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SF開幕戦富士、ホンダの野尻智紀が若手を抑え優勝 ルーキーレーシングの豊田章男オーナー登場

優勝した野尻智紀選手(16号車 TEAM MUGEN SF19/ホンダ)、「医療従事者の皆様ありがとうございます」のメッセージが印象的

日本最高峰のモータースポーツ開幕

 日本最高峰のレースシリーズ「全日本スーパーフォーミュラ選手権」の開幕戦が4月3日~4日の2日間にわたって富士スピードウェイ(静岡県駿東郡小山町)で行われた。3日に行なわれた予選ではホンダやトヨタの若手ドライバーが台頭して上位に来る中、ベテランの野尻智紀選手(16号車 TEAM MUGEN SF19/ホンダ)がポールポジションを獲得した。

 翌4日に行なわれた決勝レースでは、野尻選手がスタートこそ失敗して2位に下がったもののトップの座を奪い返し、ポール・トゥ・ウインで優勝した。

予選:ポールポジションを獲得したのはベテランの野尻智紀選手

大津弘樹選手(15号車 TEAM MUGEN SF19/ホンダ)

 予選は3回に分けて行われる。Aグループ、Bグループの2つに分けて行なわれた予選1回目のAグループでは、2020年のチャンピオンである山本尚貴選手(1号車 TCS NAKAJIMA RACING SF19/ホンダ)が敗退する波乱が発生。このセッションでトップタイムをマークしたのは今シーズンからフル参戦するルーキーの大津弘樹選手(15号車 TEAM MUGEN SF19/ホンダ)。今シーズンの話題の1つといえる若手の台頭という傾向を印象づけた(最終的に大津選手は8位)。

 2020年シーズンからスーパーフォーミュラに参戦している女性ドライバーのタチアナ・カルデロン選手(12号車 ThreeBond SF19/ホンダ)は初めてQ1を突破、キャリアベストとなる11位グリッドを獲得した。

 予選3回目(Q3)で最終的にポールポジションを獲得したのはベテランの野尻智紀選手(16号車 TEAM MUGEN SF19/ホンダ)。フリー走行でもトップタイムをマークした野尻選手は「自分でも頭一つ飛び抜けていると感じる」と記者会見で語るなど好調さを示した。

 2位は昨年ルーキーシーズンで初優勝を遂げている大湯都史樹選手(64号車 TCS NAKAJIMA RACING SF19/ホンダ)、3位には牧野任祐選手の病気療養欠場で代役に抜擢された笹原右京選手(6号車 DOCOMO DANDELION M6Y SF19/ホンダ)。ベテランがポールで若手が2位・3位を占める予選結果となった。

予選のトップ3。ポールポジションの野尻智紀選手(中央)、2位の大湯都史樹選手(左)、3位の笹原右京選手(右)

スーパーフォーミュラ第1戦富士 予選結果

順位カーナンバードライバー車両/エンジンQ1Q2Q3
116野尻智紀TEAM MUGEN SF19/ホンダ1分21秒9941分21秒5951分21秒173
264大湯都史樹TCS NAKAJIMA RACING SF19/ホンダ1分22秒1401分21秒7791分21秒396
36笹原右京DOCOMO DANDELION M6Y SF19/ホンダ1分22秒5171分22秒0001分21秒463
45福住仁嶺DOCOMO DANDELION M5S SF19/ホンダ1分22秒2971分22秒0791分21秒604
539阪口晴南P.MU/CERUMO・INGING SF19/トヨタ1分22秒4871分21秒9561分21秒714
637宮田莉朋Kuo VANTELIN TOM’S SF19/トヨタ1分22秒2981分21秒9751分21秒793
720平川亮carenex TEAM IMPUL SF19/トヨタ1分22秒3261分21秒8501分21秒804
815大津弘樹TEAM MUGEN SF19/ホンダ1分22秒2631分22秒3611分21秒869
919関口雄飛carenex TEAM IMPUL SF19/トヨタ1分22秒7851分22秒441
1038坪井翔P.MU/CERUMO・INGING SF19/トヨタ1分23秒0501分22秒552
1112タチアナ・カルデロンThreeBond SF19/ホンダ1分22秒8201分22秒584
1218国本雄資KCMG Elyse SF19/トヨタ1分22秒6441分22秒973
1336中嶋一貴Kuo VANTELIN TOM’S SF19/トヨタ1分22秒3331分27秒230
147小高一斗KCMG Elyse SF19/トヨタ1分23秒1231分29秒988
154中山雄一ORIENTALBIO KONDO SF19/トヨタ1分23秒256
161山本尚貴TCS NAKAJIMA RACING SF19/ホンダ1分23秒144
1714大嶋和也NTT Communications ROOKIE SF19/トヨタ1分23秒360
183山下健太ORIENTALBIO KONDO SF19/トヨタ1分23秒189

決勝:レース終盤にウェット宣言が出て混乱するも、ポールスタートの野尻選手が優勝

2位の大湯選手がスタートダッシュを決めてトップへ浮上、ポールの野尻選手は2位に後退する

 4月4日の日曜日に行なわれた決勝レースは、レース前の予報では雨。しかし、決勝レーススタートまでに雨は降らず、ドライスタートになった。

スターティンググリッド、セーフティカーは青いGR スープラ
スターティンググリッドでの大嶋選手と、ルーキーレーシングチームオーナーである豊田章男氏
チーム関係者と記念撮影
スタート前に話し込む大嶋選手と豊田オーナー

 今シーズン初めてのレースということもあり、グリッドには多くの関係者が集まった。その中には、モリゾウ選手こと、トヨタ自動車の社長で、ルーキーレーシングオーナーの豊田章男氏の姿も。豊田氏はチームのドライバーである大嶋和也選手(14号車 NTT Communications ROOKIE SF19/トヨタ)とグリッドで談笑していた。また、開幕戦ということもあり、スーパーフォーミュラを運営するJRP(日本レースプロモーション)会長 中嶋悟氏がシーズン開幕宣言を行なった。

レース前、ファンに向かってあいさつする株式会社日本レースプロモーション 会長 中嶋悟氏
ポールポジションを獲得した野尻智紀選手

 決勝レースでホールショットを奪ったのは予選2位からスタートした大湯選手。大湯選手は1コーナーまでにポールポジションからスタートした野尻選手をオーバーテイクしトップに立った。そして野尻選手を引き離し始めた。

 しかし、今日の野尻選手は落ち着いていた。焦ることなく少しずつ大湯選手との差を詰めていく、10周目のダンロップコーナーでオーバーテイクシステム(レースの間200秒だけエンジンの性能を向上させることができるボタンのこと)を上手く活用して大湯選手を追い越しトップへ復帰。野尻選手は予選後の会見で語ったとおり「頭一つ突き抜けた」状態で、それ以降は2位以下をどんどん引き離していくレースになった。

 雨がいつ降ってくるのか分からない状況の中、上位陣はできるだけピットストップを引っ張る作戦に出た。上位陣がピットストップしたのはレースの折り返しが過ぎてから。ところがレース(41周)終盤の31周目にウェット宣言が出される。これでウェットタイヤに交換することは可能になったが、路面を濡らすほど雨は降ってきていない状況。トップを走る野尻選手はタイヤ交換せずに走り続け、ピットに入るタイミングを天気と相談するレースになった。

ポールからスタートした優勝した野尻智紀選手(16号車 TEAM MUGEN SF19/ホンダ)

 結局、トップを走っていた野尻選手は残り2周で義務付けられたタイヤ交換のためにピットに入る。野尻選手が冷えたタイヤでピットから出てくると、すでにタイヤ交換し、タイヤが暖まっている2位の大湯選手、3位の福住仁嶺選手(5号車 DOCOMO DANDELION M5S SF19/ホンダ)が猛烈な勢いで追い上げてくる。しかし、野尻選手は1.576秒という僅差でトップの座を守り切り、レースが終わってみればポール・トゥ・ウインを実現した。

2位に入った大湯都史樹選手(64号車 TCS NAKAJIMA RACING SF19/ホンダ)
3位に入った福住仁嶺選手(5号車 DOCOMO DANDELION M5S SF19/ホンダ)

 2位は大湯選手、3位は福住選手とホンダのベテランと若手が表彰台を独占する結果となった。4位はトヨタ勢最上位となる平川亮選手(20号車 carenex TEAM IMPUL SF19/トヨタ)、5位は笹原選手、6位は予選の失敗を取り戻してレース中追い上げた昨年のチャンピオン山本選手となり、4位の平川選手を除き、トップ6のうち5台がホンダ勢というレースになった。

トヨタ勢最上位は平川亮選手(20号車 carenex TEAM IMPUL SF19/トヨタ)
5位に入った笹原右京選手(6号車 DOCOMO DANDELION M6Y SF19/ホンダ)
6位まで追い上げた山本尚貴選手(1号車 TCS NAKAJIMA RACING SF19/ホンダ)

優勝記者会見

優勝した野尻智紀選手(中央)、2位の大湯都史樹選手(左)、3位の福住仁嶺選手(右)

野尻智紀選手:今週は走り出しから手応えを感じていた。スタートではミスもあったし、クラッチにも不安を感じておりそれが出てしまって2位に下がってしまった。5~6周してからはこちらに分があると分かったので、ミニマムの周回でピットに入るか、引っ張るかというタイミングで、チャンスが来て前に出ることができたので引っ張ることを決めた。

 難しい局面が多々あったが、チームとホンダが素晴らしいパッケージを用意してくれ、みんなに勝たせてもらったレースとなった。今シーズンはカラーリングが「医療従事者の皆様のご尽力に感謝したい」となっており、それをここでも繰り返させてほしい。次もよいレースができるようにがんばりたい。

大湯都史樹選手:昨年の最終戦でも2位、ここでも2位となった。目標は表彰台だったのでそれはクリアできた。野尻選手は常に素晴らしいパフォーマンスで今週末を通して強かった。おめでとうといいたい。もちろん我々もこのままではいけないので、次のレースでチーム一丸となってがんばりたい。

 自分のレースとしてはタイヤ交換後のアウトラップなどで速さを見せることができた。しかし、課題はタイヤマネジメントで昨シーズンからの課題であるレースペースのわるさが出てしまった。次はその辺りを改善できるようにしたい。

福住仁嶺選手:今のチームで3シーズン目。今シーズンはエンジニアも変わり、クルマも5号車という昨年のチャンピオンカーに乗っているので、今週ここに来るまではプレッシャーだった。予選ではふがいない結果になってしまったが、チャンピオンシップを考えて少しでも前の順位でゴールできるようにと切り替えてレースに臨んだ。

 今日のレースではロングランではちょっとだけ苦労したが、アウトラップでタイヤを温めるきることができず、大湯選手に抜かれてしまった。次戦はよいレースができるようにチームやエンジニアとよく相談してがんばっていきたい。

ピットアウト後、タイヤが暖まっている大湯選手と激しいバトルを繰り広げる福住選手(手前)

 次戦のスーパーフォーミュラは、4月24日~25日に鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)で開催される「NGKスパークプラグ 鈴鹿2&4レース」。JSB1000と併催となる伝統の2&4レースになる。

スーパーフォーミュラ第1戦富士 決勝結果

順位カーナンバードライバー車両/エンジン周回数時間
116野尻智紀TEAM MUGEN SF19/ホンダ4158分30秒222
264大湯都史樹TCS NAKAJIMA RACING SF19/ホンダ4158分31秒798
35福住仁嶺DOCOMO DANDELION M5S SF19/ホンダ4158分33秒959
420平川亮carenex TEAM IMPUL SF19/トヨタ4158分49秒458
56笹原右京DOCOMO DANDELION M6Y SF19/ホンダ4158分56秒703
61山本尚貴TCS NAKAJIMA RACING SF19/ホンダ4159分00秒113
737宮田莉朋Kuo VANTELIN TOM’S SF19/トヨタ4159分00秒692
818国本雄資KCMG Elyse SF19/トヨタ4159分10秒102
939阪口晴南P.MU/CERUMO・INGING SF19/トヨタ4159分13秒993
1014大嶋和也NTT Communications ROOKIE SF19/トヨタ4159分17秒381
1136中嶋一貴Kuo VANTELIN TOM’S SF19/トヨタ4159分22秒829
123山下健太ORIENTALBIO KONDO SF19/トヨタ4159分24秒189
1312タチアナ・カルデロンThreeBond SF19/ホンダ4159分25秒445
144中山雄一ORIENTALBIO KONDO SF19/トヨタ4159分26秒702
157小高一斗KCMG Elyse SF19/トヨタ4159分28秒422
1615大津弘樹TEAM MUGEN SF19/ホンダ4159分51秒752
1719関口雄飛carenex TEAM IMPUL SF19/トヨタ3959分33秒754
1838坪井翔P.MU/CERUMO・INGING SF19/トヨタ3651分58秒982