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トヨタとNTTグループ、コネクティッドカー向けICT基盤の共同研究開発の進捗について説明

2019年12月5日 開催

トヨタ自動車株式会社 ITS・コネクティッド統括部 主査 村田賢一氏(左)、株式会社NTTデータ 製造ITイノベーション事業本部 第一製造事業部 部長 古賀篤氏(右)

 トヨタとNTTグループは12月5日、2017年3月から協業している「コネクティッドカー向けICT基盤の共同研究開発」について現在の進捗状況を説明した。障害物検知などの実証実験を重ね、ICT基盤での処理時間の短縮などに成果をあげているという。

トヨタ、NTTグループはお互いに規模が大きく、標準化活動に実績がある

 説明にあたったのは、トヨタからはITS・コネクティッド統括部 主査の村田賢一氏、NTTグループからはNTTデータ 製造ITイノベーション事業本部 第一製造事業部 部長の古賀篤氏。

トヨタ自動車株式会社 ITS・コネクティッド統括部 主査 村田賢一氏
株式会社NTTデータ 製造ITイノベーション事業本部 第一製造事業部 部長 古賀篤氏

 トヨタは以前からKDDIに出資、ソフトバンクとは合弁でMONET Technologiesを設立するなどしているが、NTTと協業している理由はNTTグループの組織的な能力が高く、大規模のインフラを持ち、国際標準化団体での活動もあるため、技術開発で協業するのにふさわしいためとの考えを示した。

 また、NTTグループから見ても、トヨタは通信モジュールの標準搭載を進めるなど車両データの活用に実績があり、自動車業界における標準化の活動もあるためとした。

トヨタにおける取り組みの位置付け
NTTグループにおける取り組みの位置付け

 そして、今後来るべきスマートモビリティにおいては、車両から上がってくるビッグデータの活用や、急激なデータ量の増加、そしてクルマからデータを受けるネットワークやデータセンターというICT基盤が重要で、業界のリーディングカンパニー同士がさまざまな課題解決や技術の研究開発に取り組むという。

自動運転時代の負荷や処理に耐えるICT基盤を作ることが目的

 この取り組みでは、車両からCANの速度データや位置データ、画像データ、LiDARやミリ波レーダーのセンサーデータを収集、コネクティッドカーICT基盤でデータの分析を行なうなどの活用をし、各車両にデータを配信していくことを共同開発研究する。

社会のIoT化とクルマ
コネクティッドカーとは?
車両ビッグデータの可能性
車両ビッグデータの活用
急激なデータ量の増加
クルマIoTの特徴と課題
共同研究開発への両社の想い
共同研究開発の目的と領域
コネクティッドカーICT基盤

 これまでに、多数の車両からのデータの処理、大量の動画像データの処理、モバイルネットワークで大量データ通信と通知をサポートできるかについては検証済。さらに、時代の進化に合わせたデータ種類の増加や、位置に依存した収集データの効率的な処理、位置に依存した車両への効率的な通知ができるかなどは、一部で検証を行なった。

取り扱うデータの収集
活用
配信
取り組んできた技術課題と検証の有無
活動の進め方
実証実験の位置づけ

 取り組みは2020年度まで実施するスケジュールとなっており、2018年度はユースケース検証として、車両からのデータを基盤側で処理し、自動運転やコネクティッドカーに必要なスペックがあるかを検証した。

 ユースケースとしては2つの検証を設定。1つは車両のカメラから撮影した動画データを基盤側で解析して高精度地図を作成すること。もう1つは車両のカメラで障害物を撮影して検知し、影響を受ける車両へ通知するという「障害物検知」となる。

全体スケジュール
概要
ユースケース
ユースケースの地図生成
ユースケースの障害物検知
年度ごとの障害物検知にかかる時間の目標
負荷試験

 障害物検知では、検知から通知まで2018年度は15秒ほどかかっていたものが、2019年度は7~9秒、2020年度は7秒以下を目指す。7秒という数値は、路端に停車している車両などの“障害物”を前を走っているクルマが捉え、後にその場所を通る車両がスムーズな回避をするために必要な時間。自動運転の実現には重要で、この時間が7秒よりも長くなれば、停車車両を回避するための車線変更などの動作がスムーズにいかなくなる。

 また、同時に「負荷試験」として500万台規模のダミーデータも合わせて基盤側に送る。現在の実験では1台あたりの送信間隔は1分に1回で、データ量は数十k~数Mバイト規模を想定、月間300km走行する場合で240MB程度。このデータが500万台分送られた状態で、センター基盤側の負荷測定、性能評価、課題抽出を実施する。これは、自動運転に耐えるICT基盤を作るためだという。

 実験は2019年度には数千万台規模に引き上げ、車両に近いところで処理を行なうエッジコンピューティングを活用。同時に「障害物検知」の検知から通知までの時間短縮を行なう。次の2020年度にはさらに時間短縮を図っていく。

今後のスケジュール
エッジコンピューティングの活用

あくまでICT基盤の共同開発研究。トヨタとNTTグループの排他的なものではない

 この取り組みはあくまでICT基盤の共同開発研究。クルマから生成されるデータを取り込んで活用する、という点での共同開発で、実証実験で行なわれている地図生成や障害物検知はサービス化が前提のものではないという。

 また、実際のサービスについては別の部門が考えることになり、今回の取り組みでは検討対象外。しかし、取り組みで開発された技術はすでに現在のトヨタのコネクティッドカーの基盤に採用をし始めているという。

 今後、この取り組みは2020年度までとなっているが、課題は日々増えており、継続の可能性もある。また、NTTデータの古賀氏によればトヨタとNTTグループによる排他的な取り組みではなく「われわれが自動車のIoTのノウハウをグローバルの自動車メーカーで使っていただけるようサービス開発をしている」とした。

トヨタとNTTグループで描くコネクティッドカー社会の未来