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【インタビュー】新型「フィット」の5つのグレードについて、デザイン担当の白鍾國氏が語る
2020年3月27日 08:00
4代目となった本田技研工業の新型「フィット」は、「HOME」を中心に「BASIC」「NESS」「CRSSTAR」「LUXE」と5つのグレードが展開されている。これらは従来のような装備の有無による上下関係ではなく、ライフスタイルやユーザー像をもとに設定された。さらに名称も先代までのアルファベット表記ではなく、それぞれからイメージできる名称が与えられた。
そこで、グレードごとにターゲットとなるユーザー層とエクステリアのデザインの特徴について、エクステリアデザインを担当した本田技術研究所 オートモービルセンター デザイン室 テクニカルデザインスタジオ研究員 デザイナーの白鍾國さんに語ってもらった。
HOME「日常生活の中での心地よいパートナー」
──まずはHOMEについて、どういったユーザーをターゲットにしたのでしょう?
白氏:仕事と育児を両立する方を中心とした、30代~40代のファミリーを含む幅広いお客さまをターゲットにしています。仕事をしながらも家族と過ごす時間を大切にし、毎日家族が使うものや食べるもの、着るもの、家の居心地のよさや素材にこだわる方です。そこで、家族みんなが安心して楽しく過ごせる、1人の時間もリラックスできる心地よいものを目指しました。
エクステリアデザインの考え方は、家族全員の日常生活の中で、それぞれの心地よいパートナーになることを目指しました。まず、乗車する人全員にとっての心地よさとは何かを考え、“人”を中心にデザインしています。そこで5人が心地よく過ごせる空間をつくり、それをシンプルにエクステリアで表現しました。
──家族それぞれにとっての心地よさとはどういったものをイメージしたのでしょう?
白氏:例えばママにとっての心地よさとは、一目で扱いやすさが伝わる“コンパクトなサイズ感”であることが大切です。そこで、運転が苦手なママにも優しい、心地よい視界のための極細ピラー、どんな場面でも違和感のない信頼感を覚える親しみのある顔の表情にもこだわっています。また、内装においても広々とした心地よい空間だけではなく、上質な素材と仕立て、心地よい使い勝手、1つひとつを磨き上げました。
では、パパにとっての心地よさとはなんでしょう。それはひと目で分かる“安定感のある走り”を感じさせることです。アイコニックなワンモーションのフォルムでありながら、安定感を与えるために、ボディのハイライトや灯体位置を下げて低重心に見せるようにしています。また、ボディとフェンダーの造形により、地面をしっかりと踏ん張るプロポーションとし、アルミホイールもがっちりとボディを支え大径に見えるよう工夫しました。
そして子供にとっての心地よさのために、外の景色が見えるよう後席のベルトランを下げました。自分で開け閉めできるようにドア、テールゲートハンドルの位置も下げています。内装もお母さんと会話ができるように前後空間を分断しないシートデザインを採用しました。ボディは撫でたくなるような優しくかつ豊かなハリのある面質で、ボディ全体に連続性を持たせていますので、子供と一緒に楽しく洗車できると思います。エクステリアのパーツの数をできるだけ減らしてシンプルにすると同時に、部品の合わせで(洗車の時などに子供が)ケガしないよう、すべてのパーツがシームレスにつながるように工夫しています。
全てのボディカラーで2トーンルーフが選べるので、シンプルなデザインの中にも自分らしいこだわりが表現できるでしょう。
BASIC「新しい生活に寄り添うシンプルなもの」
──続いてBASICがターゲットにしたユーザー層を教えてください。
白氏:20代の新社会人や、20~30代の若い夫婦がターゲットです。新しい一歩を踏み出すうえで、自分に合うモノを賢く選択したい方、親しい人に会いに行ったり一緒に出掛けたり、人との繋がりを大切にしたい方々のために、新しい生活に寄り添うシンプルなものを目指しました。
そこでエクステリアをデザインするにあたり、過剰なキャラクターラインを極限まで取り除き、クルマ本来の機能をピュアでナチュラルに表現しています。具体的には、シンプルでカジュアルな飽きの来ない内外装を持った基本タイプと位置付けました。内装も、ブラックをベースに機能的な部品にホワイトをあしらったミニマルなデザインとしており、ファブリックシートを採用しています。
NESS「健康志向で活発な女性をターゲットに」
──ピラーにアクセントカラーを加えたNESSのターゲットは?
白氏:20代~30代の女性を中心とした健康志向で活発な方々がNESSのターゲットユーザーです。心身ともに健康であることを重視し、日常に運動を取り入れたり、自分に磨きをかけたりする方をイメージしています。新しいことにチャレンジしたくなるような、好奇心を与えてくれるものを目指しました。
そこでエクステリアデザインは、従来の“THEレース”のためのような走りを追求したものではなく、健康的に自然と気分が盛り上がるようなアクティブさを表現しました。ワンモーションフォルムのピラーのラインをより際立たせたアクセントカラーを採用することでアクティブな動きを持たせ、明快なキャラクター性を表現しています。ドアミラーとサイドシルガーニッシュ、インテリアにもアクセントカラーを配することで一体感のあるデザインとしました。
また、より動きを強調したキャビンに合わせてしっかりとそれらを支える16インチアルミホイールを設定し、気兼ねなく使っていただけるよう、シート、インパネ、ドアトリムに撥水加工のファブリックを採用しています。イメージとしては、毎日の通勤を革靴からスニーカーにするだけで、なんだか行動的になれたり、寄り道をして新しい発見があったりするでしょう。毎日フィットに乗って心地よい走りを楽しんでいただけると嬉しいですね。
CROSSTAR「趣味を楽しむアクティブな男性」
──車高も上げたSUVテイストのCROSSTARのターゲットは?
白氏:ターゲットユーザーは、アクティブな男性を中心とした趣味を楽しむ方々です。仲間と気軽にサーフィンやスノーボードなどの趣味を楽しみ、自然の中で過ごすことが好きな方々。機能性の高いウェアを日常生活に取り入れるように、趣味だけでなく毎日の生活でもアクティブに過ごせるスタイリッシュなものを目指しました。
そのイメージを踏まえ、心地よさをベースに若々しさと元気さをプラス。SUVの価値を兼ね備えるデザインとしています。道具としての機能的な要素を強めるためにグリルのある頼もしい顔とし、前後バンパーのデザインも大幅に立体感を加えることで、さらなる安心感を表現しました。
その安心感が向上したボディに合わせて、力強さあるCROSSTAR専用16インチアルミホイールを設定。機能的なルーフレールも一体感のあるデザインに仕上げました。ボディカラーはブラックツートンでよりスタイリッシュに演出することも可能です。
CROSSTARのデザインには実際にターゲットに近いライフスタイルを持つ若いデザイナーが携わっています。形だけを作りこむのではなく、いつもそばに“ヒト”が立ってクルマがどう見えるか、アクティブなライフスタイルに寄り添う相棒としてふさわしい存在感になっているかを意識し、磨き上げました。
LUXE「上品な質感と落ち着いた心地よさ」
──最後に上質な雰囲気のLUXEですが。
白氏:50代~60代の子離れ層とダウンサイザーをターゲットにしたのがLUXEです。子育てが一段落して夫婦2人の時間を大切にしたい方や、仕事を引退した後も社会に貢献したいと考える方へ、新しいライフステージがより充実したものとなるように、見識が高く洗練されている方々にも満足してもらえるクオリティを目指しました。
従ってそのデザインも上品な質感にこだわる、落ち着いた心地よさを表現しています。洗練された上質なエクステリアの表現として、全体的な質感を高めるためにエクステリア全ての黒部品に艶を持たせ、黒艶とバランスのよいプラチナ調メッキ加飾をフロント、サイド、リアに配置しています。内装にも同様のプラチナ調メッキを合わせてコーディネートしました。また、LUXE専用16インチアルミホイールは、繊細さと落ち着きが感じられる普遍的なデザインとしています。
シートは本革のための専用デザインです。革ならではのふっくらとした形状にパイピングなどで贅沢に仕立て、通気性も考慮。メイン部にはハイブリッド素材を採用しました。ゆったりと過ごせるよう、ソフトパッドや本革巻きステアリングホイールに加え、アームレストなどの装備を充実させています。
LUXEのデザインには、これまで「アコード」や「シビック」といった上級車に携わってきた経験を活かすことができたと思います。コンパクトだからこのレベル“で”いいだろうという妥協はせずに、上級車に乗ってこられた方でも納得いただけるように細部にいたるまで作りこみました。
【お詫びと訂正】記事初出時、白鍾國氏のお名前の表記に一部誤りがありました。お詫びして訂正させていただきます。