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SF開幕戦富士、ホンダの野尻智紀が若手を抑え優勝 ルーキーレーシングの豊田章男オーナー登場
2021年4月5日 04:13
日本最高峰のモータースポーツ開幕
日本最高峰のレースシリーズ「全日本スーパーフォーミュラ選手権」の開幕戦が4月3日~4日の2日間にわたって富士スピードウェイ(静岡県駿東郡小山町)で行われた。3日に行なわれた予選ではホンダやトヨタの若手ドライバーが台頭して上位に来る中、ベテランの野尻智紀選手(16号車 TEAM MUGEN SF19/ホンダ)がポールポジションを獲得した。
翌4日に行なわれた決勝レースでは、野尻選手がスタートこそ失敗して2位に下がったもののトップの座を奪い返し、ポール・トゥ・ウインで優勝した。
予選:ポールポジションを獲得したのはベテランの野尻智紀選手
予選は3回に分けて行われる。Aグループ、Bグループの2つに分けて行なわれた予選1回目のAグループでは、2020年のチャンピオンである山本尚貴選手(1号車 TCS NAKAJIMA RACING SF19/ホンダ)が敗退する波乱が発生。このセッションでトップタイムをマークしたのは今シーズンからフル参戦するルーキーの大津弘樹選手(15号車 TEAM MUGEN SF19/ホンダ)。今シーズンの話題の1つといえる若手の台頭という傾向を印象づけた(最終的に大津選手は8位)。
2020年シーズンからスーパーフォーミュラに参戦している女性ドライバーのタチアナ・カルデロン選手(12号車 ThreeBond SF19/ホンダ)は初めてQ1を突破、キャリアベストとなる11位グリッドを獲得した。
予選3回目(Q3)で最終的にポールポジションを獲得したのはベテランの野尻智紀選手(16号車 TEAM MUGEN SF19/ホンダ)。フリー走行でもトップタイムをマークした野尻選手は「自分でも頭一つ飛び抜けていると感じる」と記者会見で語るなど好調さを示した。
2位は昨年ルーキーシーズンで初優勝を遂げている大湯都史樹選手(64号車 TCS NAKAJIMA RACING SF19/ホンダ)、3位には牧野任祐選手の病気療養欠場で代役に抜擢された笹原右京選手(6号車 DOCOMO DANDELION M6Y SF19/ホンダ)。ベテランがポールで若手が2位・3位を占める予選結果となった。
スーパーフォーミュラ第1戦富士 予選結果
順位 | カーナンバー | ドライバー | 車両/エンジン | Q1 | Q2 | Q3 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 16 | 野尻智紀 | TEAM MUGEN SF19/ホンダ | 1分21秒994 | 1分21秒595 | 1分21秒173 |
2 | 64 | 大湯都史樹 | TCS NAKAJIMA RACING SF19/ホンダ | 1分22秒140 | 1分21秒779 | 1分21秒396 |
3 | 6 | 笹原右京 | DOCOMO DANDELION M6Y SF19/ホンダ | 1分22秒517 | 1分22秒000 | 1分21秒463 |
4 | 5 | 福住仁嶺 | DOCOMO DANDELION M5S SF19/ホンダ | 1分22秒297 | 1分22秒079 | 1分21秒604 |
5 | 39 | 阪口晴南 | P.MU/CERUMO・INGING SF19/トヨタ | 1分22秒487 | 1分21秒956 | 1分21秒714 |
6 | 37 | 宮田莉朋 | Kuo VANTELIN TOM’S SF19/トヨタ | 1分22秒298 | 1分21秒975 | 1分21秒793 |
7 | 20 | 平川亮 | carenex TEAM IMPUL SF19/トヨタ | 1分22秒326 | 1分21秒850 | 1分21秒804 |
8 | 15 | 大津弘樹 | TEAM MUGEN SF19/ホンダ | 1分22秒263 | 1分22秒361 | 1分21秒869 |
9 | 19 | 関口雄飛 | carenex TEAM IMPUL SF19/トヨタ | 1分22秒785 | 1分22秒441 | - |
10 | 38 | 坪井翔 | P.MU/CERUMO・INGING SF19/トヨタ | 1分23秒050 | 1分22秒552 | - |
11 | 12 | タチアナ・カルデロン | ThreeBond SF19/ホンダ | 1分22秒820 | 1分22秒584 | - |
12 | 18 | 国本雄資 | KCMG Elyse SF19/トヨタ | 1分22秒644 | 1分22秒973 | - |
13 | 36 | 中嶋一貴 | Kuo VANTELIN TOM’S SF19/トヨタ | 1分22秒333 | 1分27秒230 | - |
14 | 7 | 小高一斗 | KCMG Elyse SF19/トヨタ | 1分23秒123 | 1分29秒988 | - |
15 | 4 | 中山雄一 | ORIENTALBIO KONDO SF19/トヨタ | 1分23秒256 | - | - |
16 | 1 | 山本尚貴 | TCS NAKAJIMA RACING SF19/ホンダ | 1分23秒144 | - | - |
17 | 14 | 大嶋和也 | NTT Communications ROOKIE SF19/トヨタ | 1分23秒360 | - | - |
18 | 3 | 山下健太 | ORIENTALBIO KONDO SF19/トヨタ | 1分23秒189 | - | - |
決勝:レース終盤にウェット宣言が出て混乱するも、ポールスタートの野尻選手が優勝
4月4日の日曜日に行なわれた決勝レースは、レース前の予報では雨。しかし、決勝レーススタートまでに雨は降らず、ドライスタートになった。
今シーズン初めてのレースということもあり、グリッドには多くの関係者が集まった。その中には、モリゾウ選手こと、トヨタ自動車の社長で、ルーキーレーシングオーナーの豊田章男氏の姿も。豊田氏はチームのドライバーである大嶋和也選手(14号車 NTT Communications ROOKIE SF19/トヨタ)とグリッドで談笑していた。また、開幕戦ということもあり、スーパーフォーミュラを運営するJRP(日本レースプロモーション)会長 中嶋悟氏がシーズン開幕宣言を行なった。
決勝レースでホールショットを奪ったのは予選2位からスタートした大湯選手。大湯選手は1コーナーまでにポールポジションからスタートした野尻選手をオーバーテイクしトップに立った。そして野尻選手を引き離し始めた。
しかし、今日の野尻選手は落ち着いていた。焦ることなく少しずつ大湯選手との差を詰めていく、10周目のダンロップコーナーでオーバーテイクシステム(レースの間200秒だけエンジンの性能を向上させることができるボタンのこと)を上手く活用して大湯選手を追い越しトップへ復帰。野尻選手は予選後の会見で語ったとおり「頭一つ突き抜けた」状態で、それ以降は2位以下をどんどん引き離していくレースになった。
雨がいつ降ってくるのか分からない状況の中、上位陣はできるだけピットストップを引っ張る作戦に出た。上位陣がピットストップしたのはレースの折り返しが過ぎてから。ところがレース(41周)終盤の31周目にウェット宣言が出される。これでウェットタイヤに交換することは可能になったが、路面を濡らすほど雨は降ってきていない状況。トップを走る野尻選手はタイヤ交換せずに走り続け、ピットに入るタイミングを天気と相談するレースになった。
結局、トップを走っていた野尻選手は残り2周で義務付けられたタイヤ交換のためにピットに入る。野尻選手が冷えたタイヤでピットから出てくると、すでにタイヤ交換し、タイヤが暖まっている2位の大湯選手、3位の福住仁嶺選手(5号車 DOCOMO DANDELION M5S SF19/ホンダ)が猛烈な勢いで追い上げてくる。しかし、野尻選手は1.576秒という僅差でトップの座を守り切り、レースが終わってみればポール・トゥ・ウインを実現した。
2位は大湯選手、3位は福住選手とホンダのベテランと若手が表彰台を独占する結果となった。4位はトヨタ勢最上位となる平川亮選手(20号車 carenex TEAM IMPUL SF19/トヨタ)、5位は笹原選手、6位は予選の失敗を取り戻してレース中追い上げた昨年のチャンピオン山本選手となり、4位の平川選手を除き、トップ6のうち5台がホンダ勢というレースになった。
優勝記者会見
野尻智紀選手:今週は走り出しから手応えを感じていた。スタートではミスもあったし、クラッチにも不安を感じておりそれが出てしまって2位に下がってしまった。5~6周してからはこちらに分があると分かったので、ミニマムの周回でピットに入るか、引っ張るかというタイミングで、チャンスが来て前に出ることができたので引っ張ることを決めた。
難しい局面が多々あったが、チームとホンダが素晴らしいパッケージを用意してくれ、みんなに勝たせてもらったレースとなった。今シーズンはカラーリングが「医療従事者の皆様のご尽力に感謝したい」となっており、それをここでも繰り返させてほしい。次もよいレースができるようにがんばりたい。
大湯都史樹選手:昨年の最終戦でも2位、ここでも2位となった。目標は表彰台だったのでそれはクリアできた。野尻選手は常に素晴らしいパフォーマンスで今週末を通して強かった。おめでとうといいたい。もちろん我々もこのままではいけないので、次のレースでチーム一丸となってがんばりたい。
自分のレースとしてはタイヤ交換後のアウトラップなどで速さを見せることができた。しかし、課題はタイヤマネジメントで昨シーズンからの課題であるレースペースのわるさが出てしまった。次はその辺りを改善できるようにしたい。
福住仁嶺選手:今のチームで3シーズン目。今シーズンはエンジニアも変わり、クルマも5号車という昨年のチャンピオンカーに乗っているので、今週ここに来るまではプレッシャーだった。予選ではふがいない結果になってしまったが、チャンピオンシップを考えて少しでも前の順位でゴールできるようにと切り替えてレースに臨んだ。
今日のレースではロングランではちょっとだけ苦労したが、アウトラップでタイヤを温めるきることができず、大湯選手に抜かれてしまった。次戦はよいレースができるようにチームやエンジニアとよく相談してがんばっていきたい。
次戦のスーパーフォーミュラは、4月24日~25日に鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)で開催される「NGKスパークプラグ 鈴鹿2&4レース」。JSB1000と併催となる伝統の2&4レースになる。
SUZUKA 2&4レース
スーパーフォーミュラ第1戦富士 決勝結果
順位 | カーナンバー | ドライバー | 車両/エンジン | 周回数 | 時間 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 16 | 野尻智紀 | TEAM MUGEN SF19/ホンダ | 41 | 58分30秒222 |
2 | 64 | 大湯都史樹 | TCS NAKAJIMA RACING SF19/ホンダ | 41 | 58分31秒798 |
3 | 5 | 福住仁嶺 | DOCOMO DANDELION M5S SF19/ホンダ | 41 | 58分33秒959 |
4 | 20 | 平川亮 | carenex TEAM IMPUL SF19/トヨタ | 41 | 58分49秒458 |
5 | 6 | 笹原右京 | DOCOMO DANDELION M6Y SF19/ホンダ | 41 | 58分56秒703 |
6 | 1 | 山本尚貴 | TCS NAKAJIMA RACING SF19/ホンダ | 41 | 59分00秒113 |
7 | 37 | 宮田莉朋 | Kuo VANTELIN TOM’S SF19/トヨタ | 41 | 59分00秒692 |
8 | 18 | 国本雄資 | KCMG Elyse SF19/トヨタ | 41 | 59分10秒102 |
9 | 39 | 阪口晴南 | P.MU/CERUMO・INGING SF19/トヨタ | 41 | 59分13秒993 |
10 | 14 | 大嶋和也 | NTT Communications ROOKIE SF19/トヨタ | 41 | 59分17秒381 |
11 | 36 | 中嶋一貴 | Kuo VANTELIN TOM’S SF19/トヨタ | 41 | 59分22秒829 |
12 | 3 | 山下健太 | ORIENTALBIO KONDO SF19/トヨタ | 41 | 59分24秒189 |
13 | 12 | タチアナ・カルデロン | ThreeBond SF19/ホンダ | 41 | 59分25秒445 |
14 | 4 | 中山雄一 | ORIENTALBIO KONDO SF19/トヨタ | 41 | 59分26秒702 |
15 | 7 | 小高一斗 | KCMG Elyse SF19/トヨタ | 41 | 59分28秒422 |
16 | 15 | 大津弘樹 | TEAM MUGEN SF19/ホンダ | 41 | 59分51秒752 |
17 | 19 | 関口雄飛 | carenex TEAM IMPUL SF19/トヨタ | 39 | 59分33秒754 |
18 | 38 | 坪井翔 | P.MU/CERUMO・INGING SF19/トヨタ | 36 | 51分58秒982 |