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アウディ、斎藤徹社長が新型「A8」「A7」「A6」発売でハイエンド市場のシェア拡大に意欲を見せた「2018年新春会見」開催
「#新年を型破る」新作動画を披露
2018年1月12日 06:00
- 2018年1月11日 開催
アウディ ジャパンは1月11日、2017年について振り返り、2018年の事業戦略などを紹介する新春会見を都内で開催した。
登壇したアウディ ジャパン 代表取締役社長の斎藤徹氏は、2017年の市場動向について、北米やEUで経済成長が2%となり、中国市場は6%の成長となるなど、主要国のマーケットがおおむね順調な経済成長を果たしており、景気や市場の経済環境は心配のない1年だったと分析。日本も為替の円安基調と輸出が好調で株高になっていることなどから企業の業績が順調で、投資意欲も高いと語り、「私どものようなプレミアムカーの商売としては非常にポジティブな環境」と述べた。
アウディの販売台数では、世界における販売台数の正確な数字は翌日の1月12日(現地時間)にドイツ本社で発表される予定となっており、確定した正式な数字は出せないとしつつ、1-11月の11カ月間では約170万台とほぼ前年並みで推移。年間としては前年並みか少し上まわる台数になるとの見方を示した。この要因としては、新型になった「A5」やニューモデルの「Q2」が非常に好調となっており、さらに新世代の商品を積極的に採り入れ、自動運転や電動化、デジタル化といった先進技術に積極的に投資していることがアウディのブランドイメージとして浸透していることも紹介した。
日本での販売台数は、2017年の年間では2万8336台となっており、2016年からわずかに下がる数字となっているが、斎藤氏はこの理由を「一部モデルの供給が滞っていることが原因」と説明。顧客から注文を受けた受注台数を見ると2016年を上まわっていると述べ、とくに7月-12月の下半期には過去3年で最高の小売り台数を記録していると強調した。2016年と比較して小売り台数が12%増加していると具体的な数字も紹介して、「アウディの販売台数は強い調子で上向いている」と説明。2018年もいいスタートが切れると語った。
さらにアウディの認定販売店で取り扱った中古車販売では、過去最高の1万2167台を記録。これにより、新車と中古車を合わせて4万台以上を販売。これは4年連続での4万台レベルの販売になると斎藤氏は語った。
また、アウディ ジャパンでは2017年から「先進的で魅力ある製品の提供」「ブランドコミュニケーションの強化」「ネットワークセールスパワー」「顧客ロイヤリティーの向上」「デジタルサービスの拡充」という5つの活動の柱を掲げており、斎藤氏は2017年に行なった活動内容について説明。
「先進的で魅力ある製品の提供」では、2017年は前出のA5やQ2に加え、主力モデルとなっている「A3」「Q5」の4車種を日本市場に導入。中でも300万円以下からという戦略的な価格設定を与えたコンパクトSUVのブランニューモデルであるQ2は、発売した6月以降の約半年で計画を上まわる約2700台を販売。とくに若い世代にも評価されていると斎藤氏は語った。また、10月に発売したミッドサイズSUVのQ5も3カ月で約1000台を販売するなど、日本市場でもSUV人気が高くなっている現われだとした。また、サブブランドとして位置付ける「Audi Sport」でも「R8 スパイダー」「RS 5」「TT RS」「RS 3」といった新型車を市場投入している。
「ブランドコミュニケーションの強化」では、斎藤氏は「正直に申し上げて、アウディブランドの認知度はこのマーケットに少し遅れて参入したこともあり、依然としてライバルに少し差を付けられております。このギャップをクローズすることが私どもにとって大きな課題で、何をしているのかと言えば、とくにデジタルマーケティングをかなり意識して注力しております」とコメント。一例として、Q2の発売に合わせて実施している「#型破る」キャンペーンについて解説。発売前からインターネット上で注目を集めており、2018年の新春に向けて制作した新しい動画も「結構話題を呼んでおります」と語り、「#新年を型破る」と名付けられた新作動画を披露した。
このほかにAudi Sportでの活動では、カスタマーレーシングのサポート、RSモデルなどの導入、Audi Sport店の拡充などが軌道に乗って、Audi Sportの認知度だけでなく、アウディブランド全体のスポーティイメージの底上げに大きく貢献していると斎藤氏はアピールした。
販売力を強化する「ネットワークセールスパワー」では、新車ディーラー4店舗を新規オープンやリロケーションなどで立ち上げ。日本全国で計125店舗を展開している。さらに「最低12台以上の展示スペースを確保する」といった条件をクリアした「AAA(Audi Approved Automobile)」と呼ばれる認定中古車センターも同じく4店舗がオープンし、計50カ所の認定中古車センターを展開しているという。また、Audi Sport店は24店舗から31店舗に増え、それぞれ販売ネットワークを拡充している。
「顧客ロイヤリティーの向上」では、日本国内で現在保有されているアウディ車は28万台以上となっており、既存のアウディユーザーを維持して再びアウディ車に乗ってもらうことは販売戦略上で非常に重要なテーマと説明。具体的な成果として、世界のアウディ正規ディーラーのスタッフがアフターセールス技術を競うイベントである「Audi Twin Cup」で、2017年にメカニックとサービスアドバイザーの両部門で日本チームが3位入賞した実績を挙げた。
これに加え、ユーザーから「アウディらしくて非常にスマートだ」と好評を受けているという新サービス「Audi Cam」について解説。すでに61店舗が導入しているAudi Camでは、インターネットを通じたビデオメッセージにより、修理内容や見積もりなどをユーザーに分かりやすいよう説明。ユーザーは自分が都合のいいタイミングでビデオメッセージを確認し、そのまま修理作業の承認も可能となっている。
このAudi Camとも関連する「デジタルサービスの拡充」では、「車両でのデジタルサービスの提供」「販売・サービスプロセスなどのデジタル化」という2つの切り口があると斎藤氏は語り、「車両でのデジタルサービスの提供」では、新世代となるアウディ車では車両がインターネット接続のルーターの役割を果たす「アウディコネクト」が、とくに子供を持つような若い世代の人から非常に歓迎されているとアピール。
また、販売店における新しいタスクとして、購入者の「myAudi」登録促進が重要になっていると説明。2017年1月からスタートしたmyAudiの「セーフティ&サービス」では、SOSコールなど4種類の緊急サービスをスマートフォンのアプリを使って利用可能。実際に自分でも社用車の「A4」に搭載されたmyAudiを活用しており、駐車場でクルマを離れてから「ドアロックはちゃんとできているか」をスマホで確認できたり、週末に行楽地まで出かけたりするときに、前日の夜にスマホを使って目的地設定できるなど、慣れてしまえば使い勝手がいいと実体験を語った。
2020年までに「e-tron」「e-tron スポーツバック」を日本導入
2018年の取り組みとしては、重点目標は2017年と同様の5点を継続して採用。商品面では2018年に発売するモデルはハイエンドクラスが中心となり、「A8」「A7」「A6」の3車種をフルモデルチェンジして日本導入する。斎藤氏は「アウディとしては、このセグメントのシェアを伸ばすことが非常の大きな課題であり、チャレンジになります。とくに『A8』はアウディの先進テクノロジーの粋を集めた自信作で、世界初のレベル3自動運転を可能にしたモデルです」と説明し、ドイツ本国で行なわれたレベル3自動運転のデモ走行を動画を使って紹介。
高速道路で60km/h以下の走行中に同一車線内の自動運転を実現する「トラフィックジャムパイロット」は、技術認証と道路交通法の2つの法的環境が整えられることで市場導入が可能になり、すでにドイツでは道路交通法についてはレベル3自動運転が認められる法改正が行なわれて、技術認証を残すのみになっていると斎藤氏は説明。一方で日本国内については「法整備なども進めていると思いますが、実際にいつレベル3自動運転が可能になるのかというのは、もうちょっと待つ必要があるのかなと思います。アウディとしては技術的には『レディ』ですので、後は法整備が整えば導入に向けて準備していくことになる状況です」とコメント。
このため、2018年に発売がスタートする新型A8は、導入開始時にはこれまで同様にレベル2の自動運転を搭載して納車されるという。ただし、レベル3自動運転を可能にするために搭載する市販車として初のレーザースキャナー、20個以上のカメラやセンサー類により、40種類以上のADAS(先進運転支援システム)を採用する力の入った新型車になるという。
A8についてはすでに発表・発売の準備が進められているほか、ドイツで実施されているA8のディーラー向け商品トレーニングに日本からも135人のディーラースタッフを派遣。通常の商品トレーニングは日本国内で実施しているが、本国でA8の自動運転などについて触れ、多彩な機能なども日本のユーザーにしっかりと解説できるよう勉強してもらっていると斎藤氏は語った。
このほか、2011年に初代モデルの日本導入が開始され、初のモデルチェンジで2代目となるA7は、フラグシップセダンのA8同様に「タッチパネルによって全てがブラックアウトする」というデザインとクオリティにこだわったインテリアが与えられていると斎藤氏は語る。さらにA7のV型6気筒エンジン搭載車は48Vシステムによるマイルドハイブリッドを採用。2018年後半にはアッパーミディアムクラスに属するA6のセダンとアバント(ワゴン)が導入予定となっている。
グローバルでは、アウディ初のゼロエミッション車となるEV(電気自動車)「e-tron(イートロン)」がドイツ本国で発売。このモデルは航続距離500km、0-100km/h加速は4秒台という「高性能なSUVになる」と斎藤氏は紹介し、日本市場に与えるインパクトについても楽しみなモデルだとした。アウディでは車両の電動化に長期ビジョンを推進しており、2025年までに販売する車両の3分の1を電動化車両にするほか、20車種のEV、もしくはPHV(プラグインハイブリッドカー)を導入することを計画。日本でもこの方針を受け、2020年までにe-tron、そして2017年10月に開催された「第45回東京モーターショー2017」で日本初公開されたコンセプトカー「Elaine concept」の市販モデルとなる「e-tron スポーツバック」の2車種を導入すると明らかにした。
ブランド認知度のアップに向けたAudi Sportの推進も引き続き注力していく構えで、2017年12月に開幕した「FIA フォーミュラE選手権」の2017/2018年シーズンにドイツメーカーとして初めてワークスチームとして参戦。日本国内のレースでも、SUPER GTのGT300クラスやスーパー耐久シリーズなどに参戦するカスタマーレーシングチームに対する支援を継続。2018年は参戦チーム数もさらに増える予定となっており、レースシーンにおけるアウディ車の活躍が活発化していくと斎藤氏は語った。
また、Audi Sportの商品としては、2017年9月の「フランクフルトショー 2017」で世界初公開された新型「RS 4 アバント」を日本市場に導入。Audi Sport店もさらに数店舗増やすと述べ、「Audi Sportのモデルはブランドイメージを向上させるだけでなく、販売店にとって収益の柱にもなっており、これからも頑張っていきたい」と説明。さらに新車ディーラー、認定中古車センターも増やす予定で、2020年を目処に新車ディーラーを現状の125店舗から135店舗にしてネットワークを広げていく意向を示した。ただし、斎藤氏は店舗数をいたずらに増やすことは考えず、店舗ごとの規模を大きくしてクオリティを高め、良好なサービスを提供することを主眼に計画を進めると話した。
具体的な販売施策では、首都圏の新車販売、中古車販売を強化して、ディーラーごとに実施するマーケティング活動に注力していきたいと説明。また、カスタマーロイヤリティを向上させ、車検や点検などでの入庫を増やし、次もアウディ車に乗り替えてもらって顧客を維持していくため、途切れることのないアフターサービスのサイクルを確立していくことが必要だと分析。現状はインターネットなどで情報が手に入ることなどから新規の来店者数が年々減少。すでに繋がりのある顧客を維持していくことが非常に大きな課題になっていると語った。
最後に斎藤氏は、「今年のアウディは、A8をはじめとしてハイエンドモデルを導入する年であり、Audi Sportモデルをさらに拡販して実績をきっちりと積み上げていく年にしたい。一方で、デジタル化への対応や、来年以降に導入していく電気自動車への備えなどを着実に実行して、長期的に、着実に日本市場で成長していく基盤をしっかりと造り上げていく年にしたいと思っております」とコメントしてプレゼンテーションを締めくくった。