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マツダ、大幅商品改良した新型「アテンザ」発表会。エレガントさ、高い品格を表現

「マツダにとってアテンザがフラグシップだよねと再確認いただきたい」と開発主査 脇家氏

2018年5月24日 開催

新型「アテンザ」の発表会に出席したマツダ株式会社の代表取締役社長兼CEO 小飼雅道氏(中)、開発主査 脇家満氏(右)、チーフデザイナー 玉谷聡氏(左)

 マツダは、フラグシップモデル「アテンザ」(セダン/ワゴン)の大幅商品改良を行ない、5月24日から予約受注を開始した。同日に発表会を都内で開催し、小飼雅道 代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者)、商品本部 アテンザ開発主査 脇家満氏が新型アテンザの魅力を語った。新型アテンザの価格は282万9600円~419万400円。

 新型アテンザの概要については「マツダ、「アテンザ」の大幅商品改良。走行性能、静粛性、安全性能が深化」「写真で見る マツダ『アテンザ』(2018年大幅商品改良)」をご覧いただきたいが、フラグシップモデルであるためにデザイン、走行性能、安全性能などを大幅に進化させている。

新型アテンザ。セダンのボディサイズは4865×1840×1450mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2830mm。ステーションワゴンのボディサイズは4805×1840×1480mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2750mm
ソウルレッドクリスタルメタリックカラーのセダンが「25S L Package」、マシーングレープレミアムメタリックカラーのステーションワゴンが「XD L Package」

 エクステリアでは、フロントバンパーやグリルを変更して立体感や広がり感を強調するとともに、ホイールも新デザインを採用。インテリアでは、上級グレードの「L Package」でナッパレザーシート、東レの「ウルトラスエード ヌー」、和太鼓などに用いられる栓(せん)の木を用いた本杢パネルなどを採用したのが新しい。

 また、フラグシップモデルに相応しい静粛性も追求し、フロアパネル、フロントウィンドウ、リアホイールハウスのインナーパネルの板厚アップを実施するとともに、トップシーリング(ルーフ内装)の一部を不織布からウレタンに変更するといった施策が行なわれた。

 エンジンは従来どおり、ガソリンの直列4気筒DOHC 2.0リッター「SKYACTIV-G 2.0」、直列4気筒DOHC 2.5リッター「SKYACTIV-G 2.5」、直列4気筒DOHC 2.2リッターディーゼル「SKYACTIV-D 2.2」を展開するが、SKYACTIV-G 2.5には気筒休止技術を、SKYACTIV-D 2.2には急速多段燃焼技術をそれぞれ採用することで進化を遂げている。

直列4気筒DOHC 2.5リッター「SKYACTIV-G 2.5」エンジンを搭載する「25S L Package」。エクステリアではフロントバンパーやグリルを変更して立体感や広がり感を強調するとともに、アルミホイールのデザインも変更。ワゴンではリアバンパーも変更を受けた
L Packageではナッパレザーシート、東レの「ウルトラスエード ヌー」、和太鼓などに用いられる栓(せん)の木を用いた本杢パネルなど、本物の素材にこだわりながら日本の伝統美に通ずる色合いを採用
ステーションワゴンとセダンのラゲッジ&トランクスペース
直列4気筒DOHC 2.5リッター「SKYACTIV-G 2.5」エンジンは最高出力140kW(190PS)/6000rpm、最大トルク252N・m(25.7kgf・m)/4000rpmを発生
直列4気筒DOHC 2.2リッターディーゼル「SKYACTIV-D 2.2」エンジンは最高出力140kW(190PS)/4500rpm、最大トルク450N・m(45.9kgf・m)/2000rpmを発生

輸入車ブランドのセダンやステーションワゴンが堅調に売れていることに危機感

マツダ株式会社 代表取締役社長兼CEO 小飼雅道氏

 発表会で登壇した小飼社長は、まずマツダにとってのアテンザの立ち位置について紹介を行ない、「私はまずセダンを大切にしています。アテンザなどで最高のパフォーマンスを実現し、そのうえでSUVなどの車種に(セダンで培った技術を)展開し、走る歓びが感じられるものにする。そういう意味で、(セダンは)極めて重要なモデルになります。経営的な意味で言いますと、製造している工場は山口県の防府工場と中国の南京市、ロシア ウラジオストクなどで、昨年度は年間15万台以上を販売しており、グローバルの販売台数の1割近くを占めています。トータル120カ国に供給して新興国、先進国のセダンの需要にお応えすることにより、経営的にも非常に重要なモデルに位置付けています」と説明。

 また、「これはアテンザに限ったことではございませんが、日本の自動車メーカーとしてどのようなクルマづくり、モノづくりが求められているか。そしてマツダが持つ強みを生かしてどのようなクルマを作っていくかということを常日頃から全員が自問自答しています。具体的に言うと、外観デザインのシンプルな美しいデザイン、あるいは内装のきめ細やかなしつらえ、運転する人や同乗する人が快適である、思い通りにクルマが動いてくれる。運転する人や同乗する人の心も身体も元気にしてくれる、言わば“日本のおもてなし”というものが満ち溢れた商品を作りたいという思いで取り組んできました」と、モノづくりに対するマツダの思いについて紹介を行なった。

マツダ株式会社 アテンザ開発主査 脇家満氏

 次いで登壇したアテンザ開発主査 脇家氏は、「マツダブランドをけん引するアテンザにとって、今回の商品改良は2012年の全面改良以来、もっとも大きい改良になります。選んでいただくお客さまに笑顔で充実した豊かな時間を提供できる存在であり続け、『マツダだから』『アテンザだから』そんな時間を過ごせる。こうした願いを込めてマツダがアテンザで提供すべき価値を最大化すべく、最新のブランド表現と技術を最大限取り入れて大幅な改良を実施することを決意しました」と述べるとともに、「われわれ開発チームは『クルマを愛するお客さまの毎日をもっと活力と充実感に満ちたものにする』、これをテーマにし、アテンザならではの走る歓びの実現に注力してきました」と、開発テーマについて紹介。

 具体的な変更ポイントについては、デザインは「Mature elegance」をキーワードに成熟した大人の落ち着き、エレガンスを感じさせるものを目指したと言い、「エクステリアはプロポーションを維持することでアテンザが元々持っているエレガンスさはそのままに、フロントとリアフェイスの変更によって最新のブランド表現を織り込み、フラグシップとしての品格を高めました。また、インテリアでは次世代デザインの方向性を示唆した『VISION COUPE』につながる思想を採り入れ、左右方向へのワイド感、連続性を表現しつつアテンザならではのエレガンスさ、また高い品格を表現しました。最新のテクノロジーと伝統の技術、これの融合で新たな資産作りにも挑戦しました。落ち着いた大人っぽさと日本らしさを合わせ持つ新たな内装色も提案しています。また、人間の五感を通して心地よい状態を作る最新のクラフトマンシップ開発思想を取り入れ、われわれはクラフトマンシップを単なる作り込みと定義せず、デザイン、ダイナミクス性能、さらにはパッケージングや安全性など、マツダの走る歓びを支える重要な性能だと考えています。単体の部品ではなく、機能やユニット、それら全てで統一感を持たせ、同じ方向性で仕上げていくことで上質に統一された世界を作り上げたと思っています」。

「クルマを愛するお客さまの毎日をもっと活力と充実感に満ちたものにする」をテーマに開発に着手
デザインキーワードは「Mature elegance」
インテリアでは最新のテクノロジーと伝統の技術の融合で新たな資産作りにも挑戦
最新のクラフトマンシップ開発思想は、クラフトマンシップを単なる作り込みと定義せず、デザイン、ダイナミクス性能、パッケージングや安全性など、マツダの走る歓びを支える重要な性能との位置付け

「本日ぜひ覚えていただきたいのが、走行性能の進化を表す開発キーワード『Effortless Driving』です。Effortlessを直訳すると『努力を要しない』『楽な』という意味になり、つまりEffortless Drivingは努力を要しない走行、という訳になるわけです。理解のためにイメージしていただきたいのは、お客さまの普段の運転シーンの中で、なんとなくクルマに合わせて運転しないと思うように動かない、運転中になんとなく不安を感じるとか、違和感がある。そのようなことがなければ、ドライバーは運転に注意を払う必要がなく、運転中に常に心に余裕を持って自然に運転を楽しんでいただけるはず。そのような状態を、われわれは努力を要しない走行状態、すなわちEffortless Drivingと定義しました」。

「今回の商品改良では、そんな状態を実現することを目指してきました。そのEffortless Drivingを実現する柱として、操縦安定性領域で目指したのは全てのドライバーが思い通りに運転できる状態で、つまりドライバーのステアリング操作にクルマが素直に応じる状態です。そのための技術コンセプトは『人間中心のなめらかなハンドリング』。人がクルマに合わせて一連の操作をするのではなく、人が常にクルマと一体感を持ち、クルマを操り続けられる状態を提供することに尽力してきました。また、乗り心地の質を大きく高めることにも注力し、路面から伝わる力を滑らかなに乗員に伝えられるようにし、通常の商品改良では手を付けないサスペンションの機能コンセプトの見直しなど、構造にも踏み込んだ設計変更をしています」。

「NVH(ノイズ、振動、ハーシュネス)の静粛性領域で目指したのは、フラグシップにふさわしいあらゆるドライブシーンで自然に会話が楽しめ、快適な室内空間を提供することです。技術コンセプトを『声が透る洗練された空間』とし、全ての乗員が前後の席でも普通に会話が楽しめる状態作りに尽力してきました。すでに好評をいただいているCX-8やCX-5と同等以上の静粛性に仕上げています。また、走る性能の進化で目指したのは、ドライバーの『加速したい』というアクセル操作に対して、クルマが従来よりもさらにリニアに応答する状態を作り込みました。今回の改良でその理想にまた1歩近付けることができたと思っています。その走りを支えるエンジンでは、ガソリンでは2.0/2.5リッターを用意し、2.5リッターガソリンエンジンには今回気筒休止技術を導入するとともに、燃焼技術が進化した2.2リッターディーゼルをラインアップします」と述べるとともに、先進安全技術「i-ACTIVSENSE」の進化についてもアピールした。

走行性能の進化を表す開発キーワード「Effortless Driving」は“努力を要しない走行”を表す
Effortless Drivingを実現する柱の1つに「人間中心のなめらかなハンドリング」を掲げる
室内での技術コンセプトは「声が透る洗練された空間」
先進安全技術「i-ACTIVSENSE」も進化

 脇家氏は最後に「昨今、日本でもお客さまの需要がSUVにシフトし、セダンやステーションワゴンが売れていないと言われています。確かに国産ブランドにおいてはその傾向があります一方で、輸入車ブランド(のセダンやステーションワゴン)が堅調に売れ続けているというのも事実です。この状況にわれわれは強い危機感を覚えており、アテンザのこれからの生き様も含め、どうにかしていかないといけないと思っています。セダンやステーションワゴンでしか持ちえない資質を極め、クルマの普遍的で本質的な理想価値を描き、志を持って最新の技術とデザインで作り上げることによって『ああ、マツダにとってやっぱりアテンザがフラグシップだよね』と再確認いただくとともに、『アテンザが作るセダンやワゴンの世界はやっぱり何か違うね、運転してみたいね、所有したいね』と言っていただけるような商品を提供したいと思っています。それが今回の商品改良におけるわれわれの意思です。本日、その意思を反映した新型アテンザをお披露目できたことを、開発チームを代表して感謝申し上げますとともに、新型アテンザの生き様にぜひ注目していただければ幸いです」と述べ、プレゼンテーションを締めくくっている。