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トヨタ、クルマの“つながる化”を推進する専門部署「コネクティッドカンパニー」設立
今冬発売の新型プリウス PHVなどに車載通信機「DCM」を標準搭載し、全車のコネクティッド化を目指す
2016年11月2日 06:00
- 2016年11月1日 発表
トヨタ自動車は11月1日、ネットワーク接続機能を持つコネクティッドカー時代の到来にあたり、専門部署「コネクティッドカンパニー」を立ち上げ、ワールドワイドに向けたコネクティッドカーに関わるサービス開発、プラットフォーム構築の本格展開を進めていく考えを明らかにした。
具体的には、すでにレクサス(トヨタ自動車)で採用している車載通信機「DCM」(データ・コミュニケーション・モジュール)をトヨタブランドの量販車などにも標準搭載し、「全車のコネクティッド化」を図る。スマートフォンとの積極的な連携、ビッグデータや人工知能を用いた交通情報サービスと遠隔サポート等の提供などを行ない、ライドシェア・カーシェア事業者との技術提供を伴う提携を元に、米国や国内での新たなサービスもスタートする。
新型「プリウス PHV」でリモート制御や故障検知などを実現
まずは今冬の発売が予定されている新型「プリウス PHV」に、車載通信機「DCM」が標準搭載される。2005年からレクサスに搭載されているDCMでは、モバイルネットワークを介してエアバッグ展開時に緊急通報するサービス、カーナビ地図データの自動更新サービス、専属オペレーターによるサポートなどを行なっている。車両から得られたビッグデータの活用によって、渋滞回避のための交通情報の提供も実現している。
新型プリウス PHVでは、このDCMを標準搭載するのに加え、専用のスマートフォンアプリ「ポケットPHV」と連携し、車載バッテリーの充電状態の確認、車内エアコンの制御などを遠隔から行なえるようにする。また、車両の詳細な情報をセンターに随時送信し、万が一のトラブル時にはサポート担当のオペレーターがその情報の解析結果を参照しながらドライバーと連絡を取る「eケアサービス」を提供する。状況に応じて、近隣の販売店を案内するなど適切な対処を可能にする。
さらに、車両の走行状況を含む詳細情報を販売店(サービス工場)に設置した情報端末で確認できるようにし、車両のバッテリー電圧低下など、故障やトラブルの予兆を検知した際にはメンテナンスの案内を連絡するといった、予防安全につながる故障予知サービスも提供する計画としている。
新型プリウス PHVでは、DCMによる通信サービスが3年間無償で提供(4年目以降のサービス利用料金は年額1万2000円を予定)される。新たな車載OSにはAGL(Automotive Grade Linux)を、スマートフォンとの連携にはオープンソースのSDL(Smart Device Link)を採用。今後は2019年までにDCMのグローバルでの仕様共通化を図り、2020年までに日米のほとんどの乗用車に標準搭載する予定としている。
なお、従来から提供しているテレマティクスサービス「T-Connect」と「G-BOOK」は、オペレーターによるサポートなど一部のシステムをDCMで実現するサービスと共用しており、これまで通り並行してサービス提供していく。
トヨタはクルマを作るだけでなく、顧客と社会との膨大な接点を生み出す会社に
こうしたサービスの提供を可能にするバックグラウンドの技術のうち、情報のネットワーク送受信に用いられる「グローバル通信プラットフォーム」は、KDDIの協力のもと開発・運用を行なっている。ビッグデータの活用方法については、2016年1月にマイクロソフトと共同で北米に設立した新会社「Toyota Connected」(TC)が研究開発を進め、クラウドサービスのMicrosoft Azureを基盤に、同じく北米のToyota Research Instituteが持つ人工知能技術も応用しながら取り組んでいるという。
さらに、走行距離や状況に応じた保険料を算出する「テレマティクス保険」のためのソリューション構築を手がける会社「Toyota Insurance Management Solution USA」(TIMS)も4月に設立済み。TCが持つコネクテッドカーから得られたビッグデータと、TIMSの保険アルゴリズムを組み合わせ、適切にスコア化されたデータを保険会社に提供していく。
トヨタとトヨタフィナンシャルサービスが共同で開発した、リースしたクルマによるライドシェア事業の仕組み「フレキシブルリースプログラム」によって、ライドシェアの分野にも関わっていく。車両の走行データや利用者による評価は、TCおよびTIMSのビッグデータや保険アルゴリズムにも反映される設計となっている。
国内でも広がりを見せ始めているカーシェアリングサービスに向けては、課題の1つとなっているキーの受け渡しを安全かつ容易にするソリューション「スマートキーボックス」を開発した。やや小さめの弁当箱サイズのモジュールを車両のグローブボックスなどに設置することで、ユーザーが自分のスマートフォンにインストールした専用アプリからBluetoothで連携し、キーの施錠・解錠、ドアの開閉、エンジンの始動などをコントロールできる。
従来からある交通情報を含め、以上のようなテレマティクス保険、フレキシブルリースプログラム、スマートキーボックスなどのソリューションは、オープンAPI化した「モビリティサービス・プラットフォーム」に包含した形で提供する。オープンAPIによって各分野の事業者との連携が容易になることを狙っており、同社専務役員 コネクティッドカンパニー プレジデントの友山氏は、「モビリティサービスプラットフォーマーとして、新たなる成長戦略を描いていきたい」と語った。
その言葉どおり、フレキシブルリースプログラムを用いたライドシェアサービスについては、2016年12月からUberと提携し、米国でパイロットサービスを開始する予定(日本国内での展開は未定)。SKBを採用したパイロットサービスも2017年1月から北米でスタートする計画で、同社が出資した個人間カーシェアリングサービスを提供する米Getaroundとの提携により実現する。日本国内では、カーシェア事業者やレンタカー事業者との協業を検討している段階にある。
友山氏は、今回のコネクテッドカーを支えるプラットフォームやソリューションの構築を進めることによって、「トヨタは年間数百万台のクルマを作っている会社ではなく、数百万の顧客や社会との接点を毎年毎年世界中に創出する会社になる」と述べ、同社のビジネス変革を促す取り組みになることも強調した。