーの厚み

「低域が弱いというユーザーさまの意見から、過去15年分、約800車種の取り付け部のデータを分析し直し、データからでは判断の難しい車種は実車確認するなどして、最大限のスピーカーサイズを導き出した」とのこと。対応車種数は維持しつつも、より深型に、より振動面積が大きいスピーカーとし、深い低域の再生を可能にしたのだとか。

 構造面では新開発の「トラスバスケットフレーム」が注目ポイント。トラス形状とすることで剛性を高め、不要な振動を排除し、正確なストロークによってメリハリのあるクリアな音質を達成した。

剛性アップを狙った新開発のトラスバスケットフレーム

 さらに、振動板には低音・中音の歪み少なく響かせる「アラミドファイバーコーン」を、その中心部には振動盤全体の剛性を効率的に強化し、力強い低域と、クリアで臨場感のある音質を実現できるという「アルミブレース」をそれぞれ採用した。これによって音質だけでなくデザイン性も高めているように感じられる。

「アラミドファイバーコーン」と「アルミブレース」を採用

 また、「Open&Smooth」というコンセプトに則ったチューニングを施しているのもパイオニアならでは。ボーカルや楽器などの豊かなサウンドを奏でるには中高音域の再生能力が鍵となるが、通常、車内のウーファーは足下にあり、指向性の問題から聴こえにくい。その解決につながるのが「Open&Smooth」という考え方だ。

「これまでは低中音域はウーファーから、高音域はトゥイーターから、というのが常識でした」と白幡氏。そんな常識にとらわれず、トゥイーター側でも中音域を出すことで、車室内であっても優れた指向特性を持たせたのだ。「耳に近いところにあるトゥイーターからであれば中音域をよりはっきり表現できる。ライブコンサートの臨場感が再現されたかのような、鳥肌が立つような聴こえ方も表現できる」と自信を見せる。

トゥイーターでも中音域を出力することで優れた指向特性を実現した

ハスラー専用設定で秋の紅葉が映える箱根、富士山周辺へ

 果たして、そんな音へのこだわりがたっぷり詰まったディスプレイオーディオDMH-SF900と、Cシリーズのカスタムフィットスピーカーの実力はどれほどのものなのか。この日筆者は、それら2製品を装着したスズキ ハスラーをドライブし、色づき始めた箱根や富士山周辺の景色を横目に体感してみることにした。

DMH-SF900とCシリーズのカスタムフィットスピーカーを装着したスズキ ハスラー
コンパクトな車体に大画面のDMH-SF900だが、純正かと勘違いしてしまうほど車内とのマッチングがよいと感じた
ウーファーとトゥイーターがさりげなく装着されている

 ハスラーへの製品装着にあたっては、車内の音響設計を担当している小池氏がチューニングを施した。原音忠実再生を軸にしながら「特に高音域で、明るさ、キラキラ感、それと元気な感じを表現しました。高音域を出しすぎると騒がしかったり、耳がキンキンしたりするので、そういうことのないように調整しています」というのが基本的な音作りの方向性。チューニングの内容はタイムアライメントやイコライザーなど、一般のユーザーも標準の機能で実現できる範囲とのことだ。

パイオニア株式会社 技術開発本部 小池遥氏
リスニングポジションは運転席に
イコライザーはフラットをはじめ数種類のプリセットを選択できるほか、ユーザー定義のカスタム設定も可能

 走り出す前に同氏のおすすめ楽曲を試聴してみたところ、「原音忠実再生」の何たるかがさっそく理解できそうな、生々しさと立体感を思わせる楽器音やボーカルが耳を打つ。狭い車内かつ右側座席とは思えないくらいに音像定位はビタッと定まっており、目の前の少し高いところでアーティスト本人が歌っているのがはっきりイメージできてしまう。

生々しさを感じさせるようなサウンドが……

 音1つひとつの粒立ちも素晴らしく、解像度の高さとはこういうことだ! というパイオニアの強い意志が伝わってくるかのよう。もちろん不快になるようなとげとげしさはない。打ち込み系の楽曲も絶妙に“角”が丸められているような感じ。

 音量はできるだけ大きめにすることで、パイオニアが目指す「原音」らしさをより実感できそうだ。運転中は安全面も考えると音量を控えめにしたいところだが、それでもハスラー向けに最適化された設定からくる生っぽいサウンドは存分に楽しめる。

一路、箱根方面へ

 というわけでプレイリストにあるボーカル曲やジャズ、クラシックなどを聞きながら箱根方面へ。主に高速道路を利用し、道案内はカーナビアプリの「COCCHi」に任せてみたが、大画面の見やすさ、操作の楽さはスマホ単体で使うときの比ではない。

 ナビアプリの地図は全画面表示することも、再生中の楽曲情報と一緒に1画面内にまとめて表示することもでき、必要な情報を必要なときにしっかり得られる。ハードウェアキーは、まるで車載カーナビのような使い勝手のよさと安心感がある。

紅葉が広がりつつある箱根、富士山周辺をドライブしつつ「原音」を体感してみる

 ところで、高音質なディスプレイオーディオとスピーカーは、音楽のためだけではないんだな、とも思った。例えばナビアプリの音声案内も一段とクリアに聞こえるので、ロードノイズが大きいときでも聞き取りやすく感じる。

「音楽用にチューニングしてはいますが、定位をしっかりコントロールしているので、ナビ音声についても“ここでしゃべっている”というのが分かるはず」と事前に説明は受けていたが、本当にその通り。メディアソースに関係なく、あらゆる音声についてその実力をいかんなく発揮してくれるようだ。

「COCCHi」のナビ画面をフルスクリーンで表示したところ
再生中の楽曲が分かるように並べて表示もできる
ナビ中はスマホとのデュアルスクリーンで情報量が倍増
音声入力による目的地やスポットの検索は、CarPlayやAndroid Autoの音声認識を利用するため高精度だ

 ちなみにこの「あらゆる音声」というのは音楽のジャンルについても言うことができる。車室内音響の機能開発や音場調整を担当している五十嵐氏によれば、かつてはオーケストラやジャズなどの決まった曲を開発時のリファレンスとし、その聞こえ方をベースに音作りしていたそう。しかしここ数年はトレンドを踏まえ、多様なジャンルの楽曲を聞きながら調整しているという。

パイオニア株式会社 技術開発本部 五十嵐優司氏

「多くのお客さまは現代の曲を聞いているわけで、そこに合う音づくりをするのは基本。そのうえで、新モデルの開発時には従来モデルの苦手な部分が分かりやすい楽曲で試しながら改善を図っています」と同氏。

 例えば、とりわけバランスが取りにくいのは「打ち込み系の曲」で、クラシックに合わせて調整すると高音のキンキン感が強くなってしまいがちなのだとか。

 こうした音づくりの手法は車室向けにチューニングするときだけでなく、スピーカーやディスプレイオーディオのDMH-SF900の開発時ももちろん同様に行なっている。

 白幡氏は「キンキン音への対応はトゥイーターとウーファー間のクロスオーバーをいかに最適化するか、というところも大事です。周波数特性を見てシミュレーションしたうえで、クロスオーバーのパラメーターを変えるなどして何度も試作・試聴を繰り返したことで、解決できました」と笑顔を見せる。打ち込み系の楽曲も聞きやすかったのは、そうした作り込みのおかげだったようだ。

ルミナスバーの明滅は夜景にもマッチする

ユーザー自身で自分好みの音を見つけて楽しみたい

 現在のところ、DMH-SF900でのチューニングの車種別設定は用意されていないので、自身のクルマに合ったサウンドを目指すにはユーザー本人の手でカスタマイズしていく必要がある。オススメ設定だけでも教えてほしい、とお願いしたくなってしまいそうだが、こうしたサウンドチューニングに正解というものはなく、人それぞれだ。

 パイオニアは「お客さま自身が好きな音で楽しんでいただけることが一番大事。曲を流したときに気持ちよいか気持ちよくないか、好きか好きじゃないかで判断していい」との考え方だ。同社としてはあくまでも愚直に実体感を大事にしながら、原音忠実再生を目指して音づくりしていく姿勢で、そこにユーザーの好みを肉付けして自分なりの「いい音」を見つけたいところ。

 実車をドライブして、立体感までイメージできそうなカロッツェリアの高品質サウンドは確かに体感できた。それを実現してくれるDMH-SF900は実勢価格10万円あまり、カスタムフィットスピーカーCシリーズは同3万2000円前後と、かなり攻めた価格帯で提供しているのにもおどろく。

 この価格帯なら、まずはスピーカーだけ試しに交換してみるのもいいし、今あるカーナビが古くなってきたらディスプレイオーディオも、と追加していくのもいい。もっと本格的に、ということであれば、パワーアンプやサブウーファーといったオプションもある。そんな風に少しずつクルマのビジュアル・オーディオ環境をアップグレードしていく楽しみを味わえるのも、カロッツェリアだからこそだ。

ディスプレイオーディオや高音質スピーカーがあれば、夜のドライブも楽しくなる!

Photo:堤晋一