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【ニュル24時間 2017】新電子制御マルチモードDCCDを採用する新型「WRX STI」ベースのSTI参戦マシンを見る

主要な改良ポイントを組み込みクラス3連覇に挑戦

2017年5月25日~28日(現地時間)開催

ニュル24時間耐久レースのSP 3Tクラスで3連覇に挑戦するSTIの参戦マシン「SUBARU WRX STI」。5月24日発表の大幅改良モデルをベースに主要な改良ポイントを組み込んだ

 2015年、2016年と2年連続でニュルブルクリンク24時間のクラス優勝を遂げてきた「STI NBR CHALLENGE」。今年は2008年にSTIが主導となって参戦してから10年目の節目で、未踏の3連覇を目指すことになる。

 参戦マシンは2014年から使用するWRX STIのVAB型で変わりないが、5月24日に発表されたばかりの大幅改良モデルがベースとなっている。ビッグマイナーが行なわれた市販モデルのWRX STIは、端正なルックスに仕上げた新デザインのフロントバンパーや「新電子制御マルチモードDCCD」が採用されていて、これらの新意匠や機構がSUBARU WRX STI NBRチャレンジ2017のマシンにも取り入れられることになった。

フロントバンパーやヘッドライトはビッグマイナーを行なった市販モデルのWRX STIの意匠を用いている
エアロダイナミクスも毎年改良が施される。SUBARUの風洞施設を使って試験を行ない、最適なデザインを取り入れている
トランスミッションは6速シーケンシャルにパドルシフトをセット。ダッシュボードなどに純正の面影を残すが、それ以外は不要なものはすべて取り外されている
タイヤは2016年からファルケンブランドを使用する。今年のモデルのために新開発されたタイヤはグリップバランスに優れていて、レースラップでもタレが少ないという。ホイールはBBS製で、サイズは18インチの10J
ブレーキはブレンボ、サスペンションはビルシュタイン、スプリングはアイバッハと例年通りの仕様となる

 2017年のニュルブルクリンク24時間レースへ向けてのシェイクダウンは、3月9日に富士スピードウェイで実施され、その後、WRX STIはヨーロッパへ空輸された。

WRX STIのステアリングを握るカルロ・ヴァンダム選手、マルセル・ラッセー選手、ティム・シュリック選手、山内英輝選手

 そして、4月23日に行なわれたニュルブルクリンク24時間レースの前哨戦となる6時間の「QUALIFYINGレース」に参戦。昨年までは24時間を戦う4名のドライバーがQUALIFYINGレースに揃うことはなかったが、今年はカルロ・ヴァンダム選手、マルセル・ラッセー選手、ティム・シュリック選手、山内英輝選手の全ドライバーがWRX STIのステアリングを握ることになった。

 予選ではカルロ・ヴァンダム選手のハンドリングにより、2016年の24時間レースの予選でマークした9分8秒台を上回る9分4秒台を記録。2017年モデルの進化を示す結果となった。

 レース中にはさらにラップタイムを9分2秒台まで伸ばし、チームが目標としてきた1周8分台も視野に入った。だが、決勝レースでは4時間を走行した時点でマシントラブルが判明し、安全のためにレースを終える決断をした。

 トラブルは排気系が原因だったが、その他にも24時間を戦い続けるには耐久性の問題を抱えていて、チームは対策に追われることになった。そして、問題を解決するために国内から対策パーツが送られ、24時間レース前の最後のチェック走行を5月15日に実施。QUALIFYINGレースで発生したトラブル箇所の改善を確認するとともに、WRX STIのセットアップも進められた。

山内英輝選手

 唯一の日本人ドライバーとなる山内選手によると、2017年モデルのWRX STIはアンダーステア傾向が抑制されバランスも向上しているそうで、ドライバーに負担の掛かりづらいセットアップができれいるそうだ。それでも、ライバル勢に比べるとトップスピードが劣っているようで、改善が求められている。

 さて、STIがクラス3連覇を狙う2017年のニュルブルクリンク24時間レースは、ここ数年の宿敵となっている「アウディTT RS2」に加えて、大幅にアップデートを行なったGAZOO Racingの「Lexus RC」も同クラスに参戦。日本メーカー同士の熾烈なバトルにアウディTT RS2を加えた三つ巴の戦いとなることが予想される。

エンジンはEJ20 BOXER DOHC 16バルブ AVCS ツインスクロールターボ。リストリクターにより吸気制限が行なわれ、最高出力は340PS程度に抑えられている

 この3台のマシンがエントリーするSP3Tクラスは、2.0リッターターボエンジンを搭載した車両による争いになる。駆動方式に制限はないので、WRX STIは4WD、Lexus RCとアウディTT RS2は2WDとなっている。また、駆動方式の違いにより吸気制限を行なうリストリクター径も異なり、WRX STIは2台に比べて小さくなっている。最低重量はWRX STIが1220kg、Lexus RCとアウディTT RS2は1250kgで、燃料タンクの容量も異なる。同じクラスにエントリーする3台だが、レギュレーションによりエンジン出力や車重、燃料タンクに違いがあり、24時間レースでは異なる戦略を取ることになる。

 ニュルブルクリンク24時間レースの予選結果は既報の通りで、WRX STIは予選1回目で4人のドライバーがステアリングを握り9分9秒437をマーク。クラストップで予選2回目を迎えた。

 予選2回目は、カルロ・ヴァンダム選手のアタックにより9分5秒367を記録した。ただ、ライバルのアウディTT RS2は8分56秒560、Lexus RCが9分2秒157とWRX STIを上回ったことによりクラス3位、総合58位から24時間レースをスタートすることになる。

 予選ではライバル勢に先行されたが、24時間のレースは何が起こるか分からない。各ドライバーのレースラップやメカニック達のピット作業、チームの戦略など総合力が試される。連覇はしているが、チームの全員が常にチャレンジャーの精神で2017年のニュルブルクリンク24時間レースに挑むことになる。